ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
「ロノス君がお気に入りのケーキ屋のマロンパイを買っていますよ。愛飲している紅茶も有るので食べて下さいね」
マオ・ニュ、ギヌスの民ナミ族最強の戦士にして暗殺者、人当たりが良いし、表情も温厚で基本的には良い人……但しお祖父様に敵対せず、敵対せずとも邪魔だから消すべきだと思われなければの話だけれど。
尚、僕達兄妹を殺す場合は優しく殺した後でお祖父様の身内を殺した罰として自ら死を選ぶってまでは本人から聞かされているんだけれど、神獣同様に忠誠心が重い。
今は馬車の屋根の端に爪先を引っかけて窓から顔を覗かせながら僕の世話を焼いてくれている。
正直言って怖い人……ゲームでは幼い頃に危険視された僕達を消そうとし、レナスと相打ちになった事でリアスが曲がってしまう決定打を打った相手なんだけれど、今年で三十歳になるのに僕より小柄だし、小麦色の肌や赤銅色の髪からアンリの妹と言われても信じてしまいそうだ。
まあ、実際は倍近い年齢なんだけれどね。
「駄目ですよ、ロノス君。今、失礼な事を考えたでしょう?」
「そ、そんな事よりもマオ・ニュは馬車に入らないの?」
「護衛の仕事中なので視野が広い此処が一番なのですよ。雨が降っても全部ナイフで弾けば良いだけですし」
冗談っぽく言ってはいるけれど、降りしきる雨をナイフ二本で弾く彼女の姿は簡単に思い浮かぶし、レナスが同様に拳を真上に突き出した時の圧力で雨を防ぐ姿も同時に浮かんだ、妙なリアリティで。
まあ、そんな風に凄く強くってとんでもなく怖い人ではあるんだけれど、お祖父様が近くに居ても羽目を外さなければ普通に話せる相手なのは助かったかな?
「所で学園生活はどうですか? 臨海学校は散々でしたね。私が護衛として行けていたならば青春を邪魔する連中を全力で皆殺しにしていましたのに。まあ、夏の魔力に当てられた場合には折檻もしていましたけれど」
僕がパンドラを服を着たままノーパン状態にしたのを見抜いてから微妙に気まずい感じだけれど、僕が悪いから…‥まあ、パンドラが気が付いてないのは幸いだ。
「マオ・ニュの折檻か、ちょっと恐いな」
「大丈夫。レナスさんみたいに手は出しません。そういった躾は乳母である彼女の仕事で、私は名付け親として矯正すべく苦言を呈するだけですから。ええ、御館様の命令でなくば二人には手を出しません。……変な意味で手を出そうとする悪い子は失踪して貰う場合が有りますけれど……なーんちゃって」
いや、眼が笑っていないから笑えない、さっきの年齢関連の時も紫色の眼が笑っていなかったよね……。
「ふふふ、そんな風に怯えなくても大丈夫ですよ、パンドラちゃん。ロノス君達のお母さんは友人でしたし、私にとって二人は実の子みたいに可愛いからちょっと過保護になっちゃいますが、貴女が将来クヴァイル家を肩に背負うのは分かっていますから」
「は、はあ……」
「ああ、奴が男だった場合、結婚するのは貴様だったな」
そう、レナスが乳母として僕達を育てて鍛えてくれたのと同じく、マオ・ニュも僕達の名付けをする位に大きく関わっていたし、お祖父様が思い出したように呟いた通り、母や叔母さん達の誰かが男だった場合、多分マオ・ニュが結婚していたのだろう。
その場合、年齢が年齢だから僕達とは数歳離れていたね。
「御館様のご令嬢達とは幼い頃から仲良しでした。一緒に遊んだのは良い思い出ですよ」
いや、まあ、お祖父様に反逆を企てていた両親を殺したのもマオ・ニュらしいけれど。
その際もゴタゴタがあってマオ・ニュが一度は自殺しかけたとか。
しみじみと楽しそうに語るマオ・ニュが本当に恐ろしい、貴族社会じゃ上っ面だけこんな風にするのは珍しくは無いけれど、彼女の方は本心で言っているんだから。
パンドラも立場が立場だから両親関連については知っているのか目を逸らしているし……。
「ああ、この機会に聞きたかったんだけれど僕達の名前の由来って?」
今まで聞いていなかったけれど、ちょっと気になっていた事だ。
僕が時属性って分かったのは八歳、時の女神ノクス様から取ったってのは有り得ないだろうし……。
あれ? マオ・ニュ、眼だけじゃなく顔を逸らしてるけれど何故だろう?
