ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
「さて、此処に毒を塗ったナイフを持って侵入を計った理由を話して貰えますか? リカルドさん、でしたよね?」
ポチに取り押さえられていた男性の名前は”リカルド・ボッシ”、ヴァティ商会が関係している港で働く男で、視察に向かった時に期待されている優秀な船乗りとして紹介されたらしい。
それがアイアンメイデンと有刺鉄線の塀を乗り越えて侵入、あのナイフにはちゃんと魚の肝に含まれる麻痺毒が塗られていたとかで今は拘束されてアカー先生に尋問を受けているけれど顔を背けているから素直に話す気は無いみたいだね。
暗殺か誘拐か、目的は分からないけれど、単独犯なのか仲間が居るのか……彼が囮の可能性も有るから既に忍び込むか見張っている本命が居ないか何人かが警戒して居るけれど、どう見ても普通の船乗りだ、それがどうして?
「答えて下さい。私の生徒を狙って来たと判断して良いんですよね!」
「……はっ。餓鬼が教師? 貴族の学校っていうのも頭がおかしい……」
「……あっ?」
床に唾を吐き捨てながらグラフゥが悪態を付いた瞬間、先生の声色が急変する、ドスが利いていた、見た目も声も子供なのに裏家業の人のようだ。
相手がどう見ても子供だからと侮って居たらしいリカルドはビクッと体を跳ねさせるけれど、トアラスの魔法で拘束されているから逃げられる訳もない。
……この状況で黙りを決め込むとか何を隠しているんだろう?
まあ、毒を塗ったナイフを持って忍び込もうとしていたんだ、穏やかなアカー先生だって穏便に済ませはしないだろうね。
「私はエルフの血が濃く受け継がれたから見た目が若いだけで、実際は四十代、二十そこそこの貴方の倍は生きているんですよ。……いい加減に話してくれませんか? 生徒を狙った刺客にまで”優しい先生”を続ける気は有りませんからね」
右手に炎、左手に渦巻く風を出現させてリカルドの眼前に翳すアカー先生、無詠唱で異なる属性の魔法を同時使用か、相変わらずとんでもない人だ。
見た目は十歳そこそこ、浮かべる笑顔も見た目年齢相応、但し纏う威圧感は四属性全てを使いこなす経験豊富な教師に相応しい物。
……先生を”合法ショタ”とか呼んで性的に狙っている変態女子生徒達も今の姿を見れば諦めるだろうね。
でも、多分それは無い。
もっと厳しくして締め上げれば落ち着くだろうと他の先生に言われた時、”どんな時でも生徒に対しては親しみの持てる優しさを忘れない”、それが教師としての信念だと話すのを聞いた事があるからね。
「……頼みがあってやって来た。人質を取る気でナイフは持って来たが殺す気は無い」
そんな先生の信念も相手が生徒ではなく、生徒の敵だったのなら話は別だ。
心身共にタフな事が求められる船乗りだろうと先生の脅しには屈してしまい、言いにくそうに顔を背けるのは怖いからか、それとも恥から直視出来ないのか……。
「頼み……ですか。それは確かに貴族の子息子女が集まる場所なんて直接頼みに来るには敷居が高い場所でしょうが、ナイフを持って忍び込もうとか交渉しようって態度じゃありませんよ? ……話しにくい事でしょうが話して下さい。貴方にはその義務があります」
真摯にリカルドを見詰めて語り掛ける姿は実年齢相応の姿に見えて、リカルドもそれを感じ取ったのか、行いが行いだけに最悪一族郎党死刑も有り得るであろう行動の理由を語り始める。
いや、この話を聞いた後で思えば最初から命と引き替えにしてでも目的を成そうとしたのかも知れないと思えて来る、そんな内容だった。
「俺が生まれたのは小さな港町、親父が波に浚われて死んじまったから、あの頃、俺の家族は病気がちなお袋と……兄貴だけ。その家族の為に此処まで来たんだ」
成る程、今までの話に偽りが無いとして、貴族の生徒を人質にしてまでの頼み事だ、家族の為だって動機には納得出来なくも無いとして、先生の反応から分かるように完全には信用していない。
全てが虚偽で何かを企んでいるのか、虚偽ではないけれど騙され利用されているのか、僕達生徒を守る役目を負った先生はそれらを警戒しているんだろう。
……情とかで雁字搦めで視野狭窄状態の人って利用しやすいからなあ、クヴァイル家だって普通にそんな感じの相手を利用するし。
横で見ているとリカルドにもそれが伝わったらしく、途中で言葉を途切れさせたけれど、”ちゃんと話せ”という無言の圧力に耐えられなかったのか再び口を開く。
「……人魚だ。姪の名前はサンズー、今年で十六になる子でウンディーネ族の族長の娘。近々ウンディーネ族とセイレーン族が争いになるかも知れないとサンズーから聞き、人魚の討伐が始まるのではと警戒して……ガハッ!」
「下がって! 口も塞いで下さい!」
真剣な顔で話していたリカルドの突然の吐血、せき込みながら血を吐き続ける彼の姿を見るなり先生は大声を上げて僕達をリカルドから遠ざけようとしつつ自らも袖で口を塞ぐ。
