ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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閑話 妖精の末姫

「おい、無茶はするなと何度も言っているだろう。全くお前は……」

 

 私達妖精の姫の中から誰か一人が次の女王に選ばれるけれど、私も、他の姉上達も自分が女王になれるだなんて思っていなかった。だって一番上の姉上こそが次期女王に相応しいんだって思っていたから。母上も期待しているのか姫の仕事である領域の管理だって一番難しい所を任せていたし、昔アース王国の人間に誘拐された妖精を助けてくれた聖女の血筋であるクヴァイル家の二人の子供とだって一番交流をさせていたもん。

 

 私はずっと姉上みたいになりたかった。少し意地っ張りで素直じゃないけれど、努力家で優秀で誇り高くって、きっとあの人が女王になるのが一番素敵だと思ったの。

 

 だから少し無茶をしては姉上に叱られちゃうってのを繰り返すんだけれど、毎回呆れながらも私を見捨てずに世話を焼いてくれるの。

 

「おい、ニーア。お前はニーアであって妾では、レキアではない。妾ではなく、お前がたどり着ける女王を目指せ。所詮自分には無理と諦めるな。この姉を誇りに思うのならば、その妹に相応しい行いをせよ」

 

「は、はい! でも、私なんて……」

 

「だから誇りを持てと……まあ、今はそれで良い。自信がないのなら、頑張る理由を見つけろ。それが自信に繋がるだろう」

 

「頑張る理由? 姉上は有るのですか?」

 

「当然だ。両親と妹、そして全ての民。それらが妾にとって背負うべき物であり、背負いたい物だ」

 

「凄いですね、姉上は。わ、私とは大違いで、オベロン候補だって見つけちゃうんだろうなあ。あっ! もしかしてロノスさんって姉上の……」

 

「ち、違う! いや、彼奴が嫌な訳ではないのだが、そのだな、何と言うべきか……」

 

 そんな自慢の姉上も好きな人の話になったら途端に恋する乙女になっちゃいます。本人の前じゃツンツンしてるのに、周りから見れば恋しているって丸分かりで、とっても素敵。

 

 私も姉上みたいに素敵な人を見付けたいな。お話に出てくるみたいな素敵な人。私だけの王子様……。

 

 

 

「今日も良い天気だなあ。姉上達の所はどうなんだろう」

 

 私が任されたのはアマーラ帝国に存在する妖精の領域、姉妹の中で一番安定している場所。期待されていない訳じゃないけれど、ちょっとだけ自分が情けないと思いつつ趣味の日光浴の為に領域の外に出る。アース王国の人には昔酷い事をされたから見掛ける度に悪戯をして遠ざける私達妖精だけれど、他の国の人達も妖精の領域に繋がる森には近寄らない。

 

 ちょっと寂しいな。私は初対面の人は怖いけれど、一緒にお喋りするお友達は欲しい。でも、領域の管理をしていたら出会いなんて存在しない。一番上の姉上は修行しているそうだけれど、偶に貰えるお休みに街に出掛ける事も可能だからその時にお友達を作れるけれど怖くて行けない。

 

 だから私には人間のお友達なんて永遠に作れっこないのね……。

 

 胸が孤独でチクリと痛んだ時、急に嫌な感覚が私を襲う。これが何か知っている。昔の事件が有ってから私達妖精にはとある魔法が掛かっているわ。これは警告。仲良くしちゃ駄目な相手が近寄って来ているって教えてくれている。

 

 

「助けてー! 誰か助けてー!」

 

 でも、その声は助けを求める声で、巨大なメタルボアに追われている馬の上には緑の髪の気弱そうな男の子。仕立てが良い服だけれど乱れている。

 

 あの人とは関わっちゃ駄目な人。でも、私が見捨てればあの人は死んじゃうから、私には見捨てる事なんて……。

 

 

 これが私と彼の出会い。今から三年前の事。姉上にも母上にもターニアの民にも秘密の関係。だって彼は……。

 

 

「……ニーア。その男が貴様のオベロン候補か? いや、連れて来ているのであれば間違い無いか。して……分かっているのだろうな?」

 

「は、はい……。彼、ヴァールは……アース王国の貴族です……」

 

 そう、ヴァールはアース王国の、数百年経っても未だに妖精族が嫌う国の貴族。あの時、彼は父親のお供で帝国までやって来て、散策の積もりで愛馬に乗って出た先でモンスターに襲われて、私が助けた。妖精らしい気紛れで、二度と会う事の無い……その筈だったのに。

 

 

「妖精さん! この間のお礼を持って来たんだ!」

 

 それから毎日彼は私が守る領域に続く森までやって来た。危ない事はしたくないから臭い木の実をぶつけたりする程度で追い返そうとしたんだけれど、彼は諦めなかった。直接お礼を言うまで諦める気が無いって感じで……。

 

 

 

「それでちょっとだけ会うだけの予定……だったんです。でも、ちょっとだけお話をしちゃって、それが楽しくって、それで何時の間にか好きになっていたんです」

 

「……貴様はそれがどういう事か分かっているのか? 其奴と妖精を攫った者とは別だろう。だが、妖精族とアース王国との関係を知らぬ訳があるまい」

 

 姉上は静かな口調で淡々と告げる。これは怒っている時。幼い頃、悪戯をして他の姉に罪を被せようとしたのを見抜いた時の顔。

 

 なんで私が姉上に怒りを向けられているのか、それはヴァールをオベロン候補に選んだ事。相談も無しに妖精族の敵と見なされているアース王国の貴族を選び、それを黙っていたから。

 

 

「……民はお前に侮蔑を抱いていたぞ。妾とて貴様に怒っている。何故事前に相談しなかった。たった一人で進めようとしたのは何故だ? 妾はそんなに頼りないのか? お前の姉なのに……」

 

 姉上が怒っているのはヴァールを選んだ事じゃなく、選んだ事で私がどんな風に思われるのか分かっていたのに相談もしなかった事。

 

 姉上に迷惑を掛けたくなかった。失望されるのが怖くて、その場凌ぎにしかならないのに黙ってしまった。それが駄目な事だって分かっていたのに。

 

 姉上は私のオベロン候補がアース王国の貴族だから怒っているんじゃなく、それによって私に起きる事を心配して怒っているのね。姉上は私に頼って欲しかった……。その気持ちを私は踏みにじったのね。

 

 

「あ、あの! 発言良いでしょうか!」

 

「ヴァール……」

 

 ターニアに彼を連れて来たのは認めて貰う為。三百年も前の事じゃなく、今の時代の人間である彼の事を知って欲しかったから。彼の事を知って貰えば皆分かってくれると思っていたのに……。

 

 

 

「何をお考えですか!」

 

「直ぐに変更を!」

 

 

 話すら聞いて貰えなかった。私と彼の仲は誰にも認めて貰えないのね……。

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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