ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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漫画発注しちゃったよ


閑話 破滅への道程

アマーラ帝国首都ガンダーラ、”黄金の都”という呼び名に相応しい金色に輝く城はアラビアンナイトの世界に出て来そうな豪華絢爛な物であり、その地に住まう者達の住居も立派な物が揃っている。

 皇帝である”カーリー・アマーラ”の手腕なのか貧民が集う場所、所謂スラム街の様な物は存在せず、別に貧しい者を見栄えの為に追い出している訳ではない。

 貧しい者への職業斡旋や教育、国営の安価な借家も用意されているのだが……少し離れた場所にある別の都市は違った。

 

 

 

 

「糞っ! 何故だ何故だ何故だ何故だ何故だっ!」

 

 その都市に存在する城は皇帝が住まう城と比べても引けを取らない程に立派であり、多少だが真新しい。

 いや、皇帝の城でも金色に輝いていない場所はあるのだが、この城は全面に金箔を張り付け、屋根や塀にも金の細工物を幾つも飾っている。

 

 実に成金趣味であり、無理にでも権威を主張しようとする痛々しさすら感じさせる城であった。

 一体どれだけの血税を浪費したのか、無駄な装飾一つでどれだけの貧しき者の腹を満たし、病の者に薬を与える事が出来ただろうか。

 城主の目的は裏目に出て、罪悪の象徴でしかない。

 

 その様に豪華絢爛と称するよりは見栄を張り、その下の醜い何かを覆い隠したいという印象を与える城の主人は今、朝から酒を浴びるように飲みながらその場に居ない誰かへの憎悪を唾液と共に撒き散らしていた。

 

「何故誰も私を認めぬ! 何故私を褒め称えぬ! あれだけの金を国中にばらまいてやったというにも関わらずに!」

 

 服装は城の主という立場に相応しいものの、それを着る男は城同様に虚飾にまみれた見窄らしい印象の持ち主。

 周囲に転がる空き瓶は平民の半年分の給金でも足りない程に高価であり、皿の上には食い散らかされたご馳走の山。

 だが、自堕落が服を着て歩いているかのような男であるにも関わらず肥え太る事はなく、逆に頬が痩ける程に病的な細身であり、爛々と血走った目の周囲は窪んだ上で炭を塗りたくったような隈。

 ボサボサのヒゲは伸びっぱなしのもみ上げと繋がり、シラミが湧いていそうな程に汚らしく脂っぽい。

 歯垢まみれの歯が並ぶ口からも内臓に何か異変が起きているのではと疑念を抱かせる悪臭が漂い、城主が持つべき覇気も品位も感じられない。

 

 服装ばかりが豪華で実際は見るに耐えない状態、それは家臣さえも彼に抱く印象であり、彼が支配する街に人の姿を与えたのかのよう。

 下品なまでに飾り付けられた城や大通りの建物こそ立派だが、裏通りに入り込めばボロ切れとボロ板を張り合わせたような小屋とも呼べない家に住むものさえ珍しくないスラムが広がり、決して汚点が外に漏れ出ぬようにと街の周囲を囲んだ巨大な壁はスラム街に降り注いでいた筈の日光さえ遮る。

 

 無論、その様な事で隠し通せる筈もなく、醜い内実を周囲を必須に飾りたてて隠せた気でいる大間抜けだと人々は口を揃えて噂し、その様な街だからこそ男が城主に相応しいのだと嘲笑した。

 

 そんな彼の名前は”ラーパタ・アマーラ”、現皇帝の従兄弟にあたる人物であった。

 

 

 

 ……未だ先々代の皇帝が現役だった頃、ラーパタは神童でこそないものの将来を期待される程には優秀であった。

 努力は報われ、少しおまけを貰った位の結果が出る。

 秀才という奴だろうか? 兎に角、今の自堕落で醜悪な姿などは想像できず、今の様な姿になると予測されれば周囲の者が憤慨して否定しただろう。

 

 

 同時に彼が皇帝に選ばれるという事を誰かが予測しても否定される程にカーリーが神童だったと、それだけの話だ。

 

 最初は羨望と尊敬、比較が嘲笑に代わる頃には嫉妬と憎悪に変わり、目映い上ばかりを見ていたら何時しか足下で必死に生きる民の事は認識出来なくなった。

 その結果が現状……いや、それでも少し前までは僅かにでも皇族の一員としての義務感の欠片程度は手放してはいなかった。

 

 半歩踏みとどまっていた奈落の前、其処から転がり落ちたのは極最近……怪しい商人の甘言に乗った頃からだ。

 

