ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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誇り高き貴族(あくまでも個人の感想です)

 それは槍と呼ぶには余りにも粗雑な造りだった。お世辞にも鋭利とは呼べない先端で、微かに細長い楕円形に見えなくはない岩の塊。いや、岩と呼ぶには脆く、飛んでいる最中に自重で崩れ始めている。そして飛行速度はどうなのかと言えば何かの罠を連想させ、見た者に逆に警戒を与える程に遅かった。

 

「……えっと、何だったのでしょうか?」

 

 僕とネーシャを背に乗せたポチを狙って……多分狙ったんだろうなって感じの魔法で放たれた先端が少し狭まった細長い石材みたいな物体はヘロヘロって感じで勢いを失って地上に落下して行く。その際に中心からベキって感じに真っ二つになった断面からはスカッスカの内部が見えたんだ。

 

 攻撃と呼ぶにはお粗末で、悪戯と呼ぶにも脅かす程じゃないと言えども悪質。これが地上で接近戦の牽制として放つならば未熟な技程度で済むんだけれど、ドラゴンに並ぶ空の王者グリフォンが飛行中に放ったのだから一切意図が掴めなかった。実際、届きもしなかったし、分かっていたから対応すらしなかった。

 

 僕の背後からもネーシャの戸惑った声が聞こえる。例えるなら”お命頂戴!”って叫びながら両手両足に拘束具を装着した重傷の男が熟したバナナを手にトボトボ歩きで突っ込んで来た、そんな感じだ。

 

 ……いや、それは逆に怖いか。思わずポチでさえも動きを止める意味不明さだけれど、それが狙い? 動揺させて第二陣が本命を? でも、警戒するも同じ様に届きもしないショボい魔法が飛んでくるだけだ。

 

「……ハッ!」

 

 ポ、ポチが鼻で笑った。こんな行儀の悪い真似をさせるだなんて、あの魔法が当たっていた時よりもダメージが大きい。ま、まさか本命はこれだったっ!?

 

「……兎に角降りて事情を聞こうか。ネーシャ、君は僕が守るけれど、油断はしないで」

 

 魔法が放たれた方を見れば砂浜でこっちを指さして叫ぶ数人の男子生徒達。えっと、何って言っているんだ?

 

 

「見ろ! 僕の勇敢な行動にグリフォンは恐れをなして止まっているぞ!」

 

「はっはっはっ! 実技の授業なんかじゃ本番の強さは計れないって事だな!」

 

「ロノス・クヴァイル、恐れるに足らず!」

 

 ……あー、えっと、確か連中はルクスの取り巻き連中か。決闘の後くらいの時期から引っ付き虫みたいに側に居た奴らで、今のは僕を認識しての事だと。……ふーん。へー。そーなんだー。

 

 取り巻きと言っても入学時期が同じだから知り合う機会を与えられた程度の連中、派閥では下準備をしなくて良いギリギリの身分。こんな事をしている時点で反王妃派の連中なのは間違い無いと。

 

 自分達の為に他の貴族がせわしなく働いたって事への優越感や合宿というテンションが上がる状況で王子と仲が良くない僕の姿を発見したから驚かせようって魂胆だろうね。

 

「……君達、さっきのは何のつもりかな?」

 

「黙れ! 王国を乗っ取ろうとする悪女の身内め!」

 

「そうだ! この機に我々誇り高い王国貴族と貴様の違いを見せてやる!」

 

「……」

 

 あの決闘の一件の影響か馬鹿王子の巻き添えを恐れた貴族が幾らか離れたと耳にしている。目の前の三人はその空席に滑り込めた運が多少良い連中なんだろう。後はお供として雑魚モンスターの狩りでも経験して、少しはレベルアップも果たして気が大きくなっていると。

 

「喧嘩を売ってるって解釈しても良いかな?」

 

「喧嘩? はっ! これは正当な決闘だ!」

 

「俺達が勝ったなら貴様の妹はルクス殿下の物! そして俺達は殿下の側近だ!」

 

「お、おい。流石にそれは調子に乗り過ぎじゃないか!? ま、魔法だって俺は”やれ”とは言ってないし……」

 

 分かる分かるあの高揚感は慣れていないと徹夜明けの変なテンションになっちゃうよね直ぐに格上に叩きのめされれば起こらないけれど、その点では目の前の三人は運が悪いんだろうな。得意そうに僕達に向かって挑発的な言動を……あっ、一人は僕だけじゃなくネーシャにも気が付いて、それで冷静になっちゃったのか。

 

「何を言うか、臆病者め! 悍ましい魔女と交友を深める此奴を俺達三人で倒すんだろうが!」

 

「そうだぞ! 訳の分からない力を使おうが、三人で力を合わせれば問題無い!」

 

「い、いや、俺は……」

 

 すっかりテンションが上がってしまっている二人を余所に顔を青ざめ冷や汗を流し、頭にデバフが掛かった仲間に巻き込まれまいと焦った彼は視線で僕に助けを求めるけれど、僕に対して何か言っていたし、ネーシャだって一緒だったんだから穏便にって訳には……。

 

「ロノス様、此処は抑えて下さいませ。貴方が出るまでもありません。……貴方達もお下がりなさい。今なら私は何も無かった事にしてあげますわ」

 

 そのネーシャからの思わぬ言葉。……リアス関連でふざけた発言した奴はどうにかするとして、何で彼女は三人を庇う? 

