ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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母の悪戯

「この先で女王様がお待ちです。ですが、先ずはレキア姫とロノス様のみお先に入るようにとのお達しです。ニーア姫及びオベロン候補の方は少々お待ちを」

 

 僕はレキアを肩に乗せ、重圧に耐えるニーアとヴァールは並んで進みながら謁見の間の扉の前までやって来た。……所でずっと気になって居たんだけれど、僕とヴァールって此処に来る最中に小さくなった筈じゃないのかな? 普通にレキアが僕の肩に乗れる大きさのままだけれども。

 

 小さくなる事で城まで到着するのに時間が掛かったけれど、まさか時間稼ぎが目的だった? 女王様ったら何を考えているんだろうか?

 

「あ、あの、この椅子は……」

 

「この椅子に何か問題でも?」

 

「いえ……」

 

 先に入るように言われたからには従うんだけれど、待つように指示された二人の方に視線を向ければ用意されたらしい豪奢な椅子が視界に入る。貴族が座りそうな肘掛け付きのフカフカとしてそうな真っ赤な椅子が二つ。でも、その大きさは妖精サイズ。当然ヴァールは座れないし、ニーアも抗議しようとするけれど妖精騎士達にしれっと対応されたら黙ってしまう。

 

 此処に来て地味な嫌がらせ……なのかな? ヴァールが気に入らないにしても姫であるニーアへの態度は妖精騎士として間違っていると思うんだけれど。迎えに来た時の一切気にしていない態度と今の対応の違いに疑問を感じる僕だけれど、早く進めとばかりにレキアに耳を引っ張られる。

 

「早く行け。母上をお待たせする気か」

 

 不思議なのはレキアがニーアに助け船を出さない事。二人の恋に手助けも妨害もしないとは言ったけれど、今の対応に何も言わないのは彼女らしくない。……ああ、何となく分かった。

 

 

「前途多難だね」

 

 ……思い詰めた結果、変な事にならなければ良いんだけれど。僕はそれが心配で小さな声で呟く。それは後ろの二人には聞こえていないみたいだった。

 

 

 

 

 

「良い。此度は非公式な場だ。跪く必要は無いぞ」

 

 謁見の間にて玉座に座る女王様は跪こうとした僕とレキアを手で制する。ニーア達に重圧を掛けっぱなしにしていたから随分と不機嫌なんだなって思ってたのに、僕達には何時もの態度だ。関係無いから怒りを向けないのか、それとも……。

 

「女王様におかれましては……」

 

「堅苦しい挨拶も結構だ。おい、お前達は一旦席を外せ。二人と内々に話したい事がある」

 

 僕の挨拶を遮った女王様が指示すると部屋の中で控えていた騎士やメイドは迷わず横の扉から出て行く。こんな状況で出て行けと言われて出て行くのは女王様への信頼の証なんだろう。ちょっと盲目的に従っている気もするけれど……。

 

「驚いたか? 幾ら何でも一切迷わず出て行く事に。貴様の所では居ないものとして扱い、残った者も耳や目にした事を絶対に口外しない物だからな」

 

 あっ、思った事を感づかれている。まさか心を読める? いや、まさかね……。

 

 

「さて、それはそうとして。レキア、まさかお前がロノスをこうも早くオベロン候補……婚約者として連れて来るとはな。いやいや、冗談で結婚させてやるとロノスに言った事はあるし、政治的にも申し分ない話ではあるが……」

 

 ……婚約者? あっ、そうだった。オベロンって女王の夫の事だ。何となくそうじゃないかなって気はしていたんだよね。ニーアとヴァールを見てたり、街で出会った妖精達の態度を見る限りさ。どうりでニーアへの不満を口にする筈だ。

 

「は、母上! それはですね……」

 

 オベロンってのが何なのか思い出した僕に動揺はない。だってお姫様抱っこの状態で国を歩くんだし、その手の事かなって思ったからね。でも流石にレキアは動揺しているな。女王様に知られた訳だし。女王様、思いっきりニヤニヤ笑っているのに気が付いていないだなんてさ。

 

「レキア、女王様にはとっくにバレてるっぽい」

 

「んなっ!?」

 

 母親に友達を婚約者にした事を知られた事で真っ赤になっていたレキアだけれど、それが嘘だとバレて居たのを知って余計に恥ずかしいのか口をパクパクさせている。女王様、凄く楽しそうにしているな。

 

 うーん、流石は悪戯好きな妖精を統べる女王。娘さえも悪戯の対象なんだ。

 

「余に分からぬと思うたか? どうせレキアの事だ。足を捻ったのを誤魔化す為に抱き上げられる理由としてオベロン候補としたのだろうが……ちと相手が悪かったな。リュボス聖王国やクヴァイル家との関係を考えれば”破談になったが珍しい話ではない”とは行かんぞ?」

 

「うぐっ!」

 

「友……に故郷を案内する事で冷静さを失ったか。先に言っておく。暫しの間は本当にオベロン候補とした事にせよ。ロノスには迷惑を掛けるが付き合ってくれ。それなりの礼はしよう。……友だから礼は要らぬ、とは言わせんぞ?」

 

 何というか一から十まで見抜かれている。流石は母親と言うべきか、お祖父様の友人と言うべきか。所で最初の”友”って所が少し変じゃなかった?