 神童に対する秀才の抱いた対抗心はやがて焦燥感へとなり、それが諦念や己への失望へと変わってしまっても、最後に残った矜持が怠惰に堕ちる事だけは食い止めていた。

 どれだけ皇帝への賞賛を耳にし、己を比較して嘲笑する声を耳にしてもすべき事だけは行っていた。

 

 だが、出来不出来は別としても終わらせていた仕事は投げ出され、今の様に怠慢な日々を送り病的な容貌へとなって行く日々、当然ながら矯正を試みる者も居たのだが……。

 

 

 

「いい加減にしろ! 野心に溢れ、皇帝を越えてやると息巻いていたお前は何処に行ったんだ!」

 

 幼い頃から側に居た騎士は何度も男を立ち直らせようと厳しい言葉を投げかけた。

 ラーパタが神童と比べられ卑下されても諦めなかった頃、共に上を目指してそれぞれの分野で努力していた仲、だからこそ見ていられなかったのだ。

 

 ……どうなったのか? 主に無礼を働いたとして地方に追放された。

 

「目を覚ましなさい! それでも誇り高いアマーラ帝国家の者ですか!」

 

 男が神童でなくとも秀才ではあると認め、支えてきた母もこの時は彼を叱った、

 無理に監禁同然の隠居の身に。

 

 

 幼い頃から知っている老執事も、妻も、誰も彼もが彼を心配し現状を不満に思い、元の彼を取り戻そうとして……今は誰も彼の側には居ない。

 鬱陶しいと彼が遠ざけたのだ。

 

 いや、正確に言うならば近くに居ないのではなく……既にこの世に居ない、仲には行方不明で生死が確認されていない者も居るが、ラーパタはそれを探そうともせずに過ごし、彼が何かしらの方法で葬ったのではないかと疑念を抱く者も存在するが、相手は皇族であり堂々と追求は出来はしない。

 

 出来る者が居るとすれば…‥。

 

 

 その様な事もあり、彼に近付く者はマトモな者から減っていき、妙に金回りが良い事からおこぼれ目当てで近付く者も最初は居たものの、魂胆を見抜かれ自分を馬鹿にしていると処罰された。

 今や使用人も最低限しか近寄らず、この荒れた部屋の中にはラーパタ以外の人物の姿は見られない。

 酒を求める怒鳴り声も誰の耳にも届きはしないのだ。

 

 

「酒カ。他ニハ何ガ欲シイ? 財宝? ゴ馳走?」

 

 にも関わらず聞こえた声、被り物でもした状態で発せられたような籠もった声であり、少し嗄れた男の物だった。

 

「全部だ! 全部寄越せ!」

 

 その声が発せられているのは机の上に山積みに重ねられた空き皿の隙間に立つ人形、ネペンテス商会から購入したという物。

 烏帽子等の平安貴族に似た服を着せられており、顔の部分は造形だけされて目鼻が描かれていないのっぺりとしたマネキンみたいな不完全な出来の品だが、声の発生源なのは間違い無く、声が聞こえる度に頭が微かに揺れていた。

 

「分カッタ。受ケトレ」

 

 空き皿と空き瓶が姿を消し、代わりに現れたのはご馳走の山と栓が抜かれてもいない状態の酒の瓶、そして部屋中に現れた金銀財宝の輝きが戸や窓を閉め切った事で空気が淀んだ室内を照らす。

 

 

 

「ははっ、はははははっ! 最高だ! 最高の気分だ! これを再びばらまいてやれば愚民とて私の偉大さを認めるだろうな! ……後は」

 

「権力……カ?」

 

 ヨロヨロフラフラと立ち上がって高笑いを上げるラーパタが最後に濁した言葉の続きを言い当てれば彼は力弱く頷く。

 

 

 

「そうだ! あの皇帝を殺し、平凡な次期皇帝を抹殺した後で…‥ヴァティ商会の娘を私の物にすれば良い。邪魔者は全部消してやる!」

 

 失望と怠惰の日々の果てに失われた野心を取り戻し笑うラーパタ、彼は気が付いていない事が二つ。

 

 

 一つ、人形に願いを叶えて貰う前よりも己の生気が失われている事

 

 二つ、顔に僅かな凹凸しかないにも関わらず人形が嗤っていた事を…‥。

 

 

 

 

 

「頼んだぞ……えーと」

 

 

「”ヒナガミ”……ダ。予想以上ニ知能ガ下ガッタナ……」

 

 




ブクマ待ってます

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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