ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
”幸福の門”。何もない場所に突然現れて、門の先には理想の世界が待っている。そんなくっだらねぇ噂が広まった時には内心馬鹿にしてたんだが、流石に自分の実家にまで試しに行く奴が出始めたんなら話は別だ。さっさと終わらせて臨海学校でチェルシーの水着姿を堪能させて貰う為、俺様は久々にレイム領に戻って来ていた。
「お帰りなさいませ、フリート様!」
「おーう。俺様の出迎えご苦労さん」
俺様を出迎えたのは餓鬼の頃から知ってる執事の爺さんを先頭に顔見知りの連中だ。この中には兵士達の姿は見えねぇが、既に調査にでも行ってるのか?
「んで、ウチの領地での広まり具合はどうなんだよ?」
元々噂が広まったのは隣の隣の領地、同じ国の貴族だってのが吐き気がする部類の屑貴族の領地で、最近調査によって不正が不自然な程に発覚した事で首がすげ替えられた。ありゃ見せしめって奴だな。先代王妃の太鼓持ち、更にそれのそれのそれの太鼓持ちとなりゃ幾ら今の王妃が優秀でも完全に把握は不可能だ。まあ、結構な数が不正を暴かれてるから時間の問題なんだろうが。
・・・・・・正直言って俺様は恵まれた立場だって自覚は有る。家の力にも才能にも見た目にも周りの人間にも恵まれてるし、幸せが約束された世界の話を聞いても自分が居る世界の事だって思う位にはな。でもよ、そうでない連中が居るのも分かってる。胡散臭いと思っても縋りたくなる暮らしを送っているんだ。
・・・・・・俺様達の責任だよな。大貴族ってのはそんなもんだ。テメェの所だけちゃんとしてりゃあ下の連中が好き勝手しても良いなんてもんじゃねえ。そういうのに目を光らせる責任が有るから偉いんだよ。
「噂程度、ですな。”門の先に望む世界が広っていて、中の物を好きに持ち出して遊んで暮らせる”等と普通は信じないでしょう。面白半分、駄目で元々、そんな軽い気持ちで確かめるが簡単には見つかりませんしな」
「まーな。噂が最初に広まった所じゃ大金を手にして仕事を放棄する連中が出てるって話だが、そもそも誰がそんな話を広めたんだろうな」
あまりにも都合が良さ過ぎる話だ。マトモに考えれば妙な連中が背後に居そうなもんだがな。俺様を呼び戻したのは次期当主が指揮を執る事で志気を上げて、領民には真剣に取り組んでるってアピールって所か。こりゃ責任重大だ。裏に誰か居るんなら、思惑通りにはさせねえよ。
「あぁ、面倒だな。さっさと噂を調べて、何かあるなら何とかして終わらさねぇとな」
此処まで噂が急激に広まったんだ。裏に誰か居るのは間違い無くて、要するに俺様達に喧嘩を売ってるって事だ。上等だよ。俺様と、俺様の大切な宝である領民に手を出そうってんならその喧嘩を買ってやる。
この領地は俺様が何が何でも守り抜く。それが貴族に生まれた俺様の責務なんだからよ。
「しかし各地で怪しい動きをしてるって連中……”ネペンテス商会”だっけか? どんな物でも用意する腕利きの商人って話だが、にしてはコネだの流通ルートが全然分かんねえ怪しさ満天のお手本だし、確かロノスの奴が注意しろって言ってたな。……敵と判明したら容赦なく燃やしてやるよ」
俺様の炎魔法は臨機応変に戦える凄い奴だ。まあ、同年代には敵は・・・・・・まあ、友人とその妹と、自分の婚約者位しか居ないな、うん。ちゃんと周りは認めてるよ。将来的には俺様が最強だけれどよ。
今日の天気は快晴で、気温も高くも低くもない心地良さを感じる程度。そんな恰好のデート日和の中、僕とアリアさんはポチの背中に乗ってレイム領のサーカス会場を目指していた。
「きょ、今日は普通に飛ぶんですね」
ポチが風を操ってくれるからどれだけ速く飛んでも風が打ち付ける事は無いのに彼女は不安な様子で僕にしっかりと掴まっている。背中に柔らかい物が二つ押し当てられる感触は悪くないんだけれど、もしかしてポチが何時もの変則飛行をすると思っていたのかな?
