ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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ムッツリ

 ぬぁあああああああああああっ!? 僕は何をやってるんだぁあああああっ!?

 

 パニック状態になっていた事もあって口走ってしまった言葉に僕は混乱の極地に陥った。よりにもよって親友に対して”君をエロ妄想の相手役にしてました。近くに居る時に”だなんて。ロノスだってどう反応すれば良いか分からないだろうし、僕だって同じだ!

 

 これじゃあ誘っているみたいだと思ってしまった瞬間には頭が沸騰してしまう。ど、どうする、僕!? この状況で僕が口にすべき言葉はなんだ!?

 

 

 パターン① ”特訓に付き合ってくれ。ほら、戦場で女が捕まった時に考えられる状況があるだろう? 耐える為に慣れたいんだ”

 

 

 本当に誘ってどうする!? それで了承されでも……したら。

 

 頭に浮かんだのは裸で縛られた状態で体を弄ばれる僕の姿。彼の指先が敏感な部分を這い、欲望の捌け口にされる。何時しか僕は快楽の虜になって自ら彼を求めるように。そして、今後も訓練という口実を作って彼に身を任せ、そのまま僕は……。

 

 

 ……落ち着けっ!

 

 コホンッ! 本当に落ち着け、僕。これ以上余計な事を言うな。僕にとってロノスは親友、掛け替えのない存在だ。今の関係は確かに何時までも続けられる物ではない。男女の友情を僕は信じているが、結婚している訳でもない男女が何時までも仲良くしていれば世間は邪推するものだ。どれだけ潔白を主張しても余計な噂は立つし、僕達の立場からして迷惑の掛かる人達は多い。

 

 だから余計な噂の種になりかねない事は口にするな。ロノス以外に聞かれた時、足を引っ張りたい連中が喜ぶだけなのだから。

 

 パターン② ”よし! 君も僕を使って良いぞ。それでおあいこだ!” ……いや、何がだ。

 

 強引に下ネタで笑いに変えるのは確かに一つの手段だが、それって滑った時の空気が最悪って物じゃないだろう、僕っ!? それで”じゃあ早速使わせて貰うよ”とか返すタイプじゃないしな、相手は。

 

 ……くっ! 勢いに任せてしまうのは駄目だ、アンリ。今後の関係を考えた場合、現状維持が最適じゃないか。

 

「僕はアホかっ!? 本当にアホだなっ!」

 

 思わず叫んでしまうが、だってアホなんだから仕方無い。そもそも親友を妄想に使うのまでは良いとして、それの延長をしようって時点で狂っている。色狂い! 僕の色狂いめ! あれか? 此処まで来たら強引に突き進むのか!? 僕の方が格闘戦の実力が上だし、ベッドに連れ込んで寝技の特訓かっ!?

 

 

「本能でお乳突けっ! じゃなくて本当に落ち着けっ!」

 

「いや、本当に落ち着きなよ。ほら、深呼吸」

 

「すーはーすーはー! よし!」

 

 促されるままに深呼吸し、僕は何とか冷静さを取り戻す。ふふん。こうなれば煩悩は無縁だ。流石は僕だな。さて、こうなれば……。

 

 

 パターン③ ”今のは忘れろ。只の言い間違えだ!”

 

 多少力業だが、多分最善だしこれで行こうか。暫くは気まずい空気が漂うだろうが下手な事を口走るよりはマシだろう。

 

 ……ふむ。まあ、僕も年頃だし、女だって性欲が漲る事だってある。その時に相手役として考えた場合、僕を女として認識している相手じゃないと相手はホモだって事になるし、だからロノスしかあり得ないのは当然の帰結なのはロノスなら理解してくれる筈!

 

 ……親友との関係の危機を救うのは親友への信頼、か。ふふん。持つべき物は友だな。誇らしさに心が温かくなるのを感じ、ちょっと気が付いた。僕、さっきから黙ったり叫んだりで奇行が目立たないか?

