ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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口にする時、腹パン確実

 日本で育った前世の僕も記憶を蘇らせる迄のロノス・クヴァイルも八歳には変わらないけれど、育った環境が違うせいで片方から見れば異、様だと思える事が沢山あった。

 身分や一般常識、戦い……そして殺人行為、ある人から見れば異常だの狂気だの思える内容だとしても、それが当然な人から見れば異常だと叫ぶ人の周囲こそ異常だと感じるだろう。

 

 同じ環境で育った血縁者でも物の考え方に違いが出て、どんな環境でも変わらない人も居れば、環境次第で聖人だったり悪人だったり様々だ。

 結局の所、常識も善悪も……狂気か正気かさえも個人や状況、環境によって大きく変わるって事で……。

 

 

 

「女神テュラのご意志を全うする為にも貴様等には死して戦争の火種になって貰う!」

 

「生き残って良いのは我々選ばれし者達のみだ!」

 

 故に森から出て来た僕とアンリを待ちかまえていた言動からして如何にも”カルト教団の狂信者”って感じの連中も、彼等からすれば正常であり、崇高な使命を果たそうって事なんだろうさ。

 テュラが司る闇の象徴である黒い服に身を包み、胸には大きくテュラ信仰のシンボルになっていた紋様が銀色に輝いている。

 

「この連中、最近活発になっているって噂の……。ネペンテス商会というのがバックになっているらしいな」

 

「ああ、神の奇跡みたいな力で願いを叶え、テュラ信仰の教えを説いてるって聞いたよ。少し前までは怪しい商会程度だったのに、急に活発になるんだからさ」

 

 前々から怪しいからと色々と目を付けている貴族が多い中、目が届きにくい僻地を中心に動いていたし、一見すれば薄利での人助けみたいだから規制を強めるのも難しかったけれど、まさかカルト教団を結成していたなんて。

 

「まさかクヴァイル家の情報網からさえ逃れるなんてね。……本拠地にどうやって出入りしているんだか」

 

 目を付けた連中を見張る際、重要な情報となるのが人の出入りであり、其処から活動拠点やら動きを特定するんだけれど、神獣将であるシアバーンだけなら警戒に動けても目の前の連中みたいな駒を使うなら粗が出るし、手繰る糸になる。

 

「テュラ教……人の全滅を目論んだ女神を信仰してるだなんて正気とは思えないな。それに僕達相手に勝機があると思っているのか?」

 

「はっはっは! 我々が神より授かった下僕が見えないのか! この精強なるモンスターの姿が!」

 

 アンリ、今のって正気と勝機を掛けたネタ……な訳が無いか。

 天然だけれど堅物な友人が怪我人背負った状況で敵を前に冗談を口にする筈もないし、指摘したら恥ずかしいだろうから止めておこう。

 

「……あっ。僕、今……」

 

「アンリ、何に気が付いたのか分からないけれど、今は集中して」

 

 あーあ、気が付いちゃったか。

 口元に手を当てて耳まで真っ赤になった彼女の気をテュラ教徒に向けさせつつ気が付いていない振りを続ける。\

 

「……しかしテュラ教徒ね。こんな連中を使うのに本当の主の名前は使いたくないってのか。立派な忠義だよ。それなら気が変わったのに合わせれば良いのにさ」

 

 テュラ教徒達が引き連れているのはヘビガエルやウッドゾンビ、その他見た目がおどろおどろしい不気味なのばっかりだし、確かに如何にも闇の女神の下僕って感じだ。

 

 実際の所、ネペンテス商会を率いるシアバーンは光の女神が己の悪心と一緒に封印した存在であって、同じく人間を皆殺しにしようとしたのには変わりないんだけれどさ。

 

「ねぇ、アンリ。物語とかでも具体的に従える方法もないのに野望の為に封印された怪物を復活させようとする悪人って出て来るけれど、相手が封印を解いたからと義理人情を発揮するの前提って有る意味笑えるよね」

 

「自分は人道を省みないのに怪物には人道を求めるって所がか? 僕には滑稽を通り過ぎて薄ら寒い物に感じるな。実際にそんな思考に至る連中を目にしてる今、人間不信になりそうだ。……何かを信じる姿を見て不信感を覚えるのも変な話ではあるが」

 

「貴様っ! 我々の信仰を愚弄するかぁー! この目で奇跡を目にする機会を与えられ、神の下僕という名誉を与えられし我々を侮辱するのは許さん!」

 

 どうやら捨て駒にされるって遠回しに言ったのが伝わったらしく男の一人が怒り出した。

 他の連中はポカーンとしているし、気が付いていないのか。

 

