ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
一見すれば一人の美少女を取り合う男二人(但し二人揃って相手にされていない)のにらみ合いなんだけれど、実際の所はシャレにならない事態を引き起こしかねない。
「何の真似だ、アイザック。俺はリアスと一緒に登校する為に待っていた。其処に居られては邪魔だ」
「それは僕の台詞だよ、ルクス。だ、大体君は彼女の事を嫌っている様に見えたけれど?」
「……否定がしないが、俺は彼奴と戦い、そして勇姿を目にして間違いに気が付いた。例え身内であってもリアスとあの女は別人だ」
皇帝の弟であるアイザックと王子であるルクスの二人はちょっと面倒だ。
何せアイザックの父親はルクスの母親が酩酊して引き起こした事故の犠牲者で、その事が関係してか気弱な筈のアイザックが強気に出ているし、身内に狙われて不遇の扱いを受けている上に戦う力も弱い彼でも第一王子な上にそれなりに戦える(学生の範疇で)ルクスと渡り合えているんだから大した物だ。
まあ、腰が引けているんだろうし、お前とリアスの仲に僕が賛成する事は絶対に無いんだからな。
……さて、そろそろ介入する頃合いかな?
どうも止めに入るタイミングが分からなかったけれど、二人は未だ良いとして、王国と帝国の戦争が尾を引いているのか配下の人達は限界が近いように見える。
特にアイザック側なんて立場からして左遷に近いだろうし不満も溜まって居るんだろう。
主同士の睨み合いが部下の乱闘にでも発展したら面倒だし、前提としてリアスが嫌がっているんだから馬鹿馬鹿しいし、見ていて腹が立って来た。
「ほら、こんな街中で……あっ」
上空から向かって来る気配を察知した僕は数歩後ろに下がり、争っていて警戒が疎かになっていた双方には気が付いた様子も無い。
そのまま二台の馬車の間に目掛け、小規模な落雷が発生した。
「なっ!?」
「ひぇっ!?」
雲一つ無い蒼天からの落雷に意表を突かれたルクスは咄嗟に上空に視線を向け、アイザックは頭を抱えてうずくまる。
そして僕も空を見つめ、高速で降りて来る相手を視線で追っていた。
バサバサと風を翼で叩く音と共に姿を見せたのは青紫のモコモコとした体毛を持つドラゴンと、その背に乗った学園の男子制服を来た人物。
ワインレッドの髪をセミロングにした中性的な顔立ちで、首のチョーカーはドラゴンと同じ青紫だ。
威風堂々とした立ち振る舞いで凛とした表情を浮かべ、絶対的な自信を感じさせる。
……但し背はちょっと低い。
僕が少し高い位だけれど、多分頭一つ半は違うんじゃないのかな?
「何をしているのかと思いきや、王族ともあろう者達が街中で争うとは情けない。恥を知れ!」
突然の登場に誰もが視線を向ける中での一喝は周囲に響き、荒そうになりかねた空気が霧散している。
細身で背の小さい人は侮られ易いそうだけれど、こうして見ていると例外は存在するって分かるよ。
ルクスとアイザックは見知っている様子だけれど、周囲のお供には顔を知られていない様子だ。
でも、緊迫の状況で少し派手過ぎな登場をするなり主を一喝した相手が誰なのか問い質す事すら躊躇われる中、僕だけが動いて近付いた。
「やあ。久し振りだね。具体的に言うと前回の大会の表彰台以来かな? 元気そうじゃないか、アンリ」
「……ロノス! 久し振りじゃないか!」
「おいおい、今気が付いたの? 友達なのに酷いなぁ。まあ、入学前に風邪を引いてしまったって聞いたから心配したんだけれど元気そうで何よりだよ。タマも久し振り」
「ピー!」
この派手な登場をしたのはご覧の通りに僕の数少ない友人の一人で名前は”アンリ・ヒージャス”。周辺四カ国の一つであるワーダエ共和国の所属で今みたいにドラゴンを使役して乗りこなす名門一族の出身だ。
いやいやいやっ!? 流石に自分で言う程に少なくは無い筈だ。
例えば新入生だけでもフリートとか、チェルシーの婚約者とか、俺様フラフープとか、アース王国の大公家の次期当主とか、赤髪オールバックで金色のアクセサリーを大量に身にまとう派手な大男とか……良し! 結構居るね!
