ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
「……困ったわね」
愛用のハルバートを肩に担ぎ、浅く溜め息を吐く。
”聖女”で居る時は溜め息をしたら注意されるんだけれど、堅苦しいあの時が正直言って一番溜め息を吐きたくなるのよね。
この前だって他の奴が居ないからって控えてた部屋で欠伸しながら脇腹掻いていたら同行してたメイド長に叱られちゃったし。
「姫様。聖女らしくするのは仕事以外結構ですので、せめて仕事として出掛けている時に年頃の女性らしくないのは胸だけになさって下さい」
……今思えば最後に言われた言葉ってどんな意味かしら?
気が付いて怒った方が良いような、このまま気が付かない方が良いような。
あっ、でも過ぎた事を蒸し返してウダウダ言うのもアレよね~。
あーあ、お兄ちゃんだって色々頑張っているし、クヴァイル家の令嬢だからって贅沢とかさせて貰ってお兄ちゃん以外の大切な人達にも出会えたんだから、働くのは嫌なんて仁義が通らない事を言い出すのは女の子らしくないわよね。
でも、聖女らしくってのが面倒なのが問題って言うか、気心の知れている連中は聖女時の私を見て笑いを堪えるかゾッとしてるし、私だって寒気がするわよ。
なーにが”神は我々を常に見守って下さっています。今は辛くとも希望を捨ててはなりません”よ。
私は神様に祈るよりも腕っ節を鍛えた方が良いと思う……って、現実逃避は此処までにしておかないと。
ついつい思考が横道に逸れるのを首を数度横に振って軌道修正、今の深刻な悩みに切り替える。
私が何を悩んでいるか、それは今のハンティングに関係していたわ。
一人だから厳しい?
いいえ、私ならこんな所に住んでるモンスターなんてワンパンで仕留められるわよ。
それこそ貴族令嬢らしく余裕を持って優雅に正拳突きを叩き込んだり手刀で貫通してやるわ。
索敵だって全速力で駆け回れば見つかるでしょう、普通に考えて。
障害物は薙ぎ倒し、穴があったら飛び越えて、お嬢様に相応しく無いウロウロ迷い続ける無様な姿は見せないっての。
……こう考えると私って普通に貴族のお嬢様よね、実際にお嬢様だけれども。
ゲームの私みたいに陰湿で傲慢な意地悪とかしないし。
周りから色々言われる私だけれど、いざって時はちゃんとお嬢様らしく優雅で余裕綽々と振る舞えている事を認識した私は満足していた。
まあ、問題は解決していないけれども。
じゃあ、問題はモンスター以外かって?
そう、モンスター以外。
……言っておくけれどトイレじゃないわよ?
そんなの先に済ませたし、イザッて時は木陰ですれば良いんだからお嬢様が漏らして下着を濡らすもんですかってのよ。
「先程から溜め息を吐き、黙っているばかりで向かって来る様子もない。諦めたか?」
「何せこの数よ。授業やら活躍がお膳立てされた任務で力を見せいうとも我ら本職には敵うまい」
「ふふふ、クヴァイル家には煮え湯を飲まされているからな。存分にいたぶり、涙と鼻水で顔面を汚し、糞尿を垂れ流した状態の死体を晒してやる」
今、私は如何にも暗部って感じの格好で獲物を前にペラペラ喋っている連中に囲まれているわ。
覆面に全身が隠れる衣装っていう不審者丸出しの典型的なアサシンって感じの連中。
話からしてクヴァイル家に色々邪魔されて、それでも残ってるって言うか残されている連中って所ね。
「おいおい、僕も混ぜろよ? 聖女ってチヤホヤされてる女を殴りながら犯したいんだ」
その理由は不審者を率いてる男子生徒。
私でもお兄ちゃんの話を聞いて、こんな連中が生かされてる理由はギリギリ分かっている。
こんな風に襲って来る程度の知能を持っていると判断されたから、ですって。
因みに悪い意味で。
如何にもゲスって顔で私をなめ回すように眺め……おい、今胸を見て鼻で笑ったでしょう?
「馬鹿力だから毒でジワジワ弱らせて手足を折ってから犯すぞ。最初は僕がやる。準備も無しに貫通式だ」
あー、腹立つわー。
多分領地で好き勝手やってる感じだろうし、前王妃の腰巾着として甘い汁が忘れられないって奴でしょうね。
マザコン王子も嫌いだけれど、私的には此奴の方が嫌いね。
……パートナーの生徒はどうしたのかしら?
