ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
クヴァイル家現当主にしてリュボス聖王国宰相であるお祖父様の所有する三頭引きの馬車は当然だけれど普通の馬車じゃない。
貴族の好む装飾の施された煌びやかな車体とは真逆の厳つく頑強そうな軍仕様、並の魔法は弾き返し、車輪も悪路をものともしない特別製。
当然重量は魔法を掛けていても凄まじいしいけれど、馬だって当たり前のように普通じゃないんだ。
パカラパカラなんて普通の音はその蹄からは鳴りはしない、大地を揺らす程の圧力を一歩毎に放ち、雷鳴の如き音が鳴り響く。
普通の馬よりも一回り以上もの体躯に二回りを優に越す四本の脚は、凡百の騎士では名高き名工の作品を持ってしても傷を付けられる程の領域には生涯を費やしても届かぬ頑強な漆黒の皮膚とそれの下から盛り上がった大木を思わせる筋骨を持つ。
皮膚同様に漆黒の鬣は荒々しく逆立ち、瞳は小動物ならば視線が合わさるだけで心臓を停止させてしまいそうな程に鋭い眼光を常時放っていた。
”ヘルホース”、大空の支配者がドラゴンやグリフォンであるならば大地の覇者と呼ぶべき種族、歳を重ね多くの戦歴を重ねた個体であるならば一頭で小国を殲滅させられる存在、それが三頭。
馬車と繋がれてはいるけれど手綱を引いて制御する御者なんて居ない、お祖父様のみが従えられている存在であり、口頭で命じれば理解し迷い無く辿り着く程の知能を有しているからだ。
ドラゴンの様に様々なブレスを吐き出しもせず、グリフォンの様に風を自在に操れもしない、そもそも魔法的な能力は皆無であり、それでもドラゴンやグリフォンと並んで語られる存在。
堅く、速く、重く、大きく、何よりも強い、物理に特化した最強格、出会い敵対すれば……いや、敵対せずとも気性の荒さから視界に入るだけで終わるとされ、故に地獄の馬の意味を持つ名を与えられている。
「相変わらず凄まじいな……」
その呟きはヘルホースにじゃなく、そんな存在を従えているお祖父様への畏怖から来る物だった。
大昔の大戦では三頭のヘルホースの中でも最も強い”アレキサンダー”に跨がり、左右をその兄弟馬である”アレクサンダル”と”イスカンダル”で固めて戦場を駆け抜けたとか。
……それでもって政治面でも恐ろしい知謀を誇るんだから絶対に敵対したくない相手だ。
ぶっちゃけ実の祖父だろうと関わりたくないし、向こうも身内の情とか持ってないからね、絶対に!
唯一の欠点が人としての情に欠けるって所なんだからさ、あの人って。
さて、正直嫌だけれどお出迎えしなくちゃな。
嫌だなー、定期報告とあの魔法のを使う時以外は会いたくないんだよなぁ。
貴族としての手腕とかは尊敬や畏敬以外感じない僕だけれど、血の繋がった家族としての情は向こうから向けられた記憶が無いからか正直薄い。
自分も含めてお祖父様にとって国を守る為の道具、だからこそ原作では一度は光属性だなんて神輿として利用可能な属性を持ったリアスを始末しようとした。
もし力を磨きこうとレナに師事する姿勢を見せなければこっちでも・・・・・・。
この時、僕は気を抜いていた、時の女神ノクス様に力を分けて貰った事で慢心していたのかも知れない。
時間としてはほんの数秒、本来ならば何かあっても立て直せるだけの実力は身に付けていると自負する僕だったけれど、それはあくまで普通の相手の場合。
常識を越えた化け物相手には剰りにも致命的な隙を晒した僕の全身に鋭い刃が突き刺さる。
肉を裂き骨を断ち臓腑を貫き、引き抜かれれば噴き出した血が周囲を赤く染めて、そのまま僕は自ら作り出した血溜まりにうつ伏せに倒れ込んで生涯を終えた……。
「はっ!?」
生き…てる…?
何が起こったんだ?
死んだと自覚した次の瞬間、血ではなく冷や汗で全身をビッショリさせながら我に返る。
体に刃は刺さっていなく、倒れてもいない。
まさか錯覚?
