ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

30 / 393
入れ替わったのはメイド物 犯人は分かっている

「あの馬鹿、本当に消してやろうか。……言っておくけれど独り言だから実行しないでね」

 

 夜、改めてアマーラ帝国に関する資料に目を通すけれど、読み進めれば読み進める程に僕の中ではアイザックへの怒りが湧き続け、部屋の隅で気配と姿を完全に周囲と同化させた忍者が勘違いしそうな事を呟いてしまった。

 

 ・帝国では双子が闇属性と同様に禁忌とされ、王侯貴族では家に血筋を取り込む為に殺されはしないが正式な一族の者として表舞台で動けもしない。

 

 ・本来ならば引退して尚強い影響力を持つ先代皇帝が後ろ盾になって改革を進める予定であったが、王国の先代王妃の事故に巻き込まれて死んだ為にかなり強引な方法で改革を進め、女性という事もあって未だに反皇帝派の貴族は弱体化しながらも残っている。

 

 ・アイザックは年功序列や血統よりも実力を重視する現皇帝の統治下においては姉である皇帝の権威を損ねる存在であり、反皇帝派からすれば皇帝の娘よりも担ぎ上げて傀儡にし易い存在である。

 

 ……此処まで読んだ所で怒りで書類を握り潰してしまった。

 手の中でクシャクシャになる報告書から窓の外に視線を移せば僅かに欠けた月が目に入る。

 

「明日は満月か。ねぇ、君はアイザックに関して……こんな国で育っていながら僕の可愛い双子の妹に求婚した馬鹿にどんな感想を抱いた?」

 

「警護は何を望まれているのか分かりやすい程に雑であり、容易いかと。……ご命令とあらば半時もしない間に終わらせますが?」

 

「いや、其処まではしなくても構わないよ」

 

 部屋の隅の誰も居なかった様に見える場所に姿を現したクノイチは事もなさげに口にして、実際に許可すれば明日にはアイザックがうつ伏せ寝で窒息死したって話が広まるんだろうね。

 

 でも、僕はそれを保留にする。

 未だ利用する機会が有る可能性を考えれば、想定される危険は許容範囲内だ。

 実際に送られた刺客は全て始末して、その首に依頼主への寝起きドッキリをお願いしたしさ。

 

 夜も更け、明日も学校だからそろそろ寝ないといけないんだけれど、ちょっと気分転換をしないと眠れそうにないや。

 

「さて、今度は大丈夫……だと思いたい。前のは中身だけが全部入れ替わっていたからね。手に入れるのに苦労した物だって有るのにさ」

 

 書類に魔法を使って文字が書かれる前まで時を戻してメモ用紙入れに放り込み、他の本の隙間に隠しておいた秘密の本棚(三代目)の本……リアスには見せられない類の物を手に取ろうとし、ハッと我に返る。

 

「……警護は部屋の外でお願い出来るかな?」

 

 先程姿を現し、僕が暗殺の必要は無いと告げるやいなや再び姿を消した彼女に退室を促す……けれど、暫くの沈黙の後で姿を現した。

 しかも口元を隠す布を外し、胸元を緩めた状態でだ。

 

 ……あれぇ?

 

「本体と全分身での協議の結果、後片付けや事の効率を考慮し、本日の室内警護担当の私がお相手すべきと進言致しますが如何でしょうか?」

 

 冗談でもないし、色気付いている様子でも無く、本当にそれも業務の一つだと言わんばかりの態度。

 そもそも彼女達……いや、正確には彼女にはそんな事を考えたりする様な思考回路は持ち合わせていないから、純粋に自分の役割としての行動って事になるし、逆に何か……。

 

 

「はっ!?」

 

 

 いやいやいやっ!? 正気に戻れ、ロノス!

 幾ら相手が真面目無表情系で巨乳のお姉さんで色気重視の忍び装束だとしてもっ!

 そもそもその格好の理由を未だに聞けていないんだ、何か怖いから。

 

「先に報告致しますが本体と他の分身とは記憶の完全同期が可能ですので今後気まずい事は無いかと。それとも複数相手がお望みならばお呼び致しますが?」

 

 もし僕が頷けば大人数が一度に集まるだろう。

 うん、止めた方が絶対良いな。

 

「……気分転換はチェスにするから相手をして」

 

「はっ!」

 

 一瞬で普段の格好に戻った彼女は先程までの遣り取りが無かったみたいにかしこまり跪く。

 こんな所が苦手なんだよね……。

 

 

「じゃあ互いに手加減は無しで」

 

 僕の前までやって来たと思ったら既にチェス盤が用意され、僕の許可が有れば直ぐにでも着席するだろう。

 自らをただの道具として認識し、僕の望むがままに動く絶対なる忠臣にして懐刀……にしては些か大きいけれどね。

 

 気が付かれない様に胸に視線を一瞬だけ向け、直ぐにチェス盤を見る。

 さて、寝る前の気分転換には丁度良いかな?

