ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
妖精の国”ターニア”。それは妖精の領域の中でも特に入る者を選び、本来は妖精と友好関係にあるリュボス聖王国の人間、それこそ女王様と面識のある僕やリアスでも特別に許可されて一度だけ来た事がある位だ。
「綺麗だなあ。本当に綺麗だね、レキア」
「わ、妾かっ!?」
「いや、妖精の国が。……君も綺麗だけどね」
その景色を眺めながら呟けばレキアは早とちりしちゃってたよ。あれかな? 観光スポットって地元民は興味無いって感じの奴で、綺麗だって意識してないのかも。
タニアは透明の球体の中に存在している。外側に向かって重力が働いていて中央には光る球体。時間帯によって明るさが変わってまるっきり太陽だ。夜は月明かり程度には明るいんだっけ? 周囲は周囲全て青空で、これも時間帯で夕焼け空や星空に変わる。
今は丁度お昼過ぎ、気温は四季関係無しにポカポカと居心地が良いんだよね。
「所で妖精の中には回復魔法使える人も居るんじゃなかったっけ? 早速足を癒やして貰いに行く?」
「阿呆が。妾は姫だぞ。その姫が足を捻ったとか知られてたまるか。そもそも貴様がこの抱き方をしたいと言い出したのであろうが」
確かにそういう事にするって話だったけれどさ、足を捻ってるから痛いだろうし。足を見れば腫れている様子は無いんだけれど、歩けないから運べって言われた結果がこの状況なんだしさ。
「うんうん、そうだったね。じゃあ、愛しのプリンセスをお姫様抱っこする名誉を堪能させて貰おうか」
「……ふん」
さて、もうこうなったら続けさせて貰おうか。レキアだって妖精の王族、見栄を張りたいんだから。……うーん、僕のお願いってのは基本的に領域に籠もってる妖精相手だから良しとしよう。
「これで君と僕の関係が恋仲だとでも広まってしまうかもね」
「はっ! 怖気が走るが……まあ、妾も姫だ。自らの見栄で友に迷惑が掛かるのは矜持に関わる。そうだな。その時は本当に貴様の本妻になってやろう。だが、先に言って置こう。婚約が決まったとして正式に嫁ぐまで変な事を期待するな!」
「変な事? それって……」
まーた勢いで変な事言って、それで恥ずかしがってるんだからさ。レキアったら相変わらずなんだから。僕の腕の中が気に入ったのか随分と御満悦な表情だったのが真っ赤になってテンパった様子で。
それにしても婚約前は駄目な変な事って、アレだよね? 普通に考えて清く正しい男女交際じゃとても出来なくって、貴族同士で行ったらお家間の問題になる……。
思い出すのは散々その手の誘惑を受け続けた僕が夜鶴と持った……肉体関係だよね? 何と言い表すべきか、兎に角凄かった。あの夜鶴が凄く大胆になって迫って来てて、お胸が凄く揺れてましたです、はい。ローアングルの迫力に圧倒されました。
今までレキアをそういった事で意識してなかったけれど、なまじ経験した上にこうも正面から言われちゃったら意識しちゃうよね。
レキアの場合は流石に夜鶴みたいなのは無理か。あの状態って媚薬の効果が出たって思いこんだ末の暴走だったし、見栄っ張りでプライドが高いレキアの事だから……。
駄目な事だけれどちょっとだけ想像してみた。見られたくないと服と下着を僕に隠れて脱いだ後で不満そうにしながらシーツで体を隠すレキア。何とか宥めて隣に寝ころべば照れながらも首に手を回し、顔を見ないように命令して来ながらも徐々に甘えて……って、本当に僕は何を考えているんだ、情けない!