 

「し、失礼しましたっ!」

 

 あっ、ネーシャに気が付いてた奴が慌てて去って行く。そう言えば彼女を見て直ぐに不味い事になったって分かったみたいだし、外交関連の家の出身かな? それで皇女に選ばれた子達の顔は肖像画で把握していたとか?

 

 この場では無かった事にするって言われても、正式な書面で契約を結んだ訳じゃない。あれは今後怯え続ける事になるぞ。まあ、ざまあみろって所だとして……残り二人が問題か。

 

「彼奴、何を怯えているんだ? 誇り高き王国貴族の一員に相応しくない姿だぞ!」

 

「殿下を裏切る気かっ!」

 

 ……これが高揚感からの知能デバフか。操られてるって疑惑すら感じるけれど、逃げた仲間と違って未だ戦う気みたいだね。

 

「さあ! そのグリフォンに守って貰わないで決闘に応じろ!」

 

「その偉そうな女も同時に相手をしてやるぞ!」

 

 おっと、名乗りもせずに攻撃を仕掛けてきた”誇り高き貴族”二人はネーシャも巻き込むのか。彼女の手にした杖で足の事は分かって居るみたいだし、知能デバフは中途半端な悪知恵には効果が出ないのか。

 

「……下郎が。私は、ええ、私はこの場で穏便に済ませる気でしたのに。折角の慈悲を……」

 

 私は、か。まあ、彼女以外の誰かが勝手に動くのは別の話って事だね。それこそ問題になる前に彼等の実家が……って事も有り得るんだしさ。

 

「ネーシャ、落ち着いて。……ほら、止めに来た」

 

 それはそうと怒りの演技は止めてくれないかな? 夏本番だからコートは脱いでるのに背中の方で氷属性の魔力から来る冷気を食らって辛いんだ。冷え性の僕には氷属性は天敵かも知れないや。

 

 それはそうとして一瞬だけネーシャの呼吸が変わり、直ぐに戻る。つまりは向こうから来た相手に意識を向けたって事だ。成る程成る程、仮にも第一王子の取り巻きの無礼っていう王国に対する交渉材料を手放そうって理由が分からなかったけれど、目の前の相手がやって来るのを見越していたんだ。

 

 

「あらあら、先程から妙な騒ぎが起きていると思ったら……随分な真似よねぇ。聞いていて耳が腐るかと思ったわよ」

 

 言葉の内容とは裏腹に声色は物静かで鼻歌さえ混じりそうな雰囲気。くびれた腰に手を当て、優雅な足取りはファッションショーの一場面みたいだった。さっきから止めもせず周囲で事の成り行きを見守っていた連中は恐れをなして逃げ出し、僕に絡んで来た二人もその姿を見て恐怖で固まった。

 

 その視線が向いているのは大きく開いた胸元から覗く右胸のタトゥー。頭蓋骨を囲むようにして己の尻尾を咥えた緑色の蛇。ある理由から国内外に名の知れた一族の家紋。

 

「ル、ルルネード家……」

 

 先程までの威勢の良さは消え去り、その目には恐怖が色濃く浮かぶ。

 

「……うん」

 

 僕の背後に居たネーシャも噂には聞いていても実際に見るのは初めてだったんだろう。僕の袖を摘まんで声を漏らしてしまっている。気持ちは分かる。あのインパクトある見た目は珍しいからね。

 

 スラッとした長身のモデル体系ながら細く見える腕には確かな筋肉の存在。少し濃いめのアイシャドーにプックリとした下唇に塗られた桜色の口紅などの化粧の出来映えは完璧で、長時間を費やした大人っぽい仕上がりだ。

 

「この場は私が仕切らせて貰うわねん。だってその為に夏休みを返上したんだもの」

 

 フワッとした柔らかそうな宍色の髪をモヒカンにして、アクセサリーをジャラジャラ付けた彼は僕達の間に割り込むように立ち、優しそうな声で告げるとウインクを向けて来た。

 

 うわぁ……。あっ、流石に失礼な反応か。

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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