ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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ネームド

 その姿を見た時、一番印象的だったのは濃い青色をした長髪で、次に印象的だったのは感情が読みとれない人形みたいな目、顔はフルフェイスの兜が邪魔で見れない。。

 私よりも髪艶が良さそうな髪を風に靡かせ、腰に差した剣を抜き払って私へと切り掛かるけれど、私の手には愛用のハルバートは邪魔だからと先生と一緒にアンリに預けていて存在していない、つまりは素手。

 

「死んで」

 

 綺麗なんだけれど敵意も殺意も感じさせない人形めいた無表情のまま、感情の籠もっていない大根役者みたいな棒読みの言葉で、其れでも剣筋は性格で速いからかなりの使い手ね。

 

「死ねと言われて死ぬ訳無いでしょ!」

 

「あっ……」

 

 そして私は”かなり”以上の強さだから白刃を易々と真剣白刃取りから、間を置かずにの蹴りを叩き込む。

 剣を素手で止められ唖然とした所に蹴りを食らったからか、青髮はあっさりと剣を手放し、即座に私は全力投球、今度は向こうが白刃取りで受け止めた。

 

「甘い」

 

「いや、アンタは蹴りも食らってるじゃない、しかも不意打ちで。どう考えても私の勝ちよ」

 

「負けてない」

 

 あっ、今少しだけムスッとして感情を見せたし、負けず嫌いかと思いつつも私は絶賛落下中、足場が無いから当然で、踏ん張りが効く足場さえあれば蹴りで私が速攻勝利だったのに。

 まあ、飛べば良いんだけれど、向こうは私と違って空中に立っていて、足下の空気が微妙に歪んで見えるから魔法でどうにかしているのかしら?

 

「もう……油断しない」

 

「本気でやっても私に勝てないわよ!」

 

 私に向かって空中を駆け出す青髮の胸が揺れ、私は少しムッとしながらも迎え撃つ。

 決めた、この女は飛ばないまま舐めプでぶっ倒す。

 

「”ツインセイバー”!」

 

 両手に出現させた光の剣で今度も相手の剣を受け止め、そのまま真下からすくい上げるようにして力任せに跳ね上げ、その途中で片方の剣を真横から叩けば手から剣が弾き飛ぶ。

 

「飛んだらもっと楽勝だったけれど、飛ばなくても楽勝ね、楽っ勝!」

 

「未だ終わってない」

 

「いーえ、終わりよ!」

 

 挑発を受けて眉間に皺を寄せるけれど、剣を取りに行こうとしたのか方向転換する前に私も両手の剣を捨て、正面から指を絡ませるようにして手を繋ぎ、そして何時も通り力業で引き寄せてからのヘッドバッド、惜しくも鼻血は出ていないけれど兜の表面はヒビだらけで怯んだし……もう一発!

 

 背中を反らし、もう一度引き寄せてヘッドバッドで今度こそ鼻血ブーにしてやろうとした時、轟音が下から迫り、見れば穴の底から凄い勢いでせり上がる地面、その上には額から血を流しながら私を睨んでる栗毛の姿。

 しまった、彼奴の事を忘れていたわ!

 

「さっさと引くわよ、ロザリー! 四人目になれる子は逃がせた!」

 

「やだ。ミントだけ帰って」

 

 栗毛はミントで、青髪はロザリーって名前だって分かった私はせり上がる地面を無視してもう一度ヘッドバッドを喰らわそうとするけれど、ロザリーの目が光ったかと思うと一筋の光が放たれたって思わず顔を逸らした瞬間に振り解かれたって言うか、目からビームだ、羨ましい!

 私、同じ事をしようとしたけれど上手い事魔法を作れないのよね。

 

「良いから帰るわよ! 言う事聞かないなら三日間デザート抜き!」

 

「……分かった」

 

 そのまま剣に向かって走り出したロザリーを制したのはミントの怒鳴り声で、どうも力関係が見て取れるって言うか、見覚えがあるって言うか、思いっきり私とチェルシーの関係に似ているわね、あの二人。

 ロザリーは少し不満そうってのが見え見えなんだけれど、キッと睨まれたら何も言えずにミントの隣に立って、そのままお姫様抱っこで持ち上げた。

 

「ぶふっ!」

 

 あっ、ヤバい、さっき見たチェルシーと俺様フラフープの姿思い出して笑いが込み上げて来た。

 こ、堪えきれない……。

 

「聞いた通りの化け物だったけれど変な奴ね……」

 

「化け物で馬鹿者?」

 

「誰が馬鹿よ、馬鹿が! 馬鹿って言う方が馬鹿なのよ、馬~鹿、馬~鹿、もう一丁馬~鹿!」

 

「いや、貴方が一番言ってるじゃない。……まあ、箇々で名乗ってお別れさせて貰うわよ」

 

「ロザリー・エリゴール、ネームドの一人」

 

