ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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灰色の黒歴史

 先ず最初に耳に入ったのはサンバを思わせる賑やかな音楽、続いて小さな女の子の無感情で棒読みの歌声……もう歌詞を淡々と読んでいてギリギリ歌って思える、そんな奇妙な物だった

 

 

『メロリンパッフェ メロリンパッフェ

 

 恋はメロリン、あなたの眼差しシューティングソーダ    私のハートはメロリンパッフェ とろけとろけてチョコフォンデュ

 

 ピピピッ、ピクシー! わたしは小さなアクマ~ アナタに刺☆激的なトリックをあげーる

 

 ピピピッ、ピクシー! わたしは恋するようせい~ アナタに過☆激すぎるセクシーをみせーる

 

 ピピピッ、ピクシー! わたしはユメみるオンナノーコ ワタシはダイタンなアプローチをあげーる

 

 ピピピッ、ピクシー! ピピピッ、ピクシー! ピピピッ、ピクシー!

 

 ワタシにふりむかなーいアナタにDESをあげーる

 

 だけど嫌な予感が落雷エクレア パリパリ弾けて お口でとろける 蕩けちゃう

 

 恋を阻む障害はポポロン投げ……』

 

「それ以上聞くなら殺しますよ、小娘」

 

 ……はっ!?

 

 余りの内容に途中で意識を閉ざして続きを聞くのを無意識に拒絶する中、灰色のウサギのキグルミ……キグルミーズのグレーシアさんだったっけ?

 アンノウン様が呟いていた奇妙キテレツなポエムを教え歌にしたそれは途中で途切れ、グレーシアさんは真後ろからサマエルの側頭部を拳で締め上げながら持ち上げていた。

 

「にょほぉおおおおっ!? この中々素晴らしい歌を聴くのがどうして……ぎにょぉおおおおおおおっ!?」

 

 よりにもよってサマエルは歌が気に入ったのか目を閉じて軽く軽快なリズムに合わせて体を揺らしていて、グレーシアさんはそれが気に食わないのか冷静な声ながら怒気を通り越して殺意すら感じ取れる。

 ……直接向けられていない僕にまで届くなんてどれ程の物を抱えているんだろうか、このポエムって確かグレーシアさんの作品……。

 

「ロノス……さん、貴方も余計な事を考えないように。顔を見れば分かりますよ。……ああ、それと毛布をお貸し頂けますか?」

 

「は、はい!」

 

 バレてたよ、って言うか何となくこの人には逆らえない気がするし、何処かで聞いた事のある声な気がするんだけれどな?

 僕はビクビクしながらもジタバタ暴れるサマエルを締め上げ続けるグレーシアさんの所まで毛布を持って行くと彼女はサマエルを解放するなり毛布を巻き付け、着ていた服だけは器用に引っ剥がした。

 え? どうやったの?

 

「次はあの腐れパンダ擬きですが……今は貴女ですね」

 

「お、おのれ! 私様を誰だと思って……」

 

「せい!」

 

「のじゃぁあああああああああっ!?」

 

 当然ながらサマエルの力なら毛布程度は拘束の役目を果たさないんだろうけれど、頭を締め上げられた状態から落とされた時に強かにお尻を床に打ち付け、怯んだ僅かな隙に髪の毛をひっ掴んでからの回転による振り回し、凄いな、目玉がグルグル回っているのが分かるぞ。

 そのままやる時の感じられない掛け声と共に投げ飛ばせばドアを突き破って外へと放り出される。

 

「ピッ!? ……ピピッ!」

 

 飛び出して来たサマエルを見てタマが一瞬だけビクッとしたんだけれど、其処はアンリの相棒なだけあって瞬時に凶暴なドラゴンの一面を覗かせる。

 全身を震わせて間髪入れず放たれる全力の電撃は放物線を描きながら飛んで行くサマエルに見事直撃、頭をアフロにして海へと叩き落とした。

 

 

「あれは流石に死んだ……かな?」

 

「いえ、あの程度では死なないでしょう。だから倒しなさい。神獣将を倒すのは今の世界に生きる者達の役目です」

 

 冷徹な声で僕の言葉を否定するグレーシアさん、神の遣いなだけあって人間じゃないのは確定らしい。

 そうか、あれだけされて生きているのか、改めて相手が人間ではないのだと認識させられる中、一瞬視線を外しただけで彼女の姿は消え去っている。

 アンノウン様も急に現れて帰っていったけれど、彼女もそうなんだな。

 