「錐揉み回転行っておく? 普通に飛べってアドバイス貰ったからそうしているんだけれど」
僕としてはレナのアドバイスを参考にしたんだけれど、レナのアドバイスだったから少し間違っていたみたいだ。ポチも普通に飛ぶのが嫌なのか時々こっちを見ながら甘え声を出して可愛いし、アリアさんが急降下とかジグザグ飛行とか錐揉み回転を期待しているのなら……。
「いえ、普通が良いです! このままロノスさんと一緒にのんびりと飛んで行きたいので」
「そう? まあ、無茶を聞いて貰う代わりに精一杯エスコートするって約束だしね。ポチ、もう少し我慢して貰えまち……貰える?」
「キュイ!」
おっと、何時もの話し方になる所だった。デート中は止めろって言われてたんだよね~。それにしてもポチは我慢強くて聞き分けの良い子でちゅね~。帰ったら思いっきり撫で撫でしてあげまちゅからね~。
「それにしても折角のデートのお誘いだったのに僕の都合で台無しにしちゃってゴメンね?」
「いえいえ、こうしてロノスさんが私とのデート内容を考えて下さった方がずっと嬉しいですし、私は幸せです。……でも、あの時の勘違いだけは忘れて……いえ、忘れないで良いですが、決して口にはしないで下さいね」
自分勝手なお願いを許してくれたアリアさんの優しさに癒されると同時に申し訳無くなる。僕、こんな子を厄介な連中との戦いに駆り出す気なんだからなあ。
ポチに揺られ背中にアリアさんの存在(胸)を感じつつデートのお誘いを台無しにした申し出の事を思い出していた。
「えっと、サーカスの途中で抜け出して向かいたい所がある?」
「うん、僕の都合でね。だから更に勝手な申し出なんだけれど、せめて埋め合わせとして早めに出掛けて先に別の所を回りたい。駄目かな?」
僕に対して正面から愛の告白をして来た女の子からのデートのお誘い。それを僕は家が困った事にならない方法で友人を助けたいって勝手な理由で台無しにしようとして、それを本人に頼んでいる。とんだ恥知らずでアリアさんを困らせ傷付ける行動だ。
「宜しくお願いします! ロノスさんからのデートのお誘いの方が楽しみですよ、私は!」
……って思ったんだけれどアリアさんは目を輝かせて嬉しそうだ。え? 演技とかじゃないよね? 僕に気を使っているとかじゃなくて?
「う、うん。それなら僕も嬉しいけれど……」
普段の彼女と違って今の彼女には半分くらいしか演技を感じない。目をキラキラさせて少しテンションが上がって見えるけれど、こっちは演技。でも喜んでいるのは本当みたいだ。
「それでデートはどんなプランを……いえ、楽しみにしたいので今は良いです。でも、サーカスを抜け出して何処に行くのかだけは教えて欲しいなあって……」
「あっ、うん。連れ込み宿なんだけれど良いかな」
「連れ込み宿。つまりは……はわっ!?」
あっ、ヤバい。結論だけ語って行程を言わないからとんでもない事になってるよ。えっと、この状況を再確認してみよう。
告白して来た女の子からのデートのお誘いを受けたから途中で抜け出して連れ込み宿に誘う。うわぁ……。
好意に下心でつけ込む最低野郎じゃないか!? あっ、これって幻滅されて関係が壊れる奴だ!
不味い不味い不味い不味い不味いっ! さっさと詳しい説明をしないとっ! ……彼女の力が必要なのもあるんだけれど、大切な友人でもあるんだからこんな所で……。
「え……えっとですね。私、ロノスさんなら”初めて”を捧げても良いっていうか、本望というか。……でも、優しくして貰えたら助かります。だけれどロノスさんが強引なのが好きなら……」
「誤解ですっ!」
顔を赤らめてモジモジするアリアさん。多分これも演技なんだろうけれど、言っている事自体は本音だ。いや、変な風に思われて嫌われるよりずっと良いんだけれどさ……。
女の子ってよく分からないな……。
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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レキア
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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レナ
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パンドラ
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サマエル
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シロノ
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アリア