アンリが僕に近付いて拳を突き出して来たので僕も同じく拳を突き出して軽くぶつけ合わせる。
うんうん、友達ってのは良いものだよ。
家同士の付き合いとして交流がある人は大勢居るけれど、迷い無く友達って言える関係は限られているし、だからこそ大切なんだ。
「じゃあアンリも今から通学かい? いや、タマを屋敷に預けなくちゃ駄目なのかな?」
「いや、僕は寮なんだけれど、風邪が治った後もタマを王国に連れ込むのに手続きが長引いてな。今こうして漸く到着したんだ。……本当はさっさと行きたいんだけれど、少しやる事が有るから遅れてしまうな。後でノート見せてくれ」
「それは良いけれど、やる事って……成る程」
決まりが悪そうにアンリが指差したのは先程の落雷によって焼け焦げて一部が割れた舗装済みの地面。一触即発だったから止めたんだろうけれど流石に派手にやり過ぎか……。
「取り敢えず事情説明して後処理をしなくては。……父に怒られるな。小遣いを減らされてしまう」
「ああ、リアスも派手にやってお説教と小遣い減額のコンボを食らっているよ。……じゃあ再会を祝して話をしていたいけれど急がないと僕達も遅刻するから。また学園でね」
「ああ、学園で会おう。……多分昼には終わるから」
遠くから警備隊らしき人達が慌てて向かって来ているし、遠目に見る学園の時計の針は登校時間が迫っているのを指し示している。
慌てて馬車に飛び乗れば、他の二人も今回は休戦らしく馬車に乗っているけれど多分休み時間に絡んで来るんだろうな……。
「あの人って確かお兄様が趣味で参加しているレースで出会ったのよね? えっと、乗っているのはドラゴン……よね?」
「うん、そうだよ。どう見てもこの世界の一般的なドラゴンの姿じゃないか。ちなみに雷を操るサンダードラゴンだね」
「……良いなぁ。私もお兄様みたいに何か飼おうかしら? ポチはあくまでお兄様を主としていてるし」
「ペットを育てるのは大変だよ?」
タマの姿に怯え腰になっている警備隊の姿を眺めながらリアスが羨ましそうに呟いた。
確かにポチが一番懐いて居るのは僕だし、リアスだって自分に凄く懐いたペット、贅沢を言えばグリフォンやドラゴンみたいにフワフワモコモコの体毛を持っていて乗れるサイズが良いんだろうけれど、躾とか大変だからね?
鳥とかの野生動物に餌だけやって”世話をしている”って口にする人は居るけれど、他の全般含めて”世話”だから。
でも、リアスがドラゴンを羨ましいって思う気持ちは半分だけ理解しよう。
「……僕はトカゲみたいな方のドラゴンが良かったなぁ。グリフォンの方が格好良いし最高だけどさ」
僕が前世のゲームや漫画で知っているドラゴンとこの世界のドラゴンの姿は大きく異なり、寧ろ別の動物に酷似している。
「何度見ても……ペンギンだよね?」
「ええ、ペンギンね。良いわね。小さいのを抱っこしたい。ドラゴンだけあって小さくても凶暴だけど」
「まあ、普通に災害クラスのも居るし……僕が戦ったシアバーンの仲間にもドラゴンが居たからね」
あんなに可愛い見た目でも中身と性能は僕達が知っているドラゴンだ。
種類毎に炎や雷、毒を吐き、グリフォンと並ぶ空の覇者であり、町や村が襲われれば壊滅的な被害が出て、太古には国を滅ぼした”ファブニール”って名前の伝説のドラゴン……そのシアバーンの仲間の一体も存在する。
うん、普通に戦いたくない相手だよね。
「これは本格的に知識を取り戻さないと……」
ゲームではプレイヤーが動かさないと時間も動かないけれど、現実では違う。
さて、帝国の例のダンジョンに向かうには……。
「アイザックの協力……は駄目だな。彼の立場からして余計なトラブルがやって来る。下手すればお祖父様に消されかねないレベルのね……」
ゲームの知識だけには頼っていられない。幸い相手が”シアバーン”の名前を名乗ったし、それを理由に調べられるだけ調べるとして……。
「今はアリアさんの事だよなぁ……」
夢の中で彼女は僕を恋人にしていたし、小説か何かの影響での偶然って可能性も有るけれど、僕はもしかしたら彼女に恋をし始めている可能性だって有るし、ちょっと顔を合わせるのが恥ずかしい……。
”主人公”ではなく”個人”としての彼女と向き合うと決めた事で発生したこの問題を僕はどうやって解決すべきなのだろうか……。
「フリートに頼ろうか。こんな時こそ男友達の出番だ」
パンダは出さないので地の文にツッコんでくれる人が作中には居ません
ポチは人型にはならないのでご安心を ペットポジションはペットだけで良いです
絵を発注 誰かはお楽しみ
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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ネーシャ
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