ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
「………ふん。何しに来たのだ、何しに。妾は貴様等に用は無いのだが?」
学校が終わるなり僕はポチに乗って全速力でレキアの管理する妖精の領域まで向かったんだけれど、到着するなり出迎えた彼女は相変わらず愛想が悪い。
僕としてはポチのお腹の羽毛の感触を小一時間は堪能してから来たかったのに、そんな事を知らないからって酷いなぁ。
此処に来たのは僕の都合も有るし、前回は軽く見て回って危なっかしい所だけを応急措置しただけだけれど、今日はちょっと本格的に調べる予定で来たけれど、”ネペンテス商会”について本来は知らない筈の僕じゃ事情は詳しく話せない。
でも、一昨日魔法でモンスターに変えた花を操って悪戯されたし、毎回この態度は結構酷いと思っていたんだ。
子供の頃からの付き合いだって言うのに、矢っ張り妖精と人じゃ感覚が違うのかな?
……癪だから少し僕もからかってやれ。
「君に会いに来た……ってのは駄目かい、レキア?」
「んなっ!? ほほほほほ、本当か!? 本当に妾に会いに来たのだなっ!?」
向こうは僕に会うのが嬉しくないみたいだし、こんな風な事を言ってやれば意表を突かれたレキアは酷く動揺している。
どうも向こうだってこっちが嫌っているって思っているみたいだし、これは結構有効だったみたいだ。
「うん、そうだよ。じゃあ領域内をポチに乗って散策でもしようか?」
まあ、嘘は言っていない。
だってレキアから情報を引き出したいし、中を調べる時に管理者の許可が無ければ後々問題になりかねないからね。
妖精女王様には気に入られているけれど、その辺の筋を通さないと侮られているって思われたらクヴァイル家との関係にヒビが入る。
さて、駄目だって言うのなら女王様からの依頼を口実に勝手に調べさせて貰うけれど、レキアはどう出るのやら……。
僕の返答に顔を真っ赤にさせ、口をパクパク動かす姿からして随分とショックが大きかったらしく、回復するまで少し待ちくたびれた。
ポチなんか僕の袖を咥えて引っ張りながら散歩を始めたいとおねだりして来たし、誘惑に打ち勝つのは大変だったけれど、復活したレキアは少し赤みが残った顔を背け、腕組みをしながら渋々って感じながら了承してくれた。
「ふふんっ! 客人として来訪した者を邪険に扱っては妖精の姫の名が廃るからな。妾の管理する領域の素晴らしさを見せつけるのも一興として許可してやろう」
「やった! 宜しくね、レキア!」
「か、勘違いするでないぞ! 妾は貴様を歓迎などしておらぬ!」
「キュイ……」
こら! ”此奴、
全く、誰が悪い言葉を教えているのやら……。
「ふむ。では行くとするか。……その前に」
レキアは何故かモッフモフでフッカフカなポチの上じゃなくて僕の頭に乗ろうとしたけれど、何を思い付いたのか僕の目の前で止まり、右手の甲を差し出した。
「物のついでだ。貴様に少し名誉をくれてやる。生涯で最大の誉れと知るが良い」
誇らしげに胸を張り、相変わらず偉そうだ。
何をさせたいのかは分かるけれど、随分と僕の人生を見くびってくれるよ、彼女は。
いや、仮にも妖精の姫なんだけどさ……。
「どうした? あまりの名誉に戸惑い錯乱したか? ああ、先に言っておくが貴様の事を妾が異性として好む事は永劫に無い。これはあくまで高貴なる存在としての施しだ。……まあ、母上が命じるのなら嫁ぐ事になるのだろうが」
……これ、手の甲にキスしないと駄目な流れ?
別にレキアに触るのも嫌って嫌悪感を持ってはいないけれど、何だか屈辱的な気が……まさかっ!
「レキア、まさか僕の気持ちに気が付いている?」
「……何の事だ?」
間違い無い!
これは僕が何を思って言葉を選んだのかを見抜いた上で仕返ししたんだ!