 

 

 

「私の胸が気になるのなら脱ぎますが?」

 

「そうやって口に出して願っていない事を何でもかんでも実行するのは駄目だからね? 察しが良いのも考え物だよ、本当に」

 

 ……本当に苦手なんだよね、こんな所がさ。

 

 

 

 

 

「敗北フラグも蹴散らして~! ドンドン進め、さあ進め~!」

 

 ハルバートを振り上げて、鼻歌交じりにリアスは学園ダンジョンをドンドン進む。

 どうも昨日みたいに決闘前に勝負後のご褒美について盛り上がるのは”敗北フラグ”?  らしいが、よく分からない事を口にするのは珍しくないので放置しよう。

 何となく意味は分かるし。

 

 本日、決闘当日なり。

 

 王国の作法に則って決闘を申し込んだ方が自ら指定したダンジョンの奥で待ちかまえ、受けた方が後から向かう、そんな実に無駄なルールを守って進む私達は息を切らす暇も無しに最奥までやって来た。

 

「……早かったな」

 

「逃げずにちゃんと来た事は評価しようじゃないか。……それと先に言っておこう。アリア・ルメス。僕は君を侮らない」

 

 拍子抜けする程に簡単についた場所に待ちかまえていた決闘相手の二人はマザコン王子の方が腕組みをしながらこっちを睨み、眼鏡の方が指先で眼鏡の位置を直す。

 

「じゃあ、さっさと始めましょうか! 確か後から来た方が先に名乗りを上げるのよね? アリア」

 

「ええ、そうです」

 

「じゃあ、早速! 聖女の再来とか何だの呼ばれて居るけれど、私が名乗るべきは只一つ! ”世界準最強”……リアス・クヴァイルよ!」

 

「ア、アリア・ルメス! ……えっと、名乗る物が思い浮かびません。魔女……はちょっと違いますよね?」

 

 リアスは自信たっぷりに、私は少し自信が無くて気弱な……演技の名乗りを上げる。

 そして次は決闘を申し込んだ側の名乗りの番で、最後の一人が名乗った後で武器を抜いた瞬間から勝負は始まる。

 

 つまり、タイミングは相手次第で、要するに……。

 

 

「アンダイン・フルトブラントだ! いざ参る!」

 

「ルクス・アース。行くぞ!」

 

 当然の話だけれど、二つ名なんてのは呼ばれる物であって自ら名乗る物ではない。

 なので自ら名乗ったリアスと違って二人は名前だけを名乗り、ルクス王子が武器を抜いて決闘の始まりの合図とする。

 勝敗条件は二つで、”気絶”か”降参”。

 

 そう、今からそんな決闘が始まるという事で、要するに……。

 

 

 

「アドヴェント!」

 

 残り数秒でこの茶番は終わりを告げるという事だ。

 

 高々と呪文を詠唱したリアスは体の発光と共にハルバートを弧を描く様にして投げ、瞬時に二人の間をすり抜けながら武器を叩き落としながら背後に回り、二人の頭を掴んでぶつけ合わせる。

 

 随分と痛そうな音がした。

 

「アリア!」

 

「はい!」

 

 気が付いた時には武器を落とされ頭に攻撃を喰らい、そんな状態で冷静ではいられないし、居られたとしても二人に為す術は存在しない。

 何せ次の瞬間には襟首を捕まれて私に向かって投げられたのだから。

 

「ダークショット!」

 

 威力の底上げを学び、その後で調整を学んだ”重傷をギリギリ負わない程度”、そんな威力の魔法を二人は空中で避ける事が出来ずに正面から喰らい、再び後方に吹っ飛んで行く。

 

「これで一人」

 

 アンダインの眼鏡が割れた後で彼が白目を剥いて気絶し、ルクス王子だけは地面を転がりながらも意識が残っている。

 

「……未だ此処からだ」

 

 こんな状況でも諦めず、逆転の一手のつもりなのか地面に手を当てて巨大な金属の剣を引き抜いて行くルクス王子は成る程、他の女子生徒が黄色い声援を送るのも理解しよう。

 

 

 私は全く同感しないが。

 だって私が好きなのはロノスさんだ。

 

「いいえ、此処までよ」

 

 そして勝負も此処までだ。

 巨大な剣を引き抜き終わるよりも速くリアスさんがハルバートを振り抜き、一応手加減をしたのか脇腹に柄の部分を叩き付けて……天井まで吹き飛ばした。

 

 

「……生きていますかね?」

 

「大丈夫よ。人間ってそう簡単に死ねない……死なないから」

 

「そうですか。なら……」

 

 これでロノスさんとのデートが決まったと胸が高鳴った時、本能が警鐘を全力で鳴らした。

 聞こえて来るのは荒い息遣いと足音、そして金属がガチャガチャと鳴る耳障りな音。

 ビタンビタンと長い何かで地面を叩く音すら聞こえ、その音の主は姿を現した。

 

 

 

「リ、リザードマン!?」

 

 例えるならば”人に似た体を持った大蜥蜴”、純白の体を持ち見るからに気性の荒そうなそれは同じく純白で……何処か神聖さすら感じさせる剣と盾を手にし、胴体を守る鎧を身に付けていた。

 

 

「フシャァアアアアアアアア!」

 

「うっさい。ソード・ダンス!」

 

 響き渡る威嚇の咆哮と、それに続く容赦の無い光の剣の群れ。

 あのリ、リザードマンが何かは分からないけれど、リアスならば直ぐに終わる……筈だった

 

「……あれぇ? 彼奴、もしかして光属性? リザード・ホーリーナイトって所?」

 

 光の剣はリザード・ホーリーナイトに当たったけれど一切のダメージを与えていない。

 ……これってピンチ?

 

 

「しかもオマケね」

 

 続いてもう三匹追加で姿を見せるリザード・ホーリーナイトに私は確信させられる。

 ……これってピンチだ!

 

 

 

 

 




言ってしまえば初期ダンジョンで数個先のダンジョンの推奨レベル相当まで上げた状態

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

  • ポチ
  • レキア
  • 夜鶴
  • ネーシャ
  • ハティ
  • レナ
  • パンドラ
  • サマエル
  • シロノ
  • アリア

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。