ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
今は使っていない客人用の部屋に忍び込み、軽食と飲み物を持ち寄ってトランプで遊ぶ。
夜中にするちょっと悪い事で、メイド長に見付かったら大目玉を食らうというスリルも楽しみの一つだ。
でも、夜中にこっそり集まったのはとある目的の為、それを誤魔化す為のフェイクとして少し悪い事をしているんだ。
「じゃあ、今から定例会議を始めよう。議題は勿論”ラスボスになるのを避ける事”だよ」
「いえーい!」
深夜、この時間帯になっても夜勤の使用人が働いている中、まるで時間が停まったかの様に周囲は静まり返り、リアスの元気な声は凄く響く。
この子、前世ではこんな感じじゃなかったのに、矢っ張りリアスとしての素の部分だったり、道具にしやすくする為の甘やかしのせいなのかな?
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「いや、相変わらず前世でも今も可愛い妹だって思ってね」
ああ、それでも良い子なのは変わりないし、前世の教育で”何が悪い事なのか”の基礎は身に付けて居るから良いんだけれど、僕も同様に身内への甘さからの暴走が怖いよね。
それで敵を作っているし、貴族らしからぬ行動を無自覚にしている時がある。
……漫画で読んだ”歴史の修正力”が働いているのかも。
「……って僕は思うんだけれどリアスはどう思う?」
「お兄ちゃんなら大丈夫だわ! 私もお兄ちゃんの言う事をちゃんと聞くし」
「リアスは良い子だね。でも、僕が間違ったと思ったら止めてね?」
「勿論よ。股ぐら蹴り上げてでも止めてあげるんだから!」
……うわぁ、相変わらず力強くて頼りになるなあ。
凄く張り切ってシャドーボクシングまで始めるリアスに頼もしさを感じる反面、もう少し穏便な方法を取って欲しいとも思えてくる。
でも、ゲームでは”貴方は私の側で私に従っていなさい”って僕に言っていたからね、リアスは。
実際は警戒せずに甘えられる相手だからって信頼してる結果からだけれどもさ。
「でも楽観視は出来ないかも知れないよ? ゲームではリアスがアリアさんに絡んで、攻略キャラが助太刀したけれど、実際は攻略キャラが絡んでリアスが助けたからね」
「結局は似た流れになるって事? じゃあ、利用されるのは私達じゃなくて他の連中かもって事? ……うわぁ、面倒」
”利用される”、それがゲームでの僕達兄妹と、最も警戒している相手である隠しボスとの関係だ。
代理人を使った決闘に負けたリアスに接触し、自らの目的である”人類殲滅”の為に暗躍していた黒幕。
名を”テュラ”。
人間を滅ぼそうとした二人の神の片方であり、途中で思い直した片方によって騙し討ちの末に封印された闇の神。ゲームでは最高火力を誇った闇属性魔法を一切無効化する強敵だ。
恐らくだけれどゲーム同様にこの世界にも存在するだろうし、その前提で動いた方が良いだろう。
「僕達は騙されない自信が有るけれど、ゲームではその描写がなかった洗脳をして来たり、他の誰かを騙すかも知れない。……絶対に気を抜いて軽率な行動を取らないようにね。まあ、僕もやらかしちゃったけれど」
「うん、流石に会ったばかりの相手が居る前でのポチへの態度はどうかと思うわ」
「……今後は注意するよ。じゃあ、今後は原作のイベントが起きているか、起きていても原作と違う所は有るか、それに注意しよう。流石にキャラの領地を舞台にした個別のイベントまでは介入出来ないだろうけれど。……僕達は」
「ええ、私達はね」
ゲームでは長期休暇の時に好感度が一定以上なら領地に案内されるんだけど、色々と問題が起きる。
その領地に何かある程度なら不干渉で良いけれど、どの領地に行っても必ず起きる上に世界の命運に関わりかねないイベントだって存在する。
「確か暗躍している連中が居たのよね? 殆ど覚えていないけれど」
「だって僕達はプレイを眺めていただけだしね。しかも六年前じゃね。でも、暗躍している奴が名乗っていたのが確か……”ネペンテス商会”だったかな? ……あれぇ?」
えっと、確か昨日聞いたばかりの名前だ。
レキアが管理を任された妖精郷の異変に現れた神の眷属らしき存在がその名前を名乗ったって彼女から聞いたじゃないか。
知識がうろ覚えな事の弊害が生まれた瞬間に僕は焦り、未だ気が付いていないリアスは呑気にポテトフライを食べている。
今直ぐレキアの所に……駄目だ、準備が整っていないし、ポチは夜行性じゃないから行く手段が無い。
それに下手に相手の事を知っていると悟られたら厄介だ。
