ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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サーカス

 ……楽しい時間はあっという間に過ぎ去って行く。チケットが当たったし、これを口実にロノスさんをデートに誘い、もっと親密に、可能ならベッド上での延長戦に持ち込もうって下心から誘ったデートプランより、ロノスさんが私の事を想い、私の為に考えてくれたプランの内容の方がずっと良い。……可能ならプランの最後は達成したいけれど焦りは禁物だろう。

 

「人が増えて来ましたね」

 

「うん、だからはぐれたら駄目だし、もう少しくっついて……たか」

 

「はい。私、絶対にロノスさんから離れませんね」

 

 サーカスは結構な人気らしく、あれだけの屋台が開かれていただけある。巨大なテントへと向かう人混みの中、私は彼の腕にしっかりと抱き付いて胸を押し当て、指を絡める。向こうからも握り返してくれたのは私のお誘いを一人称が俺様の正直言って見ていて痛い友人を助ける口実に利用する事の罪悪感からだろうけれど、嬉しい物は嬉しい。少しテンションが上がった気分だ。

 

「アリアさん?」

 

「……はっ!? す、すいません。ちょっと嬉しさの余りに」

 

 気が付けば鼻歌を歌ってロノスさんの言葉を聞き逃していたらしい。危ない危ない。……嫌われていないだろうか? いや、この程度で嫌って来る相手なら私は好きになっていない。こうして誰かの側に居る事を望むなんて昔の私では考えられなかったのだから。

 

 

「……第三演目迄だけれど楽しもうね」

 

「申し訳無さそうにしなくて大丈夫ですよ? 私のデートをお受けしてくれた事よりも、ロノスさんからデートプランを考えてお誘いして下さった事の方が嬉しいですし楽しかったですから。……正直言ってクジで当たったチケットの席にお誘いするのが申し訳無い位で」

 

「いや、大丈夫。偶には普段とは違った環境で楽しむのも良いからさ」

 

 ……駄目だ。こんな風に気を使ってくれる彼の隣で私はデートの後の”もしも”を考えてしまう。もしも、予言が外れた場合、若い男女がそれ用の宿の部屋で二人っきりな訳で。そのままの流れで私は彼と……。

 

 その場合、彼から迫られるのか私から迫るべきなのか……。

 

「あ、あの! 押し倒さ……いえ、何でも……」

 

「う、うん。僕は何も聞いていないよ……」

 

 思わず口に出た内容に慌てる私は誤魔化せない誤魔化しに走るけれど、良かった、引かれるんじゃなくって照れられている。彼の乳母兄弟だというメイドの言動からして誘惑めいた発言をする女は初めてでは無いだろうし、彼だって年頃だ。少し私を好きにするか私に好きにされる光景でも思い浮かべた結果なら嬉しい。

 

 さあ、それではサーカスを楽しもう。デートが終わった後のオマケ程度に過ぎないけれど、惚れた相手と一緒にショーを見に行くだなんてシチュエーションは非常にいい感じだから。

 

 

 

 

「さあ! 今宵は心行くまでお楽しみ下さい!」

 

 サーカスは本当に人気だったらしく人がひしめき合っていて、私達の席は安い席だったのか肩が触れる程に近い。要するに私はロノスさんと密着しても良いのだ。はぐれない為にって口実ではなく、こうして隣り合って密着して……。

 

「はぅ……」

 

 正直言ってショーは凄く興味無い。と言うより楽しくない。だって最初のショーは鳥型のモンスターを従えての曲芸飛行。最初からこれなんて流石は大人気のサーカスなだけあるだろう。サーカスなんて実は初めてで、見に行った時の話を聞かせてくれる知人も皆無だったので本で読んだり盗み聞きする程度だが、これが目玉になるレベルの内容だとは分かるのだけれど……。

 

「此処に来る迄に乗って来たのは……」

 

 そう、ポチだ。あのジグザグ飛行や急降下、目の前の歓声を集めているのが初心者用の安全飛行に見える程に荒々しくスリル満点。初めて乗ったモンスターがアレだったし、今日は安全……安全? な超高速飛行だったけれど、それでも目の前のモンスターの数十倍の速度。

 

「あ、あの、ロノスさん? なんかごめんなさ……い?」

 

 数度乗っただけの私でさえ思ったのだから、普段から乗り回し、あまつさえ気絶するかと思った変則的な高速飛行を”楽しい”だの何だの口にするロノスさんですが、何故か目を輝かせてショーを見ていつ。……え? いや、どうして?

 

 

「あの子も可愛いなあ……」

 

「……あ~」

 

 そうだ、この人って鳥派だった。何故かドラゴンまで同じ感覚で可愛いって言っているけれど、まあ、それは良いだろう。だってロノスさんが可愛いと思う物にケチは付けない。

 

 

「楽しんで居るなら嬉しいです」

 

「うん、鳥は見ているだけで癒されるよね。凄く癒されるよ。まあ、僕の可愛くって賢いポチが一番なんだけれどさ」

 

 私にとってサーカスがどれだけ凄いとかは重要ではなく、ロノスさんがどれだけ楽しめているのかが重要だ。だから良しとしよう。……うん。サーカスに来た意味とかは深く考えたら駄目だ。

 

 

「さあ! 続いての演目は怪力男カーリキの登場だ!」

 

 次に出て来たのは二メートル以上の巨漢。筋肉が凄くって頭はハ……スキンヘッド。如何にも力自慢ですって見た目で、自分と同じ大きさの岩を頭より上に持ち上げて自慢気に笑う。

 

 ……うん、確かに凄いけれど、

 

 

 

 知り合いのゴリ……怪り……力自慢の姿を思い浮かべる。何度か修行風景を眺めたけれど、自分の数倍の大きさの岩を持ち上げて颯爽と走り回っていたけれど。

 

「リアスさんの方がゴリラ……いえ、力が強いですよね?」

 

「あの子は幼い頃から頑張っているけれどね。まあ、実戦経験が違うかな? モンスターとも沢山戦って来たしさ」

 

「……ああ、成る程」

 

 どんな理屈なのかは詳しくないけれど、モンスターを倒し続ければ強くなれる。戦いが筋トレになっているとか、技術を磨いているとかではなく、どうも肉体の”質”が上がるらしい。それこそ剣に例えるなら素材になっている金属の純度が上がるとか、そんな感じだ。同じだけ鍛えても私みたいな”ヒューマン”では”鬼族”や”獣人”には勝てない。青銅剣では鋼鉄の剣には性能が劣るみたいに。

 

 でも、リアスみたいに鍛え上げて戦い続ければ超高品質の金属の武器の如き力を手にする。

 

「つまりメタリックゴリラ……とは、少し違うか」

 

「メタリックゴリ……?」

 

「あっ、忘れて下さい。絶対に忘れて下さい!」

 

 怪力芸に大勢が沸く中、私は思わぬ失言に慌てていた。……さて、そろそろ連れ込み宿に行く時間だ。

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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