馬車の内部から僕に向かって放たれた威圧だけで死のイメージを叩き付けられ、あまりの強烈さに死んでしまったと思い込んだのか?
氷の刃でも差し込まれたみたいな寒気と早鐘の様に鳴り続ける激しい鼓動、冷や汗は未だに流れ続ける中、馬車は僕達の目の前で動きを止める。
さっきの威圧感は僕にのみほんの一瞬だけ向けられたのだろうが、馬車の内部からでなく面と向かっての物であったならば、それだけで心臓が止まってしまうのではないかと確信に近い物を覚える。
……敵意が僅かに漏れていたのかもね。
出来る事ならば少し話しただけで後は関わりたくないと願うけれど、僕の直感は無理だと無慈悲に告げているんだよね。
比喩でなく相手は数年前から一切老いず衰えずに腕を磨き続けた百戦錬磨……万戦錬磨の魔王様だ、それがわざわざ屋敷に戻って来たと言うだけで嫌な予感しかしないな。
さて、降りて来たら用件を……。
「今から帝国に向かう。準備は済ませてやったから早く乗り込め」
お祖父様は馬車から降りる事も窓から顔を覗かせる事も、孫である僕に挨拶すらさせずに淡々とした口調で用件を、命令を告げる。
何故何どうして、そんな事を尋ねた所で無駄なだけか。
”黙って従え、道中説明する”とか言われるだけだ。
……お祖父様と馬車で帝国まで行くのは正直嫌だなあ。
でも僕には拒否権もなく、下手すれば生存権すら奪われるのだから従う他無いだろう。
横を見ればパンドラが心配そうにハラハラとした様子で僕を見ているけれど、何か言おうとしたので慌てて手で征する。
「了解しました、お祖父様。じゃあ、入って来るよ、皆」
「パンドラ、レナ、お前達もだ。時間を無駄にするな」
……おっと、僕一人で無いのは僥倖、二人を同行させるのは逡巡するけれどお祖父様が二人に命じたのだから意味があるんだろうさ。
冷血で無慈悲で非道、だけれど国の為に動くという点ではリアスやレナスよりも信頼を置くのがお祖父様だ。
不安もあるけれど……二人を連れて行く選択をしてくれた事には感謝するしかないな。
「お祖父様、お久しぶりです。お変わりは御座いませんか?」
「ああ、お前が例の魔法……”ライフ・リープ”を解除せぬのだから変わらん。早く座れ、出るぞ」
お祖父様の馬車も僕が帰路で使った物と同じく広く、三人が並んで座っても十分なスペースを確保出来る大きさのソファーがテーブルを挟んで一対用意されている。
但し、内装には一切の遊び心が存在しない。
客人をもてなすとか、旅を楽しむとかを想定していない必要最低限の、充実しているのは戦闘能力だけの馬車だ。
実際、これも戦場で使っていたらしいしね。
モンスターの異常発生が起きて王都に向かっていた時、正面から突っ込んで挽き潰しながら群れの間を駆け回ったとか。
それにしても……空気が重い。
馬車に入る時に言葉を交わした後、グリフォンの飛行速度に届かんとする勢いで馬車が直走る中、当然のように会話は無い。
定期報告以外でも書面での報告は済ませており、お祖父様と僕は普通の家族の会話をする間柄じゃないからだ。
「……あー、先程はお見苦しい所をお見せしました」
「そうだな。気を抜くな。私が味方とでも思っていたか?」
うん、さっき気を抜いた所に浴びた威圧感は注意の為だと思ったけれど正解だったらしい。
それへの謝罪への反応も予想していたけれど正解だ。
お祖父様の前じゃレナやパンドラと楽しくお喋りなんか出来やしないし、だからといって沈黙は重い、まるでポチが全力でじゃれついて来たのを腕を使わずに支えていた時に匹敵する物理的な重量さえ錯覚していたんだから。
さて、仕方が無いから本題だけ尋ねて後の時間は沈黙を耐えようか。
お祖父様との空間にも慣れ……る気はしないけれど、必要性が有ったとしてもね。
感想欲しいなあ
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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レキア
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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レナ
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パンドラ
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サマエル
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シロノ
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アリア