 

 

 どうやら熟考が過ぎたらしく最初の失言から結構な時間が過ぎて追加まで散々してしまっている。これじゃあ誤魔化すにも誤魔化せないし、無かった事にするには……。

 

 

 

「それでリアスはウツボダコが大好物でさ。僕とポチは一口で気絶したのに気に入ってしまって、でも、あんな味でしょう? 料理人が誇りに反するからって絶対に作らないんだ」

 

 スルーしてくれた! 有り難う親友! そして大好物って正気か、親友の妹!? ……聖女って本当に特別な存在なのか、味覚とか特に。

 

 「無礼を承知で尋ねるが、君の妹は舌に呪いでも掛かっているのか? ……いや、言いにくいなら言わずに済まそう。大変だな……」

 

 あの拷問を好物と語る等有り得て良い筈が無い。だから呪いの類だと断言するが、ならば誰が何の目的で聖女を呪った? 呪いの内容もそうだが、これは複数の国に影響を及ぼす大事件の気配がする。迂闊に行動すべきではないと悟った僕はそれ以上の問い掛けを取り止めるが警戒は緩めない。何者かの魔の手が愛する祖国に伸びる事が恐ろしかったからだ。

 

 意味不明な内容の呪いに目的の識別は困難で、同時にクヴァイル家でもどうにもなっていない規模の呪いを扱うなど常人の域を遙かに越えている。

 

 

「いや、呪いとかじゃなくて、あの子は本気でウツボダコを美味しいって言っているんだ。だから美味しい物を皆で食べるって状況を楽しみにしてて、そんな姿を見ていたら”この世の物とは思えない味だから食べたくない”とか言えないし……どうしよう?」

 

「……済まない。僕に出来る事は無いな」

 

 うん、そうか。本当に美味しいと思っているのか。驚きしかないが、これ以上は巻き込まれたくないから話題を変えよう。”アンリも食べにおいでよ”とか言われたら絶交も辞さない可能性がある。

 

「あっ、釣れた」

 

 今度はウツボダコじゃなくて少々小ぶりだけれど、モンスターですらない普通の魚。ホッと一安心、話題を変える切っ掛けになるな。

 

「そう言えば誰も彼も水着を着ていたな。臨海学校だから仕方無いが、チラリとみた見ただけでも女子生徒の尻や胸をジロジロ見る不埒者が多かった」

 

「水着って露出度が高いからね。普段は制服で隠れている部分が見えているから気になるんだよ。まあ、好みによっては露出度が低い水着を好む奴も居るけれどさ」

 

「好みか。……選べるのは羨ましいな」

 

 僕が持って来たのは全身が隠れるタイプの可愛さの欠片も見当たらないタイプ。今は蒸れにくいシャツとハーフパンツだが、後で浅い所を軽く泳いで金鎚疑惑を払拭するだけだ。

 

「まあ、君に可愛いのを見て貰えたから良しとしようか」

 

 海でなく風呂場で、遊びではなく泳ぎの練習だったが心許せる相手に見せられたのだから文句を言っては贅沢だと自らを戒める。少々大胆な行動の気もしたが親友相手だから構わないだろうさ。……今夜辺り背中でも流してやろうか。実は可愛い方の水着も幾つか種類を持って来てはいるし、夜の海で泳いで万が一目撃されては困ると思って死蔵になる所だったが風呂場でなら……。

 

 我ながら大胆だが、それ程までに僕はロノスを親友だと思っている。多少は気になるだろうが、変な事にはならないという信頼だ。

 

「ああ、好みと言えばロノスは女の水着姿はどんなのが好みなのだ? 今度それに……じゃなく、話題になったからな。猥談をしよう、猥談を」

 

「アンリって結構ムッツリだよね。前から気が付いていたけれど、冷静さを失えば簡単にそっちに話が流れるんだから。……敢えて言うなら露出度の高い水着の上に薄いシャツを着て、濡れて張り付いたシャツが透けてるって奴」

 

「君も結構な方だな。じゃあ、次は僕だが……女の口から言わせる事じゃないし黙秘させて貰うよ」

 

「わあ、ズルい!?」

 

「駆け引き上手なだけさ。それに……タマ」

 

「ピッ!」 

 

 遠くから此方に向かって来る馬車の様な乗り物。ドラゴンであるタマの視力なら乗っている相手の姿をハッキリと捉えられ、それが誰か教えてくれた。

 

「ほら、君の客だ。迂闊に話を聞かれては厄介なのが近付いて来ているよ。僕はログハウスに戻るけれど、君は相手をしてあげるんだな」

 

 口実には十分だとログハウスに足早に入ろうとするが、ふと思い直してドアを開けた所で止まる。……うん、親友として良くない行為だった。

 

 

 

 

 

 

「……実はちょっとだけ緊縛に興味がある」

 

 僕だけ性癖を暴露しないのもアレだしな。まあ、今晩は労ってやるか。……背中を流す時に言っていた格好をするとか? いや、流石に友情の範疇を越えている気も。

 

 

 ……状況次第だな。臨機応変に決めよう。

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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