ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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あくまでも事故である

「……少し思ったのですが、私達の魔法を彼等に放ったとして……ではなく流れ弾が向かって当ててしまったとして、私達の魔法だと気絶する直前に見られてしまいません?」

 

「あっ! でも、大丈夫です。確かロノスさんと組んでいる方も……いえ、ロノスさんを巻き添えにしてしまうのは心苦しいですよね。ネーシャさんなら問題になっても家が家ですから姿を見られても……」

 

「あら、姿が見える位置ですと巻き添えにしてしまった時にどうして見えている相手に注意しなかったのか問い質されそうですわね……」

 

 ポイントを効率良く稼ぐ為に生徒を狙う事に決めた私達だが、此処で少々問題が発覚した。

 闇と氷、特異的な力は印象に残るだろうし、押し付けられる相手はロノスさんに迷惑が掛かる相手のみ。

 

 あくまでも私達は腹黒い事とは無関係であると、既に互いの事を把握していても素知らぬ振りで会話を続ける。

 その間にも眼鏡の彼は随分と恰幅の良い女子生徒にキスを迫られて居るけれど、これを切っ掛けに仲良くなってくれれば私に付きまとう時間が減るだろう。

 

 ……彼女は随分と自信があるみたいだし、このまま放置すれば彼が私にしたみたいに付きまとうだろうから丸投げすれば……丸投げ?

 

 

 

「ネーシャさん、偶にはその辺の物を魔法で投げてみるのも良いかもしれませんね。モンスターをモンスターにぶつけるとか」

 

「あら、それは中々の案ですわね。早速練習致しましょうか。ぶっつけ本番は宜しくありませんもの」

 

 話が早くて助かるし、似た相手というのはそれなりに良い物なのかも知れない。

 だが、矢張り何故かこの女が対象となった途端に不快感が姿を見せる。

 

 母を失ってから仮面を被って心を殺して生きてきた今までの人生で此処まで敵意を向けてしまう相手は初めてで、実はと言うと少し困惑する程。

 

 一体何故なのかと自問自答すれば一つだけ浮かぶ。

 それは”嫉妬”だ。

 

 思えばロノスさんと親しい女は私よりも先に出会い、私と過ごした時間の何倍もの付き合いだったので仕方が無いと思えたのだろうが、この女は突然現れて彼の隣に立とうとしている。

 

 成る程、私にも誰かに嫉妬する心が残っていたのか。

 

 ……さて、その気に入らない相手と意見が一致し、今から実行に移す所なのだが、チラリと横顔を見ながら考える。

 最初、裏ルールで許可されている事と養子ではあるものの皇女である事を背景にして実行に移すと思たのだが……。

 

「……慎重なのか、それとも実は力がそれ程でも無いのか……」

 

「あら? どうかなさって?」

 

「いえ、独り言ですから気にしないで下さい」

 

 つい口に出してしまったが、牽制になりそうなので良しとしよう。

 表情には出さなかったので探りを入れた事としては失敗ではあるが、此方が一歩踏み込んだと思わせる事が出来たのなら。

 

「砲台……準備完了」

 

「”シャドーハンド”」

 

 アイスチャリオットに大砲を設置した屋根が出来上がり、私も同時に影の巨腕を創り出す。

 拘束魔法のシャドーバインドは複数の腕が鋭い爪を突き刺して対象を拘束するけれど、この魔法は複数の腕を一本に纏めて質を高めた物。

 

 氷の砲口に石が詰められ、影の腕が近くの当たっても死にそうにはない程度の細い木を地面から引っこ抜いて振りかぶる。

 

 向こうから姿が見えはしないが随分と騒いでいるし大体の位置は分かるので外しはしないだろう。

 数秒間、相手だけがやらかした事にならないかと互いに待つが考える事が同じな為か時間の無駄になりそうだ。

 

「モンスターが居ますわね」

 

「ええ、何やら怪しい物音と気配がします」

 

この女も中々の役者だ。

私同様に本気で気が付いていないという8演技をしているし、この部分だけ聞けば騙されていただろう。

 

 全部知っていながら続ける演技など我ながら白々しいと思うがお互い様だろうし、見えない場所という事もあって相手が生徒だと判断不能なので事故が起きても仕方が無い。

 相手が此方に近寄るなど攻撃を止めるべき材料を手に入れてしまう前に終わらせよう。

 

 だってこれはあくまでも事故、故意に生徒を狙った訳ではないのだから。

 

 