「流石だね、レキア」
「?」
惚けてるけれど僕には分かっているし、次は負けない。
だからこれは自分への戒めだ。
「失礼致します、姫様」
今回は負けを認め、僕はレキアの手の甲に軽くキスをする。
少し惚けた様子で手の甲を見つめていたレキアは我に返った後で嬉しそうに見えた。
「さ、さあ、行くぞ! 貴様なんぞに使う時間が惜しいからな」
「キュイ!」
「ななな、何だっ!? 此奴、今怒っていなかったか!?」
「さあね? 大丈夫さ。ポチは僕の許可が無いと基本的に誰も襲わないよ、状況にもよるけど」
「”基本的”とか”状況による”とか、それは襲う前振りだろう!?」
頭に掴まってギャーギャー騒ぐレキアからはポチへの恐怖が伝わって来る。
良くやったよ、ポチ。
ポチのお陰で溜飲を下げた気分の僕は鼻歌混じりになり、妖精の領域の景色を楽しむ。
何時の間にか落ち着いたらしく、レキアも歌を歌い出し、ポチもそれに合わせて鳴けば軽い合唱が始まっていた。
「レキアもそうしていれば普通に可愛い子なのにね」
聞かれたら怒るから小声で呟く。
さて、そろそろ本題に入ろうかな?
僕とリアスが知るゲームでの流れとは変わり始めた出来事の手掛かりを得る為に此処までやって来た。
警戒すべき相手に警戒している事を悟られない様にして情報を集めないと。
……何せレキアに接触した”ネペンテス商会”は物語において暗躍する組織であり、人類を滅ぼそうとしていた神の眷属だし、慎重になるに越した事は無い。
「商人がどんな奴だったか? 黒い布を顔に巻いて全身を白一色でコーディネートした手足の長い男だったぞ。まあ、間違い無く神の眷属の類だな。人程度には分からずとも妖精の目は誤魔化せん」
「そっか。僕も会ってみたいな。でも神の眷属ってどの神の眷属なんだろうね?」
「さあな。名乗りはしなかった。……それ以外にも始終無礼な奴だったしな。貴様も相手せんで良い」
「わざわざ僕の前に現れるかなぁ? 君みたいに妖精じゃないんだし」
「謙遜も過ぎれば嫌みになるぞ? 貴様は所詮人間風情だが、その中では少しは見所があると私が認めてやっているのだ」
何処か誇らしげな声で僕を誉めるレキアだけれど、相も変わらずこの子は。
もう少し普通に誉めてくれたら僕だってもっと
嬉しいのにさ。
「そんな事を言うレキアに無礼とか言われたくないだろうね。まあ、君が愚痴をこぼすなんて随分憤慨した様子から関わりたくないとも思うよ」
でもなぁ、”アリアさんとその仲間を影から支援して危険を冒す事なく驚異を取り除く”って当初の案は入学初日から破綻しそうって言うか、入学前からゲームとは状況が変わっているし、修正は不可能に近いんだよね。
どれだけ強くても神だのなんだのに挑む危険は避けたいし、大切な家族にも避けて欲しい。
只、友達も大切だし、アリアさんも随分と関わったからなぁ、数日で。
「此処は平和で良いよね、レキア」
ちょっと休憩とばかりに止まり、寝そべったポチに背中を預け、しみじみと呟く。
普段は何匹か見るはずのモンスターの姿もないし、本当に平和で静かな場所だよ。
「貴様達人間は政争だの何だので身内同士でさえ争うからな。妾達妖精とは全くの別物だ。まあ、貴様ならば小間使いとして置いてやっても構わんぞ?」
「あっ、此処に来る前にお土産のお菓子を買って来たんだった。丁度屋台の前が空いていてさ。ほら、カステラボール」
人間、時には聞こえなかった振りも必要だ。
僕はレキアの勧誘を無視してポケットからお菓子の入った紙袋を取り出し、魔法で温かいままにしているカステラボールを千切ってレキアに差し出した。
「はい、あーん」
「……あーん」
ありゃりゃ、まさか乗って来るだなんて驚きだよ。
何か言ったら怒るだろうし、黙っておくけどさ。
「キュイキュイ!」
「ポチも食べたいの? ほらっ!」
カステラボールの袋をジッと見つめて甘え声で鳴いて来たポチの目の前に一つ差し出して左右に動かせば顔も合わせて左右に動いて凄く可愛い。
少し力を込めて投げてやれば見事に空中でキャッチした。
「おい、次を寄越せ」
レキアは少し不満そうにしながらも腕組みをして口を開けるし、未だ僕に食べさせる気なんだ。
こうやってるとポチが赤ちゃんだった頃の事を思い出すな。
卵から孵ったばかりのあの子に餌をやったりしてやってさ……。
「キューイ?」
「次が欲しいの? はいはい、ちゃんとポチの分も沢山有るから。……あれ?」
次を頂戴と甘えて来るポチの背中に強い力を発する赤い花がくっ付いている。
「これって……”夢見の花”?」
他人の夢の中に入れるっていう割と伝説級の物があっさりと見付かった。
感想待っています
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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シロノ
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アリア