ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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恐怖

 シロノの出現、ハティの逃亡、目まぐるしく変わる戦況であっても僕は落ち着いて小太刀を鞘から抜き放ち、海中より船を囲んで出現しようとしている存在の圧を感じ取っていた。

 

「雑魚だけれどもデカいな……」

 

 海の底から迫るにつれて海面に現れる八つの影、船の上の戦力は四つ、お荷物は沢山で此処は海の上。

 そう、たかがそれだけの状況に焦る必要は微塵も存在しないんだ。

 

 まあ、デカいから大規模な技じゃないとしとめるのが面倒…な……なあっ!?

 

「此奴…は……」

 

「ちょちょちょっ!? ヤバいっすよ、若様!」

 

「キュキュイィイイイイイ!?」

 

 勘違いであってくれ、普段は祈りを捧げない神様にさえも請い願い、困った時の神頼みだの受け入れられるか等と言わんばかりに裏切られた。

 僕だけでなく、ツクシやポチでさえも恐怖で震え、胃の奥から込み上げて来る物を感じて……。

 

海面を突き破り水飛沫を撒き散らして現れたのは船を一口で飲み込んでしまいそうな巨体、鋭利な牙がビッシリと生えた口に凶暴そうな鋭い瞳、太陽光を反射して光る全身の鱗は少し濁った緑色で、所々に巨大な吸盤が。

 船を取り囲む巨体の瞳が一斉に僕達を睨む中、少し離れた場所に山を思わせる巨大な肉塊が現れて、発生した波によって船が激しく揺れる。

 

「そ、そんな……」

 

「勘違いであって欲しかったっす……」

 

「キュィイイイイ!?」

 

 

 

 その姿に僕とツクシが青ざめ、ポチが慌ただしく翼を動かす中、響いたのはリアスの叫び声。

 僕達が最も恐れていた物だ。

 

 

 

「やった! 巨大なウツボダコじゃないの! 今日はご馳走ね!」

 

 心底嬉しそうな声、敵が逃げたのも忘れて目の前の大好物に夢中な瞳、ああ、うちの妹は可愛いなあ……。

 ウツボダコを見るだけでトラウマレベルの不味さの極地が蘇り、”君の好物ゲロ吐くレベルの方が千倍マシだよ”って言葉が出そうになるけれど必死で堪える。

 

 好みは人それぞれだし、傷付けたくないし……でも、絶対にアレは食べたくない……いや、アレを口に入れて咀嚼して飲み込む行為を食べるって表現するのは食に関わって来た人、これから関わる人、食の歴史その物への明確な侮辱だ。

 

「ツクシ、ポチ」

 

「っす!」

 

「キュイ!」

 

 それ以上の言葉は要らない、以心伝心……目的は只一つ!

 

 

「じゃあ気合い入れてぶっ倒してご馳走を手に入れるわよ! エイエイオー!」

 

 拳を握り締めて空に向かって突き上げるリアスに合わせて僕とツクシは拳を、ポチが前側を持ち上げて心に決める。

 

 ウツボダコをリアスに入手させずに始末するぞ! ってね。

 

 

 

「リアス、ちょっと暴れたりないから任せてくれないかい? お兄ちゃんからのお願いだよ」

 

「アタイもクヴァイル家のメイドとして経験積んでおきたいし」

 

「キュキューイ!!」

 

「皆、気合い入ってるわね。じゃあ私は人魚を見張っておくから美味しい所を取り損ねないでね?」

 

「ああ、勿論さ」

 

 妹に嘘を吐く事への罪悪感?

 ウツボダコに美味しい所なんて無いし、全然嘘なんかじゃないよね?

 

 

 ……ハティの方はシロノに任せるしかないか。

 直撃こそ避けられたけれどダメージは与えた筈、シロノだって僕に負けてマオ・ニュに殺され掛けて、色々あってから鍛えているみたいだし……。

 

 

「来たっす!」

 

 脚のウツボ一匹一匹に脳味噌があって意思があるのか我先にと迫るウツボ達、それが真上から数百重に及ぶ重力によって凹んだ海面ごと押さえつけられる。

 続いてはポチの風、帆に風を当てて当てて船を動かし、脚の隙間から船を無理矢理脱出させて、僕はその場の重力を重ねた状態を解除した。

 押さえつけられ窪んだ場所が膨れ上がりそうになる中、ウツボダコは海流に翻弄されながらも僕達を追って来るけれど、僕とツクシは真正面から迎え撃つべき飛び出している。

 

「「はあっ!」」

 

 周囲を囲む状態じゃなく、こうして真正面から向かって来るのなら迎撃はし易く……肉片をリアスに回収されなくて済むから、後は回収失敗をどうやって言い訳しようかな?