「いや、当時だって信者が居た筈なのに皆殺しの対象外だったって記録は残っていないし、君達だって例外ではない筈さ。だから投降をお勧めするけれど、駄目みたいだね……」

 

「無駄だぞ、ロノス。僕はこんな連中を何度も相手しているから知っている。盲目的に信じ、それを否定する言葉なんて耳に入らないさ。……ほらな」

 

 アンリは深く溜め息を吐くと姿勢を低くして背負ったパートナーを静かに下ろす。

 その時の顔は伏せていたから見えなかったけれど、立ち上がって前を見た時に見えた彼女の顔は学生から敵を前にした軍人へと変わっていた。

 元から中性的だった顔は凛々しい表情を浮かべる事で男性寄り……本人に言ったら怒られるだろうけれど色男に見えた。

 

 あ~、これは人気が出る筈だ。

 既に学園の女生徒の中にはアンリのファンが結構居るらしいし、祖国でも本当の性別を知らない相手から告白されているとか。

 僕も頭や胸を打たない程度にルクスを適当に地面に転がした。

 

「か、掛かれっ!」

 

 元々が捨て駒である事に気が付けていなかった程度の連中、しかも僕達の事を知らない様な連中が本職の威圧に耐えられる訳が無くって及び腰になりながら従えたモンスターをけしかけて来た。

 

 リーダーらしい奴は何となく気が付きながらも目を逸らしているみたいだし、敢えてそんなのを選んで捨て駒にしたのなら性格が悪いって思うけれど、性格悪そうだからなあ、シアバーンって。

 

「ロノス、モンスターは僕に任せろ。人間は任せた」

 

 返事も待たずに前に踏み込み、先頭を駆ける無頼カンの首に命中、深々と突き刺さった刃に重要な血管を破られたのか動きを止め、直ぐ後ろを走っていたモンスターが追突しもつれて転ぶ。

 

「大した知能を持っているのは少しか」

 

 次々に転んでいく中、巻き込まれなかったのは極少数。

 転んだ所に背後から迫った仲間に踏みつけられて圧死、酷い有様だ。

 

 そして続けざまに投げられるナイフが次々に突き刺さり、仕込まれた爆弾が炸裂した。

 一度に爆殺する為なのか最初の方のは時限式でなく誘爆によって生き残りを吹き飛ばし、直撃は逃れたのも爆風で体勢を崩した所にナイフを投げられる。

 

 戦闘開始から一分足らず、神から与えられたという兵隊代わりのモンスターは全滅した。

 

 

「あ、あれだけの数……」

 

「”加速(アクセル)」。

 

「あぐっ!?」

 

 テュラ教徒達が唖然とする中、言葉を遮るかのように超高速で意識を刈り取って行く。

 こんな不測の事態に陥ったなら戦略的撤退か降伏、せめて悪足掻きの応戦を選ぶべきなのに此奴達はそのどれでもなく立ち尽くすだけ。

 

「それじゃあ駄目だね。見逃す程の働きが可能だとは思えないよ」

 

 最初にリーダーを気絶させた事で失った判断力が戻るのを防ぎ、余計な事をする前に最後の一人を倒す。

 ちょっと身体検査……自害用の毒薬や短剣は隠していないみたいだし、重要な情報とかは最初からしてないけれど余計に期待は出来ないな。

 

「……どうする? 最後の一人は気絶させていないらしいが……僕が聞き出すか? 尋問は得意分野だし、何なら拷問貴族殿に頼めば良いが、仲間が既に森に居るのなら時間が足りないな」

 

 アンリが懸念する通り、森にリザード・アサシン以外にもこんな連中が居るのなら面倒ってレベルで収まらない。

 

「そうだね。仕方無いし、僕が森を走り回って探すからアンリは其奴から聞き出していて。その後でタマに乗って空から教えてくれたら……いや、刺激するか」

 

 もう生徒全員集めて管理するしかないか。

 話をしていると時間の無駄だし……はあ。

 

 

 

 何と言うか……本当に面倒だ。

 

 

「あっ、リアスの所に現れたら厄介だぞ」

 

 本当に本当に面倒だよ……。

 

 何せあの子はテュラがお姉ちゃんだと本気で信じているし、その名前の下に悪事を働こうとか見逃せない筈……あっ。

 

「遅かったか……」

 

 少し離れた場所を見れば天高く打ち上げられて行くテュラ教徒らしい連中の姿を発見する。

 アレは絶対リアスの仕業だと確信出来たよ、僕はあの子のお兄ちゃんだもん。




絵も発注 マンガ制作は十二月から

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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