弓やら投げナイフを構える部下を眺め、撲殺確定ゲス男の方を見るけれど返り血とかは浴びていないし、縛られて放置……もモンスターに襲われたら危ないけれど、殺されているよりはそっちの方が良いし、今後のことを考えれば置いてけぼりか眠らされているって所かしら?
「行け! 魔法を使わせる暇を与えるな!」
ゲス男が叫べば部下達が一斉に襲い掛かって来る。
毒を塗っていそうなナイフや矢が私に殺到、ゲス男はこれからの事を考えてか嗤っている。
「……ふぅ」
魔法を使わせるな? いやいや……この程度なら使えるし、使う必要無いけれど?
向かって来た矢を掴み、それを振るって次の矢やナイフを払い除ける。
折れたら次の矢やナイフに持ち替え、攻撃が途切れるよりも前に矢を投げた。
「ぎゃあ!?」
矢は見事にゲス男の股間に命中、二度と使い物にならないわね、ザマーミロ。
ズボンを真っ赤に染め青い顔で泡を吹いて気絶するゲス男に部下達の意識が私から移る。
そんなんだから即全滅って選択肢じゃなく、こうやって堂々と大元から叩き潰す理由欲しさに見逃されるのよ。
「取り敢えず他の連中の玉も射抜いて……いえ、蹴り潰すわ。だから少しだけ立った姿勢で固定宜しくね、アラスト」
無様に動揺する三流アサシンを放置して声を掛ければ了解の言葉の代わりに地面から伸びた鎖がゲス男と部下達全員を拘束し、鎖を出した男が木陰から体をクネらせながら出て来た。
「驚いたかしらん? 貴族同士が集まるのだし、ちゃーんと政争から来る闇討ち対策はしてるのよん。例えばぁ、私みたいにねん。コソコソしている積もりでも、森に入った段階で先生が感知してたわよん」
「き、貴様は拷もっ?」
”拷問貴族”、部下の一人がアラストの家の異名を口に出そうとした瞬間、鎖が有刺鉄線みたいにトゲトゲになった上に真っ赤になった。
「口の中に含み針や自害用の毒薬は無し、と。まあ、主犯は姫様が倒しているし、さっさと連行するわね。じゃあ、他にも見回りが有るから全員の玉を蹴り潰して貰える?」
「はいはい、分かっているわ。”アドヴェント”!」
「……強化まで使う? 容赦無いわねん。必要無いけれど、同じく玉二つぶら下げたオカマとして同情するわん」
「だって早く済ませた方が良いんでしょう?」
アラストだって忙しいみたいだから急いで蹴らないと。
強化した肉体で骨を全部砕かない程度の力を出しながら股間を蹴り上げて行く。
あら、怖がってるわね。
……でも、相手をいたぶって遊ぶのに慣れていたみたいだし、良いじゃない。
「ぎゃあっ!」
「か、勘べっ!?」
「勘弁しなーい。はい、次ー! あっ、そうそう。アラスト、此奴のパートナーになっちゃった生徒は?」
「勧誘を断って逃げ出していたから、追っ手の一人を始末して助けたんだけれど、目の前で心臓を貫かれた人間を見ちゃったもんだから気絶しちゃったのよん。安全な場所まで運んでいたから遅くなっちゃったけれど、ゼース様には内密で頼むわね」
「了解。じゃあ、此奴で最後!」
ウインクしてくるアラストに返事をしながら足を振り上げるけれど、ちょっと気合いが入っちゃったわね。
グチャって音だけじゃなく骨が砕ける音までしちゃったじゃないの。
……死なない程度に回復しておきましょ。
流石に人を殺せばお兄ちゃんが悲しむものね。
「じゃあ、パートナーの証言もあるし、遣り取りは映像記憶のマジックアイテムで撮影して証拠も集まってるし全員連れて行くわ。……楽しみねえ。裏に居るかどうか不明確な組織の情報を聞き出そうとするのが」
森の中を腰をクネらせながらアラストが進み、ゲス男と部下一同を縛った鎖が片手で引っ張られてジャラジャラ音を立てて行く。
これで問題は解決……していない。
「鼻くそのデカいのが有るのにちり紙忘れちゃって困ってるってのに貰い忘れてたわ。ほじるのはちょっと抵抗が有るし。……あら?」
向こうの方から光が漂って来て私の腕輪に吸い込まれたけれど、モンスターは倒していないわよね?
それにアラストが向かった方角じゃないの、あっちは。
「……何故かしら? 終わったらお兄ちゃんに教えて貰わないと」
お兄ちゃんなら絶対に答えてくれるわよね。
だってお兄ちゃんだし!
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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