 振るわれる樹齢数百年の大木並の太さを持つ脚の上を駆け巡りながら切り裂き、二人同時に本体に向かって拳を叩き込めば山ほどの大きさを持つ頭が激しく凹み、僕とツクシは後ろに飛び退いた。

 

 

「ポチ! バラバラに!」

 

「キューィイイイイイイイイ!!」

 

 此処まで僕とツクシだけが戦っていたが、ポチだって見ていただけの訳が無い。

 前衛が足止めをする中、後衛がすべきなのは準備に時間の掛かる大規模魔法。

 普段僕達が詠唱をするなり発動させている魔法とは規模の桁が違い、合図と共に響いた嘶きで練り上げられた魔法が解放された。

 

 最初に異変が現れたのは海面、ウツボダコを中心に渦を巻き、それが高速で規模を拡大させると周囲の海水を巻き込んだ巨大な竜巻となってウツボダコの巨体を舞い上げて振り回す。

 中では水と風の刃による超巨大なフードプロセッサーの如く獲物をズタズタに切り裂き、脚が全て切り離された瞬間に威力を落とさず球状に収縮、内部では全ての刃が暴れ狂い、離れた場所からでも分かる程に毒々しく濁った海水の塊が最後に広範囲に雨のように降り注げばリアスの声が響く。

 

 

「あ~! 何やってるのよ、ポチ! あれだけの大きさなら熟成された味になってたのに!」

 

「キュイ?」

 

 秘技! 何を言っているのか全く分からない振り!

 

 海に降り注ぐ血の雨を見ながらポチをキッと睨むけれど、ポチは怒っている事さえ理解してない感じ……の演技をしてくれているし、多分これで大丈夫だろう。

 後はハティだけれど、視線を向ければ決着は間近。

 

 海を上を仲間を担ぎながら走るハティの動きには精彩を欠いた印象を受けるし、僕とシロノとの連戦、あの爪の攻撃を巨大化させて飛ばす技の疲労も影響を出しているんだろう。

 反面、シロノも怒りからか動きが雑に見えるも互いの距離は確実に狭まり、逃走中で無防備な後頭部に向かって空中を踏みしめたシロノ渾身のフルスイングが叩き込まれ……無いっ!?

 

 

 

「消えたっ!? しかもアレは……転移」

 

 妖精が得意とする似て非なる技術は目的地への道を作り出す、例えるなら台から台にボールを移動したい時に橋になる物を置く、そんな感じだけれど、目的地への道を繋げるには場所の相性やら事前の準備が必要なんだ。

 でも、今のは、転移は台から台へ瞬間移動させる物、事前準備も場所の相性も不要で……それこそ神か神獣の将であるシアバーン・サマエル・ラドゥーンの三人にしか使えない……だったのに、確かにハティは……。

 

 

「……新しい将?」

 

 僕達が変わったなら向こうだって対応を変えるのは分かっていたし体験済みだ。

 それでも今回のは予想を超えてしまっている。

 

 原作の事は気にしない方針で参考程度の予定だったけれど、全く信用しない方が良いのか?

 少なくともストーリーについては既に破綻しているし……。

 

 だってゲーム序盤の時点で主人公であるアリアさんとラスボス兄妹が仲良くしてて、告白されているんだから。

 

 

「若様、どうかしたっすか?」

 

「いや、今は船に戻ろうか」

 

 時間を止めた海の上を歩きながら考えていたらツクシに心配されちゃったみたいだね。

 まあ……今は目の前の一大事を、人魚同士の抗争について考えないと。

 

 

 ほぼ確実に船を襲った人魚はウンディーネ族、しかも神獣が絡んでいるとなると他にも何かがありそうだ。

 もしもの時は……。

 

 

 リアスには知られずに行う仕事について考えを纏めている内に船まで到着すれば、敵を逃がしたからか不機嫌そうなシロノがリアスと言い争いをしていたよ。

 

 

 

「この戦闘隙の脳味噌筋肉!」

 

「なんだ、相変わらず無乳か。首が背中を向いていると思った」

 

「な、何ですってっ! この馬鹿アホ馬鹿アホ馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿アーホ!」

 

 罵倒の語録が余りにも少ない……うん、罵倒の言葉をそんなに知らなくて何が不自由だ?

 だから良いんだよ、別に。

 

 

 

「取り敢えず落ち着いて。ほら、この子達……ウンディーネ族から話を聞かないと」

 

「……ウンディーネ族? 違う、此奴達ウンディーネ族ではないぞ」

 

「……え?」

 

 シロノからもたらされた情報、それは事態が一層深刻なのだと知らせて来た。

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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