体内に毒を仕込んだか、それとも感染力の高い病なのか、そのどちらでもなくたって今この瞬間は判断材料が足りやしない。
「落ち…着け……たって無理だろうが、別に伝染する病気じゃねぇよ」
「信用出来ると想いますか? ……君達生徒も同席させたのは完全なるミスでしたね。……ロノス君、確かレキア姫達妖精はは相手の体内を調べて毒や病の有無を知る魔法を使えましたよね?」
「あっ、はい。僕も少し体が怠い時、”体調管理がなっておらんぞ、馬鹿者が。調べてやるから其処になおれ”って言いながら調べてくれた記憶が……」
あの時って改めて思い出せば心配してかオロオロしていたのが今になって分かる。
本心を隠して意地を張り”嫌いだ”とか言いながらも友達だって思ってくれていたのに当時は分からなかったのは情けないなあ。
身内みたいなものだとは思っていただけに、逆に判断力が低下していただなんてレキアに悪い事をしたよ。
素直になれない友人の本心を察してあげられなかったなんてさ……。
「じゃあレキアを呼ぼう……って既に居るや」
ドアを見れば僅かに開いた隙間の下の方から此方を心配そうに覗き込むレキアと目が合って、彼女は直ぐに表情を変えて何時もの偉そうにふんぞり返った態度になった。
「……ふ、ふん。妾が滞在する場所に不埒な侵入者が現れたのだ。ロノスとて発見者として同行している以上、同席させて当然であろう。……安堵せよ、既に調べは終わったわ。祖奴の病に感染力は無い。但し、精々……」
僕がそのままドアを開ければ肩の上に乗って、声色では少しも心配なんかしていないって風に装いつつ、壁の鏡にはほっと胸をなで下ろす姿が映っているんだから最初から心配して見に来てくれたんだろう。
だから侵入者が気に入らないのか最後の方は嘲笑った様子で指差してリカルドに何かを告げようとするんだけれど、その声は諦めの混じった声に遮られた。
「長くて2ヶ月しか生きられない、だろう?」
「知っていたか、人間。……おい、ロノス。妾は低い場所から様子を伺って疲れた。マッサージ事を許可する」
言葉を遮られた事に少し不愉快そうにしながらもレキアは僕の袖を引っ張って連れ出そうとする。
うーん、ちょっと話が気になる所だけれど、これは従わないと拗ねて面倒になるな。
「あの、先生……」
「ええ、レキア姫にはお世話になりましたし、恩返しも兼ねて労って差し上げて下さい。後は先生が話を聞き出しますので。トアラス君、ちょっとお手伝いをお願い出来ますか?」
「……ええ、勿論」
この時、ずっと黙っていたトアラスが口を開く。
リカルドは怪訝そうな顔だけれど、彼が普段の軽い声色も表情も何処かに置き忘れたみたいに真剣な様子な理由は分からない方が幸せだろう。
「許しが出たならば行くぞ、ロノス。マッサージの最中は歌を聴かせてやろう。妾の寛大な心に咽び泣くが良い」
「そうだね。僕はレキアが好きだから嬉しいよ」
「すっ!? そ、そうか。……そうか」
あっ、レキア”の歌”が好き、だった。
でも、友達だし好きで間違っていないんだから訂正の必要は無いだろう。
「じゃあ、失礼します」
妙に上機嫌のレキアと部屋を出る時、一瞬だけリカルドに視線を向ける。
”拷問貴族”と恐れられる一族の次期当主が目の前に居て、真偽を確かめる気でいるだなんてギリギリまで知らない方が良いだろう。
どの道、苦痛と恐怖で支配されるんだ、それなら恐怖が続く時間が短い方が良いだろうからね。
「くっくっく、そうか、妾が好きか」
「うん、(友達として)好きだよ、(歌も)好き」
あー、それにしてもレキアが上機嫌で助かった。
これならお詫びに遊びに連れて行けそうだな。
ホラー短編書いてます 読んで こっちにも感想ちょうだい!
最初は恋人 彼の名前は別の物で グラフゥ・ボーシ でした逆から読めば
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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レキア
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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レナ
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パンドラ
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サマエル
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シロノ
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アリア