「……うーん、それにしても本当に何処かで聞いた気のする声なんだけれど、何処で聞いたんだっけ? アンリ、君は何か心当たりが……あれ?」

 

 多分無いとは思いつつもアンリならば知っているかも知れないから訊ねてみようと顔を向ければ両耳に指でに耳栓をしていたのを外す所だった。

 

「なんで耳を塞いでいたんだい?」

 

「これ以上聞くな、そう言われたのは僕もなのさ。”小娘”と呼びながら殺気を向けたのはあの少女だけではなかったぞ。……君が入っていなかった理由はわかるかい?」

 

「……さあ?」

 

 寧ろ僕はあの歌詞の元になったポエムの作者が彼女だと知っているし、その事を考えたら悟られて叱られた位、僕だけ殺気を向けられない理由にはならない。

 ……一度聞いてしまっているから?

 

 

「さて、僕は二度寝するから君はドアの修繕を頼んだ。と言うか……い、何時までも見ないでくれ。恥ずかしいじゃないか……」

 

「ご、ごめん!」

 

 つい数秒前までは平気な顔をして全裸で暴れ回っていたアンリは戦士の顔をしていたけれど、今は手で大切な部分を隠しながら恥ずかしがる女の子の顔、僕も急に直視出来ない程に恥ずかしくなったから背中を向けてドアや室内の時間を壊れる前に戻して行く。

 その間にアンリは今度こそ自分のベッドに寝転がって毛布を被るのが音で分かったんだけれど、僕の分の毛布は……。

 

「サマエルに持って行かれちゃったか。……嫌がらせは成功だな」

 

 グレーシアさんがサマエルと一緒に投げ飛ばしてしまったから毛布は無く、毛布が無いと少し冷える、だからポチを部屋に連れ込んで引っ付いても許される筈だよ、結果オーライ、毛布が無いんだから方法はそれだけだ、ポチを速攻呼び寄せようっと。

 

 サマエルの襲撃は面倒だったけれど怪我はしていないし、ポチを連れ込む口実になるんだったら逆に嬉しい、襲撃が起きなくって連れ込めるだけだったら更に嬉しい。

 

「アンリ、悪いんだけれど……」

 

「悪いと思うならポチは連れ込まない事だ。可愛いペットであろうとも室内に大型の獣を入れないのはマナーだぞ」

 

「な、なんで全部言う前に分かったのさ……」

 

 口実は出来たし後は勢いで押し通すだけだと企んでいたら、勢いを付ける前に叩き潰された、これでポチは連れ込めない……。

 だけれども僕は諦めないぞ、この失敗を糧に次こそ成功させる為、何故出鼻をくじかれる事になったのかを探るんだ。

 

 

「僕は君の友人だぞ。大体分かるさ」

 

 ぐっ! 表情を作る事は得意で考えを表に出さない訓練はして来たのに、努力が友情の前に敗れただなんて。

 でも、その友情に訴えればもしかしてチャンスが……。

 

 何故なら僕は春先でもコートが必要な位に冷え症だから眠る時は温かくしたいんだ、故にポチが必要なんだけれど、その辺を理由に何とか説得しようとアンリに目を向ければ毛布で体を隠しながらベッドを軽く叩いて手招きをしている。

 え? まさか一緒のベッドで眠ろうとか、そんなお誘い……の筈がないか、一瞬そっち方面に誘われたと勘違いしたけれど有り得ないよね。

 

 きっと他の意味が……。

 

 

「君は寒がりだろう。ベッドも毛布も大きいのだし、互いに背を向けて眠ろう。大丈夫だ、君は眠る僕に変な手出しをする男ではないと知っている。遠慮せずに来ると良い」

 

 有り得たよっ! そして変な勘違いしてごめんね!

 

「あっ、うん。そうさせて貰うよ。……その前に汗を流さないとね」

 

 此処で断ったら変に意識しているって思われるし、僕は彼女の提案を受け入れる事にしたんだ、直ぐは無理だから一旦お風呂に逃げたけれどさ。

 

 

 

 

「この前みたいに背中を流してやろうか?」

 

「ははっ、僕もお返しに長そうか?」

 

 軽口を言い合えば変な勘違いで乱れた心も落ち着いて来たし、お風呂でゆっくり汗を流せば隣にアンリが居ても平気で眠れそうだ。

 

 

 

 

 ……この時、僕はトラウマの再来が有るだなんて思いもしていなかった。

 露天風呂でシロノに襲われた時のトラウマを……。

 

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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