「ん?」
不埒な妄想を追い出す為に顔を左右に振り、口の中を強く噛む。レキアは怪訝そうな顔をしているけれど僕の頭の中の事は感づいていないみたいで助かった。下手したら絶交されるよ。
盛りのついた獣じゃ有るまいし、一度そんな体験をしたからって友達までそんな風に頭の中で汚すだなんて最低だ。
「……うん。確かにお姫様の君とそういう事をするのはちょっと問題だよね」
「当たり前だ。……ハグや添い寝なぞ夫婦になってからに決まっているだろう! キ、キスだってそうだぞ。この姿を長時間維持するのと貴様をターニアに招待するには祝福を与える必要があったからしたまでで、正式なキスにはカウントされない。良いな!」
「……了解」
うわぁ、ピュアだなあ。こんな子の痴態を妄想した僕って汚れてる~。添い寝とかキスとかの段階で限界ギリギリなんて、本当に祝福の為のキスだったんだ。
ああ、恥ずかしさが臨海点突破だよ。
「穴があったら入りたい……」
「急だな!? えっと、もしかして今の状態が嫌か? 妾としては姫の威厳の為にも今の大きさを保ちたいが、この状態で飛ぶ訓練は途中でな。だが、貴様が嫌なら歩いても……」
「大丈夫。君をこうやって運ぶのが恥ずかしい訳がないだろ? 無理をしなくて良いのはレキアだ。君の足と誇りを守る手伝いを続けさせてくれたら嬉しいな」
「……うむ」
ふう、良かった。変な妄想の題材にしちゃった償いなんてこの程度だけだし、ちゃんとこなさないと。妄想に関しては墓の中まで持って行くべき秘密だ。レキアに知られてなるものか。
さて、話をしていたからちゃんと見ていなかったし、前に一度来たのは幼い頃でお城の一部しか出歩けなかったから見下ろすか見上げるだけだったけれど、こうして落ち着いて観察すると本当に人間の街じゃないって思えるな。
一目見た感想は”小さい子供が思い浮かべる妖精の街”って感じだった。大きい切り株やキノコ、中にはカボチャをくり抜いたみたいな家が立ち並び、女王様が人間サイズだからか道は人が二人両手を広げられる程の広さ。でも、人形サイズの妖精じゃ少し広くて困りそうだけれど飛んで移動するのが普通だからか見る限りじゃ不便そうじゃないな。
「ふふん。どうだ? 驚いただろう」
「何というか凄いとしか言えないというか……」
大勢の妖精達の笑い声が響き、街の至る所にはお菓子が生っている木が生えている。粉砂糖をまぶしたのとかイチゴのチョココーティングしたのとか、柔らかいケーキは半透明の殻に入って枝に付いている。
「ゴキブリとかハエとか大丈夫?」
これだけ甘い物が揃ってる所で増えた光景を思い浮かべると身震いがするなあ。レキアも嫌そうな顔をしていたよ。
「安心しろ。招いた客人や持ち込んだ物に虫やその卵が付着していても転移の時に弾かれる。……先々代の時に大量発生したらしい。アース王国が行った事に匹敵する悪夢扱いだ」
「害虫と同じ扱いなのかあ。王国も嫌われたものだね」
妖精を飼う為に捕まえようとした事によって発生した確執だけれど、相変わらずアース王国の人間が妖精の領域に近寄れば悪戯程度の手荒い反応をされるし、その事がクヴァイル家と妖精の良好な関係に繋がったから擁護する気は無いけれど、ちょっとは同情するよ。
「妾は王国国民だからと無差別には襲わんからな。気に入らん相手なら手荒い歓迎をするが、そうでないなら無視をするだけだ。……それよりも分かっているな? お前が妾をこの様に抱きたいと言っているから許可しただけだ。……”オベロン”候補としてな」
「オベロン? それって確か……」
最後に恥ずかしそうに言い淀んだ言葉、”オベロン”について思い出そうとした時、お喋りに夢中だった妖精達が漸く僕達の姿に気が付いた。
妖精からすれば巨人みたいな大きさな上に片方はお姫様だってのに近距離で気が付かないだなんて、相変わらず種族の特長として王族以外はマイペースなのが多いんだから。
「わあ! レキア姫だ!」
「その人間は姫様が祝福をあげた人? お姫様だけにお姫様抱っこだなんてラブラブね」
「あっ! その銀髪はクヴァイル家の時間を操るって噂の子ね!」
目をキラキラさせて珍しい物を観察するみたいに僕達の周囲を飛び回る妖精達。王族を前にした態度とは思えないけれど、自由で好奇心旺盛な妖精ならこれが普通なんだろう。僕が出会った他の妖精は王族だけだし。
「ねえ! お茶でも飲んで行かれないかしら? それとも女王様にご結婚の許しを得に行く所?」
「だってレキア姫がそんな事を許すなんてオベロンにしたい相手ですものね」
「あ、ああ。今日はこの国を案内してやろうと招待したのだ。お茶は後で寄らして貰おうか」
「やったわ! じゃあ最高のお茶会の準備をしないと! それにしてもレキア姫は素晴らしいオベロン候補を決めたわね! 他の姫様達もきっと素敵な殿方を見つけるわ。……ニーア姫のとは大違い」
凄い勢いで次から次へと来るもんでレキアだって圧倒されてる。凄いな、妖精。これで成人した妖精なら並の宮廷魔法使いよりも強いのが当たり前なんだから、捕まえて鳥かごで飼おうとした王国が無謀だったのが分かるよ。
言いたい事を言うなり妖精達は一斉に飛び去って行く。最後に不穏な事を呟いて。嵐にあった気分の僕はその姿を眺めていたんだけれど、すっかりオベロンについて忘れちゃった。
「所でオベロンって何だっけ?」
「……知らんで良い。話だけを合わせていろ」
「まあ、知られたくないならそれで良いんだけれど、”ニーア姫とは”ってのが気になるよね」
ニーアはレキアの妹の一人で、前髪を目に悪い位に伸ばした引っ込み思案な子だったよね。何度か会っただけだけれど、その子が決めたオベロン候補の事を妖精達は気に入っていないみたいだ。
僕は無邪気に笑っていた妖精達が最後に少しだけ見せた嫌悪が気になった。そして、その理由は直ぐに判明する。その事で面倒な事にも巻き込まれるんだ。
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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レキア
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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レナ
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パンドラ
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サマエル
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シロノ
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アリア