「リアス、気を付けて。もしかしたら光魔法が通じない相手と戦うだろうからさ。……もうそろそろ僕も限界だ。時間の流れを切り離せない」
ドッと押し寄せる疲弊感と共に周囲の空間に歪みが生じ始める。
あと数分以内にでもこの部屋と部屋以外の時間の流れは等しくなるだろう。
「じゃあ、歯を磨いてお休みね。また明日ね、お兄ちゃん」
「二人以外の誰かが居る時はお兄様って呼ぶんだよ? じゃあ、お休み」
バレない内に食べ物と飲み物を手にして客間を飛び出して各々の部屋に慌てて駆け込む。
さて、決闘は明後日だし、それから間もなく開かれる舞踏会が僕達の運命の分岐点だ。
「原作の事はアリアさん達に任せて、僕達は平穏な生活を……」
いや、色々と手遅れな気もするけれど、もしもの時はクヴァイル家の所有戦力に任せれば良いや。
大体、たかが数人の若者だけに世界の命運が左右されるなんておかしいし、パーティーの人数制限なんて気にせずに囲んでボコれば……眠くなって来た。
「まあ、イベントは起こるにしても時期があるから暫くは大丈夫か。ゲーム通りに行けば力を見せたアリアさんを認めて周囲に人が集まるだろうし。……ん?」
確か発生時に好感度が一定以上じゃないと絶対に攻略不可になる上に情勢とか関係無いイベントが有った様な気が……。
「まあ、その辺は明日から調べさせれば良いや。何とでもなるから」
あのイベントはアリアさんの出生の秘密が明らかになる重要イベントでは有るんだけれど、母親の言いつけを破る程の心境の変化有ってこそだし、多分大丈夫……。
僕は色々と楽観視しながら眠りに付く。
部屋の外では夜のシフトの人達が手際良い働いていた。
”この首飾りは人に見せては駄目よ”、母は私にそんな事を言っていた。
どうやら名前も知らない父に迷惑が掛かるかららしいが、一度も会った事の無い父親に迷惑が掛かろうが知った事じゃない。
「似合いますか? ……似合うでしょうか? ……これで良いのだろうか?」
長い間被り続けた”アリア・ルメス”としての仮面を鏡の前で再確認する。
闇属性に生まれ、死んだと思っていた心だけれど唯一の味方だった母の願いの為の偽りの仮面。
……でも、あの兄妹は仮面を見抜いて、そして闇属性の私を受け入れてくれた。
「何時かこの仮面が本当の顔になったら良いな……」
未だ本当の顔を見せる勇気が湧かないけれど、何時かそうなる事を願い、今は少しお洒落をした所を見せたいと初めて母の言いつけを破った。
誉めて貰えるだろうか……?
「魔女だ」
「悪魔憑きだぞ……」
寮を出て学園に向かうと周囲から聞こえて来るのは聞き慣れた言葉。
昔は泣いて否定したけれど、今はどうとも感じない。
これも成長と言えるのだろうか?
「……おい。その首飾りをどうしてお前が持っている?」
そんな時、ルクス王子が驚いた顔をしながら私の前に立ちふさがって首飾りを指差す。
……面倒な事になる予感がした。
「これは母の形見の品で……きゃっ!?」
突然詰め寄って来る。
この瞳は闇属性への”嫌悪”ではなくて”憎悪”?
「……そうか。お前の母親が母上を追い詰めて殺したのか」
……はぁ?
何を馬鹿な事を言っているのだろうか?
だって表向きは事故死になっているけれど、先代の王妃の死因は正直言って自業自得な内容だと貴族の間では秘密裏に囁かれて居るんだから意味不明としか思えない。
「その首飾りは父上が母上以外の女の為に用意した物だ。あの人はそれを知ってから変わった。……お前の母親が母上を殺したんだ」
……本当に面倒だ。
胸ぐらを掴み上げられた私は怯えた演技をしながら呆れ果てていた。
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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レキア
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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レナ
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パンドラ
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サマエル
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シロノ
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アリア