ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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六対四でギリギリ勝った

「……デートか。うん、デートだよね。デート以外の何物でもないんだけれど……」

 

 鏡の前で幾つか見繕った服を掲げてどんな感じなのかを確かめる。アリアさんから誘われたサーカスに行くにあたり、服にも色々と気を付けなくちゃならないからだ。ほら、彼女も良い服を選ぶんだろうけれど、正直言ってクヴァイル家とじゃ財力に差があるし、端から見て質に差が有りすぎるのも問題だ。

 

「ちょっとこれじゃあ貴族丸出しだな。もうちょっと地味な感じで、少し裕福なだけの家の感じで……」

 

 大勢が集まるサーカスだし、如何にも貴族でございますって感じの服装じゃ周囲の注目を集めて良くない。サーカスのチケットだってクジの景品程度だし、だからって僕が良い席のを買い直すのはアリアさんに失礼じゃないのかな? 彼女なりに勇気を出して誘ってくれたんだし、それを席が気に入らないみたいな対応で返すのもな……。

 

 だからこうして悩んでいる。今までデートは何度か経験している僕だけれど、その相手は幼い頃からの知り合いとだけだし、結構気軽な感じだった。ああ、クヴァイル家次期当主としての仕事としてエスコートした事も有ったけれど、あれはデートにカウントしなくて良いか。

 

「……夜鶴、所でプルートが言っていた建物だけれど、どんな所だった?」

 

「はっ! 俗に言う連れ込み宿の類で御座います。契約している店から娼婦を派遣して貰う事も可能で……」

 

「いや、其処まで詳しい説明はしなくて良いからさ。そっか、そんな所か。うわぁ……。最悪最低だな……」

 

 僕という男は時にぶれる事がある。貴族としての立場や兄として可愛い愛しの妹を守る事が最優先で他の事は二の次だと思っていながらも関わった相手の危機に無茶をしかねない。自分の立場からして何かあればどれだけの人数が不幸になるような影響が出るのか想像出来ない程に愚かではないんだけれど、分かってやってる方が愚かなのかな?

 人間である以上は感情を捨てるのは難しいけれど、なるべく捨てるように務めるべきなのが貴族って特権階級の義務だ

 

 そんな僕が最近肉体関係を持った夜鶴だけれど、こうして報告の時はそんな事があった様子は一切見せずに感情を捨て去った声での報告。いやいや、本当に凄いな……。

 

 おっと、思考がすっかり逸れた。理由は分かっているよアリアさんとのデートだけれど、僕はそれを素直に楽しむ気が無い事に罪悪感を抱えている。友人であるフリートの領地で起きている”幸福の門”に関わる騒動。ゲームでのイベントでも存在し、進め方次第ではキャラの永久退場まで有り得た厄介事の種。何とか関わりたいけれど他国の有力貴族が友人の実家であっても領地の問題に関わるのは越権行為。だから悩んでいた時に”偶然巻き込まれる”理由になるサーカスへのお誘いは有り難いんだけれど、それって告白の上にキスまでした彼女の好意を利用するって事で……。

 

「……他の女の子とも仲良くしてるのはお嫁さんを大勢持つ貴族だからって言い訳可能だけれど、こっちはどうなんだろう? いや、どの道他に方法なんて無いんだけれど……」

 

 誘われたから向かい、その先で巻き込まれたから関わる。それが友人を助ける為に介入しつつも通常なら起きた問題を回避する方法だけれど、サーカスの途中で抜け出す予定な時点でデートはデートで楽しむって事は不可能だし、しかも向かう予定の建物が建物だ。プルートも他の建物を予知で指定してくれたら良かったんだけれど、其処が最適なんだろうし内容は選べないから文句は言えない。そして感謝の言葉は言うべきだ。

 

「こんな時は恋愛相談だ。折角人脈を広げているんだし、相談しても問題無い僕個人の知り合いから選んでっと。先ずリアスは除外。あの子に恋愛相談とか絶対無理で、一番はチェルシーなんだけれど、実家の都合で臨海学校迄は聖王国に戻っているし。じゃあ……誰にしよう」

 

 よりにもよって一番頼りになりそうな彼女が居ないのは痛い。フリートの婚約者で端から見ていて仲が良いから協力を頼むのも楽だし、付き合いだって長いからこっちの情報を知られても問題無い仲だ。

 

 チェルシーが駄目なら情報が流れても大丈夫な相手で恋愛相談が可能そうなのは……居ない? プルートの能力とかフリートを助ける為に偶然を装って巻き込まれに行くとか、説明すべきだけれど説明したら不味い情報が多い本件。ど、どうしよう……。

 

 レキア……うーん、どうなんだろう? あの子も恋愛相談に乗れる程に経験は無いだろうし。

 

 パンドラ……どんな時も頼りになる彼女は今はお仕事で出ている。

 

 夜鶴……は多分駄目。ポンコツな所があるし、専門外だろう。

 

「アリアさんを置き去りにして一人で連れ込み宿に行く? いやいや、ちょっとそれはなあ……」

 

 友人であり、既に好意を伝えて来た彼女を利用するみたいだし、実際にそうなんだけれども、彼女の力は必要だ。プルートも闇属性だけれど、神獣対策として戦力に数えたいし、それには仲良くしたままじゃないと。

 

 目的の為に自分を好きな友達を利用する前提で考える僕って最低だよね。でも、そうでもしないと駄目な程に敵は強大だ。ゲームみたいに”勝てそうにないから何時間もレベル上げに費やしたけれど、ボスの所に行くまで事態は動かない”とかだったら助かるんだけれど、そんな都合の良い話は有り得ない。

 

「夜鶴、僕そっくりに変装……は流石に無理だよね」

 

「……申し訳有りません。そのような技術を持って生まれていれば良かったのですが、生憎持ち合わせず……」

 

「気にしないで良いさ。僕が無茶を言っただけだからさ」

 

 ほんのちょっぴり期待して夜鶴に身代わりを頼もうとしたんだけれど落ち込ませるだけの結果で終わっちゃうし、僕は何をしているんだろう。取りあえず肩に手を乗せてフォローしておこう。何時も世話になっているんだし、この程度を気にする必要は無いんだからさ。無茶ぶりは駄目だよ、常識的に考えてさ。

 

 どうすれば情報をアリアさんに伏せたまま……。

 

「……ん? ああ、そうか。どうせ神獣との戦いに参加して貰うんだし、多少の情報は渡すべきだよね。じゃあ、話しても大丈夫な範囲内を話してサーカスの途中で抜け出すとして、せめて先に何処かで本当のデートにでも誘おうか」

 

 彼女が願いとして要求したのはデートだし、それを途中で切り上げるなら埋め合わせだって必要だ。じゃあ、そのデートプランだけれど、サーカスの日までにちゃんとしたのが思いつくかどうか。……よし、最後の手段だ。

 

 

「ポチに……いや、彼女……ポチ? うん、彼女に相談してみよう。一周して逆に良い案を出してくれるかも」

 

 ……でもなあ。

 

 




応援待っています

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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