ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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パンダは親切か否か 

「何処からどう見ても不審者だよなぁ……」

 

 バーベキュー串みたいなのを持ったハシビロコウと黒子、そして灰色の……兎、少しトラウマが蘇るけれどグッと堪えて何とかシロノの姿を頭の中から追い出した。

 

「大丈夫大丈夫、此処は露天風呂じゃないし、ギヌスの民は此処には居ないんだから……」

 

 それでも体がガクガク震える中、チラッと兎のキグルミを眺めるんだけれど、さっき聞いた奇妙キテレツな歌の歌詞を考えたのはこの兎なのか、絶対に変人だな、身内というのは嘘だと思いたい。

 いや、絶対そうだな、間違い無い。

 

「リアスが知らないで会ったら不審者だから敵認定で即攻撃って事になりかねないし……」

 

 よく見れば描かれた人物の下の辺りには名前らしい物が書かれていて、パンダは当然”アンノウン”、黒子は”リゼリク・ハベトロット”、ハシビロコウが”キレース・フレスベルク”、そして……兎が”グレーシア・アルミラージ”。

 

「……いや、偶然か。名前に著作権が有る訳でもないし、神獸だって話だしさ」

 

 書かれている名前の一つが知っている名前だったけれど、只の偶然と切り捨てて絵に手を伸ばし、そのまま指を突っ込んで一部を破り取ってポケットにしまう。

 絵は僕より大きいし、持ち運ぶのが大変だったら必要な時に破った一部を核にして時間を戻せば良いだけだと、もう周囲に誰も居ない事を確認して明烏の力を借りる。

 絵を、特にパンダの部分を念入りに風で切り刻み、破片を燃やして灰にした後で風で飛ば

 

「しかし会話をしている間は自由な言動に振り回されたけれど、わざわざ情報をくれた上に今後は手伝ってくれるって……悪い神様じゃないのかな?」

 

 邪神悪神の類だと勝手に思ったし、心を読んでいたから伝わっていただろうに親切にしてくれたのだから反省が必要だと思いつつもポケットに手を入れれば上質な紙の感触が伝わって来た。

 絵を見ただけでトラウマが想起される兎の絵、其処を選んでしまった理由は分からないけれど、無意識のままにやってしまったのは何か理由が有るのかもね。

 

「さて、行こうか」

 

 アンノウン様が言っていた僕達が運命を変えた事で起きているという悪影響、其れがどんな内容でどの程度の規模なのかは分からないけれど、立ち向かわなくちゃ駄目なのなら立ち向かうだけ、それでも不安があるのは否定出来ないし、其れをどうにかする為に自分が何をすべきなのかは分かっている。

 

「気が進まないけれど、何時かはやらないといけない事なんだよな。もう早い方が良いんだけれど……」

 

 それこそ合宿中にでも行うべきなんだよな、憂鬱だけれども、リアスや他の身内を守る為、僕は覚悟を決める事にした。

 

 

「……今はハンティングの続きがあるから集中しようか。ルクスが気絶しちゃったのは痛いよなぁ……」

 

 正直言って臨海学校をさっさと終わらせて目的を果たしたい僕としてはパートナー二人共の条件クリアで合格な方が嬉しいけれど、一日目で失格になっただなんて知られたら恐ろしい人達も居るし、どうせなら友達と臨海学校を楽しみたい。

 ……まあ、ルクスに関しては僕の責任が無いとは言えないから彼奴だけ失格になって家に帰らされたら面倒な予感と良心の呵責が有るし、少し様子を見に行って叩き起こしてでも……へ?