「同じくネームドのミント・カロン。……”ハイ・フラッシュ”」

 

 向こうが名乗ってるし思わず意識を向けた時に放たれる眩しい閃光、多分森の全域を照らす位の強さで、私は咄嗟に目を閉じると同時にツインセイバーを無詠唱で発動、二人の気配に向かって全力投球……でも、目を開けたら血は飛び散っていたんだけれど二人の姿は見えないから掠っただけね。

 投げつけられたのかこっちに飛んで来て、狙いが雑だから真横を兜が通り過ぎる。

 ノーコンね、彼奴。

 

「……フェンリルにも逃げられたし、なんかムシャクシャして来たわね」

 

 せり上がった地面は穴を飛び出し遠目に見れば大地の塔って感じになっていて、私はその上で少しの間座っていたんだけれど、仕方が無いから飛び降りた。

 

「よし! モンスターでも適当に狩ってストレス解消しようっと!」

 

 苛立ち紛れに足下の小石を拾って全力投球、木を何本か貫通しながら飛んで行き、無頼カンの頭を砕いて漸く止まったんだけれど、飛び散った脳漿や血をアリアとネーシャが思いっきり浴びちゃった。

 

 し、知らない、私知らないったら知~らない!

 

 

 

 

「ガゥゥ……」

 

 今直ぐにでも噛み殺したい相手を口に咥えながらの逃亡に成功したフェンリルは足を止め、その場に崩れ落ちるように倒れたかと思うと荒い息をし始めた。

 リアスに負わされた傷は見た目よりも重篤であり、本来ならば全力疾走等以ての外、歩く事さえ激痛によってままならない筈の状態にも関わらず守り抜いた仮面の男も崖の崩落に巻き込まれた事もあって重傷だが、フェンリルも今直ぐに命を落としてもおかしくはない状態だ。

 倒れる際に口から零れ落ちた男が地面を転がる中、フェンリルが霞む目で月を眺めていると急激に鼓動が高鳴って行き、その音は周囲にも聞こえそうな程。

 同時にフェンリルの息も荒くなり、その黄金の毛は風も無いのに揺れ動き、遂に激しくなる鼓動によって体全体が振動を始めたその時、巨体が収縮を始め、全身の毛も抜け始めた。

 頭の一部分だけが残り、色も金から銀へと変わる中、徐々に肉体の形も変わり始め、そして内包する魔力も異常な迄に膨れ上がっているではないか。

 

「……我に何が起きたのだ?」

 

 やがて鼓動が静まる中、フェンリルだった存在は狼から人に似た姿へと肉体を変化させ、鳴き声ではなく明確な言語で己に起きた変化に戸惑いの言葉を呟く。

 月を思わせる銀色に変わった頭の毛は長く、身長は小柄ながら、その小ささに似つかわしくない豊満な体付きを余計に強調する事となっていた。

 髪と同じ銀の月の明かりを白い肌に浴び、幼さが残りつつも何処か艶やかさを見る者に印象付ける顔を挟む両手の爪の先は小さな口の中の犬歯と同様に鋭い。

 

「これは一体どうなっている? まさか先程の女に何か……っ!」

 

「違う。原因は君」

 

「……こらこら、言葉が足りないわよ、ロザリー。それじゃあ分からないっての。ほら、アンタも人の姿になったからには着なさい。……って言うかメスだったんだ」

 

 戸惑いを続けるフェンリルが人の姿になっても健在な嗅覚によって神獸の接近に気が付いた時、無表情で無感情の声を出すロザリーが側に来ており、その隣に立つミントは呆れ顔のままフェンリルにドレスを投げ渡した。

 

 

「この子が説明下手だから私がちゃんと教えるけれど、その姿は貴女がネームレスからネームドに進化するだけの才能を持っていたからよ。まあ、詳しくは追々説明するとして、名前を決めなくちゃね」

 

「……ハティ、ハティ・フェンリルだ。その名が我の頭に浮かんだ。さて、同胞よ。一つ質問がある」

 

「何かしら?」

 

「服の着方が分からぬ。もう先ほど同様に全裸で良いか?

 

「……教えてあげるから服は着なさい」

 

 よく考えれば先程まで狼だったのだから仕方が無いのか、そんな風に思うミントであった。

 

 

 

 

 

 

 その後、服を着る事に違和感を覚えたのか何度も脱ごうとするフェンリルを宥め、夜が明けた頃に巨大な塔の前に辿り着いた三人の姿があった。

 

「さて、此処が今日から我の巣か。早速中を案内して貰おうか」

 

「……私先輩。敬うの常識」

 

「アンタ達、仲良くしなさい」

 

 上から目線で見上げてくるハティの態度が気に入らないロザリーは不満そうに見下ろし、そんな二人を見るミントはこれから増えそうな苦労に溜め息を吐くのであった。

 

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エタッた作品のリサイクル! 最大幹部だけじゃね

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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