 

「しかし、あのレキアに人前であの様な抱き方を許し、あまつさえ肩に乗る姿さえも見せるとは。まさかまさかとは思っていたが、レキアよ。随分と心を許したと見える」

 

「あの、母上。その話はちょっと……」

 

 しみじみとした感じながらニヤニヤと娘を弄くる感じの女王様には流石のレキアも押されっぱなしだ。慌てた様子でコレ以上話題を続けさせまいってしているんだけれど、その反応が面白いからしている訳で。

 

 それにしても普段は乗り物代わりにしているとか言っていたけれど、ニーアの反応からして何かしら意味があったんだね。それもお姫様抱っこ以上に人前じゃ恥ずかしい事なんだ。

 

「ロノスよ。貴様も大変だったであろう? ターニアに入ってからずっと娘を運んでいたのだからな」

 

「大丈夫でしたよ。レキアは軽いし、割と役得な感じもしたので。ほら、レキアって凄く可愛いし」

 

「そうかそうか。貴様からして娘は可愛いのか。そしてオベロン候補だと紹介された後でその意味を思い出しても恥じて慌てる事もない。随分とレキアを気に入ってくれて結構だ。本当に娘と結婚させてみたくなった」

 

「……母上、まさか来た時からずっと見られてました?」

 

「無論だ。余は女王。そして妖精の王族とは人の子と違って血筋や能力で選ばれるのではない。妖精の王族という種族だと知っているだろう。故にこそ強き力と……重き責任を持つ。来訪者の監視も責務の一つだ」

 

 来た当初からずっと監視されていたのだと知ったレキアは表情を固めてしまった。うーん、そりゃそうだ。ずっとお姫様抱っこされてデートしている姿を母親に見られていただなんて。

 

「お見苦しい所をお見せしました……」

 

「良い。余は随分と楽しませて貰った。ああ、そうだ。ついでに楽しませて貰おう。ロノス、妖精が相手の肩に乗る意味を教えてやろうか?」

 

「お待ちを! 母上、それだけはお待ちを!」

 

 レキアったら随分と慌てているな。正式な謁見じゃないとは言っても相手は女王、幾ら母親でも言葉を遮るのはレキアらしくもない。これは知られたくないって感じだね。

 

 

「固い事を言うな。どうせ後々知る事だ」

 

「いや、それでも良いです。教えなくて結構です」

 

「……退屈な奴め。余は話したい。それでも聞く気は無いと申すのか?」

 

 女王様から圧力が発せられる。この重圧、城の玄関で受けた物とは比較にならない。気紛れな妖精の注意点、それがちょっとした事での機嫌の変化。明らかに目つきが剣呑な物へと変わっているし、正直言って聞いてしまいたい。気にはなっているし。

 

 

 

「だってレキアが聞かれたくないと言っているので。友達が嫌がっている事をしたくないです」

 

「……結構」

 

 重圧が急に消え、女王様の機嫌も良くなったみたいだ。まさかさっきの演技? だったら聞かなくって良かったな。

 

 

「レキア、良い相手を選んだな。ふふん。本当にロノスをオベロンにしたくなったぞ。……何なら余の愛人になるか?」

 

 ……はい? いや、どうやって断ろう。女王様って小さな頃から知っている上に友達の母親で、更には祖父の友達だし。幾ら人間離れの美人でも流石にな。

 

「母上!」

 

「冗談だ。怒るな、娘よ」

 

 レキアが怒ってくれたからか女王様は肩を竦めて呆れた感じで溜め息を吐く。これは本気にするなって事か。流石は悪戯好きの妖精の女王様だな。結構な年齢なのに……。

 

「何か?」

 

「いえ、何も」

 

 睨まれた。……本当に心読めるんじゃないの?

 

 

 

 

「……本当にニーア達にも見習わせたい。少なくとも今の二人の交際を認める度量を余は持たぬ」

 

 あっ、反対するって断言したよ。大変だな、二人共。

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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