 

 空を何気なく見上げれば白み始め、朝日が大地に広がろうとしているんだけれど、僕は其処まで時間を使ってしまった覚えはないし、これは一体……いや、まさかね。

 

「アンノウン様が何かしたって事……なのか? そんな気しかしない……」

 

 只の悪戯なのか、森で何か起きているけれど僕を介入させたくないのか、それとも無関係なのか、三つ目は有り得ない気がするけれど、兎に角これでハンティングは終了、会話時間は短かったと思ったのに随分と時間が過ぎているみたいだ。

 

 

「……もしもの時はデートに誘って、その場で行おう。向こうだって僕が理解している事は理解しているだろうし、残りとは失礼じゃない程度に適当に終わらせて……」

 

 出来れば行った方が良い、その程度に考えていた事がアンノウン様の情報によって急いでやった方が良い事へと変わってしまった。

 だから覚悟を決めろ、僕。

 運命はゲームみたいにイベントを起こさない限りはやって来ないなんてあり得ないんだからさ。

 逃げても目を逸らしても何をせずとも来るなら万全の準備で待ち構えるだけで、しかも行おうとしている事は僕にも彼女にもデメリットが無く、寧ろメリットの方が近いんだしさ。

 

 

 僕がやるべき事、それは……ネーシャを口説いて少しでも早く婚約を確実にする事だ。

 彼女との婚姻は決定しているのと同じだけれど、他の目的の為に口説くとか、……うわぁって感じなんだよなあ。

 

 

「頑張れ、ロノス。貴族だったら目的の為に感情は切り捨てるんだ。今までそうして来ただろう! うーん、でも少し気が重い。少なからず交流がある相手だし。……あっ、聞けば教えてくれたかも知れなかったな」

 

 森の出口に向かって歩きながら呟いていると徐々に他の生徒の姿も見えて来て、誰も彼もが徹夜で戦い抜いたのか酷く疲れた様子……そう、この場所に集まれているのは一晩中戦うなどしてハンティングを耐え抜いた生徒のみが居て、戦い抜く力が無い生徒は脱落後に回収されているのだろう。

 一年生の内、残ったのは二割以下なんだから今回の行事が厳しいのか、残った生徒が逞しいのか、それとも脱落した生徒が情けないのか、それは兎も角として未だリアスや他の身内の姿が見えないので待つ事数分、土煙が上がる程の勢いで僕の方に向かって来る愛しの妹の姿を発見した。

 

 

「見ぃ~つけたっ!」

 

 射程圏内に僕を捉えるなり大穴が開く程の勢いで地面を蹴り、巨岩をも砕く威力で飛びつき、大木をへし折る事さえ可能な力で抱き付くリアスだけれど、人前だし止めさせるべきか、それとも可愛い妹のする事だからなすがままにされておくべきか、其れが問題だ。

 

「リアス、お早う」

 

「うん! お兄様、お早う!」

 

 僕のパートナーであるルクスが側に居ない事を気にした様子もなく元気に挨拶するリアスに癒される中、カボチャ型の馬車が近付いて来る音に顔を向ければ目の前で氷の馬車が止まり、徐々に車輪が小さくなって車体が地面に着いたかと思うと扉が開いてネーシャが顔を覗かせる。

 

「ロノス様! お会いできて嬉しいですわ。お早う御座います」

 

「う、うん、お早う、ネーシャ。おっと、大丈夫?」

 

 僕を視認するなり嬉しそうに歩み寄って来た彼女が途中で躓きそうになったのでリアスが抱き付いた状態のまま受け止めたんだけれど、今度は彼女まで腕に抱き付いて来た。

 

「ロノス様には侮辱に思えるかも知れませんが、万が一の事が有るかもと心配していましたの。でも、こうして愛しいお顔を拝見出来て何よりですわ。……ですが少しの間こうしていても宜しいでしょうか? ロノス様の存在をしっかりと感じ取りたいのですわ」

 

 目を潤ませ不安そうな表情で見上げてくる彼女の頼みは断りにくい、例え演技と分かっていてもだ。

 ……リアスが不満そうにして僕を締め上げる力を強めているし、どうにかしたいんだけれどチェルシーが居ないからどうにもならないし……。

 

「と、所でパートナーのアリアさんは?」

 

「ええ、ちゃんと馬車の中にいますわよ? 朝になった途端に虫が増えて木の上から落ちて来るので屋根と壁に覆われた馬車に変えたから外からは……あら? あっ! うっかり出た後で扉を閉めたままにしていました!」

 

 本当にうっかりって感じで慌てた様子を見せながら馬車の扉を開くネーシャだけれど、多分これも演技なんだろうなあ……。

 

 

 まあ、これから大切なお願いを聞いて貰う立場だから指摘しにくいんだけれどさ。

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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