「おや、相手はモンスターでなかったのですわね」

 

「ど、どうしましょう!? 取り敢えず安全な場所まで運ばないと……」

 

 此方の攻撃は見事命中、期待外れだとしか言い表せない量の光が私達の腕輪に吸い込まれるが、私の方が光の大きさが圧倒的に少ない。

 私が投げた木は女の方に当たったらしいが、媚びを売る事に熱中していてポイントを殆ど稼いでいなかったらしい。

 

 ……役立たずだな。

 

 

「……所で此処は内密の相談なのですが偶然(・・)自分の属性だとは分からない方法で倒してしまいましたし……」

 

「私達はあくまでも気絶したのを発見しただけ、ですよね?」

 

 最初から決めていた事を本音を隠して確認しあう。

 此処で売った音を理由に眼鏡の方が付きまとって来そうではあるし、デブと二人っきりの状況にして先程の続きをしていて貰いたい物だが、ネーシャがそれを許さないだろうか?

 

 この二人、レンズの形と体型がそっくりでお似合いだし私は応援するので此方には関わらないでくれたら嬉しい。

 

 アイスチャリオットの後ろに鎖で繋がった車輪付きの台車が現れ、私はシャドーハンドを使って適当に乗せるのだが、デブを上にして眼鏡の背中に乗せたら何故か眼鏡の眼鏡が割れてしまう。

 

 ……何故?

 まあ、ストーカー眼鏡の眼鏡がどうして割れても別に構わないか、他人の眼鏡だし。

 

 こうして私達は少しだけポイントを稼ぐのに成功したものの余計な荷物を運ぶ手間まで手に入れてしまう。

 タイムロスを犯してまで人助けをしたという事実……実際は違うのだが、それを手に入れるのは今後の為に良いとはいえ、出来るならば放置しておきたいという葛藤もあるのが事実だ。

 

 

 

 

「おっと、漸く追い付いたぜ。ったく、森の中をドンドン進みやがって」

 

 木の枝をかき分けながら現れた見知らぬ男は少し不機嫌そうに私達を見ながらそんな事を言ってくる。

 どう見ても部外者な上に、着ているのは黒いローブ、それも私に関係する事もあって知っている物。

 

「テュラ信仰の紋様……」

 

 そう、私が疎まれながら生きる理由になった女神を信仰する者達の証であり、大昔に滅びた筈の物だ。

 なにせ闇の女神は人を滅ぼそうとし、それを防いだのが光の魔法を操る聖女、つまりクヴァイル家の祖先だ。

 破滅願望でも持たない限り身に付けず、危険思想の証とされるその紋様を堂々と見せている男の手には両刃の片手剣。

 構えからして素人ではなく、少なくても一般的な強さの生徒ではとても太刀打ち出来ない相手だ。

 

「……」

 

 少なくても味方でない事は確かであり、そんな相手を前に誰なのかを尋ねるような無駄な事は私もネーシャもしない。

 ああ、無駄に喚いたり刺激しないだけ他の生徒よりも彼女がパートナーで助かったのかも。

 

 その点だけ、ではあるけれど。

 

「その黒髪、嬢ちゃんがアリア・ルメス、我らが神が欲する贄か。もう片方には死んで貰うとして、痛い思いをしたくなけりゃ……」

 

 相手は間違いなく強く、私は痛い思いをしたくない。

 なので騒ぐ事もせず……無詠唱で魔法を放った。

 

 選んだ魔法はシャドーランス。

 幸い今は夜の森の中、私の影は周囲に紛れ、男が反応する間も与えずに手足の付け根を貫いた。

 肉と骨を穿って反対側から飛び出した先端は引き抜かれないように枝分かれして返しとなり、同時に体内で枝分かれした先が次々に飛び出しながら手足の先へと伸び、手の平と足の甲から飛び出して漸く止まった。

 

「あ、あがっ……」

 

 ああ、助かった。

 だって痛い思いをしたのは気を失っている目の前の男だけなのだから。

 

 

 

「エッグイ真似をしますわね……」

 

「え? だってネーシャさんを殺す気でしたし、何もさせない事が大切と思いまして……」

 

 さて、重要なのは此処から。

 あの自信が過信ではなく私達に勝てると確信させるに至った理由、それが姿を見せたのだから。

 

 

 

 

 

「シャァアアアアア」

 

 あの決闘という名の蹂躙の後に現れたモンスター、それに似たモンスターが男の腹を尻尾で貫いていた。

 

 

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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