「怪しい。マオ・ニュ、何か隠してるよね?」
「何の事でしょう。それよりも紅茶のお代わりは要りませんか?」
「未だカップに残ってるよ。全く、何を誤魔化す気なのやら」
もう不自然な程に目を合わせようとしないマオ・ニュに問いかけるけれど下手くそな口笛を吹いたり露骨に話を逸らしたり、”死神”とまで呼ばれる人の姿じゃないよね。
「「……」」
暫しの沈黙、だけれども話してくれそうな気配は無いし、お祖父様なら知っているだろうけれど書類を読み終えた後は腕を組んで静かに眼を閉じているから話し掛けるのに抵抗が。
マオ・ニュ相手じゃ強気に出て聞き出すのは不可能なので悩んでいた時、その沈黙を破る一声がレナから放たれた。
「私、知っていますよ。母様がポロッと漏らしましたので」
「黙っていてと言ったのに何やってるんですか、レナスは……」
口止めする程の内容なのか、知りたいような恐いような複雑な気分。
でも、命名の理由を隠す理由が今は知りたい。
だってマオ・ニュが焦る程の内容なんだから!
「レナちゃん、喋っちゃ駄目ですからね? 私からのお願いです」
珍しく焦り顔のマオ・ニュ、何とか口止めする気みたいだ。
”こうなれば口封じです”とか強硬手段には流石に出ないだろうし、多分。
対するレナは接客モード、クールで真面目な有能メイドを演じているし、これは勝負あったか。
「しかし、若様の命令が有れば話さない訳にも行かないでしょう? ええ、マオ・ニュ様のお願いなら聞き届けたいのですが、散々釘を刺された相手ですし」
釘を刺した相手(比喩&物理的)に強気になれるレナは強く、マオ・ニュは”ぐぬぬ~”って感じの表情だ。
何だかんだでレナは頼りになるなあ。
「レナちゃん、黙っているなら一つお願い聞きますよ?」
「じゃあ、今晩は私が何をしても知らん顔でお願いします」
「交渉成立ですね」
前言撤回、頼りにならない!
何か舌なめずりをしながら僕の方を見ているし、マオ・ニュとは別ベクトルに恐いけれど、どうすれば良いのか教えてよ、神様!
「ほらほら、退屈な話は忘れて面白い芸でも見せてあげましょう。先程私は気配を周囲と同化させて認識を阻害しましたけれど、こういう使い道も有るのですよ、あの技術って」
マオ・ニュはよく見ていろとばかりに紅茶の入ったポットを手に持ち、急にそれが手首から先と共に消え去った。
体の一部だけ消せるのかと驚いていたら、今度は手に持ったポットのみ、次に体のあっちこっちを消したり現したり、最後は普段着である燕尾服の上着の右半分だけを消し去って終わったんだけれど、まさか身に付けた物の気配だけを同化するだなんて…‥。
「その技術が有れば露出し放題ですね。路地裏で人が来た時だけ服を消すとか」
おおっと! まさかマオ・ニュ相手にセクハラをするなんて凄いな、レナは。
憧れも関心もしないけれど、驚きはしよう。
「いやいや、嫁入り前の身でその様な破廉恥な真似はしませんし、元からそんな趣味は無いので! 変な噂流さないように、釘、刺しておきますか?」
「どうせ直ぐに治ると言っても嫁入り前の身なのでご容赦を」
「レナちゃんは嫁入り前の自覚があるならもう少し慎みを持ってですね…‥。おや、もう街が見えて来ましたね。では…‥今夜の宿にゴミ共が潜んでいるなら発見次第掃除して来ますね」
やや物騒な会話をしている最中にアマーラ帝国内で今夜宿泊予定の街に近付いたらしく、マオ・ニュは姿を消して居なくなる。
……此処で”流石に小皺が出来る頃”とか言ってたら聞かれていそうなのが恐いよね。
「あっ、招待されたパーティーって主催者側の人間も一人招待客を連れて来るらしいけれど、ネーシャは誰にするんだろう」
連れて来るとすれば僕に顔合わせしておきたい相手だろう。
パーティーだからと一切気は抜けないって事か…‥。
感想久々来た
もう漫画発注しちゃおうか
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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夜鶴
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ハティ
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シロノ
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アリア