ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
皇帝主催の優雅なパーティー、各国から多くの王侯貴族が集まって庭師によって整えられていた庭を見つめて息を飲む。
そう、整えられ……ていた。
「……」
庭の端の方、僕の場所からならギリギリ見える場所でゴブリンの庭師らしい数名が唖然とした表情で口をあんぐり開け、僅かに震えて腐汁が広がって行く庭を眺めている。
あれ? もしかして泣いていない? 泣いているよね?
「臭っ! 流石に七巻半は不味かったか……」
ドロシーは刃に付着した血を払い鞘に納めながら流れ出したマウンテンバイソンの死体から離れているけれど、父親の方は胃の辺りを押さえて壁に手を付いて深い溜め息を吐き出していた。
さっきから風に乗って腐敗臭が流れ込んで来るし、鼻が曲がりそうだ。
え? 僕、こんな状況で婚約の正式発表をするのか?
「お祖父様、こんな状況ですし」
「構わん」
許可は得たし、マウンテンバイソンの死体の時を戻す。
命を戻す事は出来ない、だけれど毒が死体に染み込んで腐らせる直前まで戻し、同時に会場に流れ込んだ腐敗臭は気流を巻き戻して追い出せば漸く落ち着ける状況だ。
他の招待客も落ち着いた様子を見せているんだけれど、僕としてはロザリーが与えたインパクトの大きさは助かるんだよね。
チラッとアリアさんの姿を見れば気が付いて笑顔を向けて来る。
これは本人も分かっているな……うん。
「……うちの娘が迷惑を掛けたな」
「いえ、問題有りませんので」
ラヴンズ王も謝っては来たんだけれど、本当に僕としては問題ないんだ。
カーリー皇帝のお陰で薄らいだアリアさんへの恐怖はグロい死体を見せた二匹目で更に薄らいだのは周りの会話からも分かる。
「何と言うか凄まじかったな……」
「アレと比べると闇属性の方は凄いだけだったと思うよ。逆に妖刀すら使わずマウンテンバイソンを一撃で倒すとは……」
「既にクヴァイル家と皇帝陛下側に取り込まれているのが惜しい。もう少し早ければ……」
いやいや、何を調子良いことを言っているんだか。
彼女の強さを最初に見た時の反応は見ていたぞ、僕達との繋がりがあってお膳立てをしたからこそ評価が出来たんじゃないか。
そうでなければ恐ろしい相手としか思わなかっただろうに……。
……どちらにしても此処からだ、此処からがアリアさんやプルートといった闇属性の立場が変わり始める。
禁忌の力だと忌み嫌いながらも、同時に侮られて幾ら迫害しても大丈夫だと思われて来た闇属性の威力をこうして目にする事で動き出す連中が出て来る。
「貴様が選んだ道だ」
僕が何も言わずともお祖父様が静かに呟いて警告をして来た。
そうだ、これから起きるであろう勧誘や更なる排斥の為の裏工作、それから守るのが取り込む事を決め、その力を知らしめる事にした僕の義務。
何よりも引き込んだなら身内、そして身内を守る責任が一番大きいのが当主なんだ。
それに個人的にも彼女自身を守ってあげたいって思うし……。
だって彼女は僕にとって大切な存在だ、彼女だけがって言えないのは悪いと思うけれど、複数の中の一人だとしてもアリアさんが大事な女性なのは変わりがないんだから。
「さて、他の余興は後に回すとして、今より重要な発表を行うとしよう。ロノス殿、ネーシャと共に壇上に来るように」
「じゃあ、行こうか、ネーシャ」
「はい、ロノス様!」
予定が来るって内心では少しくらいは苛立っているだろうにカーリー皇帝はそんな事をおくびにも出さない。
この辺りが経験の違いなのかと憧れすら感じながら僕は別の大切な人であるネーシャの手を取った。
手を繋ぎ、足が不自由な彼女に合わせてゆっくりと壇上へと向かった僕達に集まる視線。
今更ながらアルフレッドについて話題に出す人が誰も居ないのは皇帝直々の命令なのか、それとも誰もが居なかった扱いをしても構わないと認識しているのか、皇帝の弟だというのに……。
正直言って親しみを覚える理由もなく、逆に出会って直ぐにリアスに求婚した彼奴は嫌いだけれど、それとこれとは別だ。
足が不自由になったからと実の親に血の繋がりさえも抹消されたネーシャもそうだけれど、アマーラ帝国の理念である実力主義の暗部を目にした気分だな。
「さて、既に存じている者も多いだろうが、ヴァティ商会より養女に迎えたネーシャがクヴァイル家に嫁ぐ事が決定した。此処に居る皆には暖かい気持ちで祝福してやって欲しい」
カーリー皇帝の言葉を聞いて次々に祝いの言葉が投げ掛けられる、ロザリーはムスッとしているけれど最後尾に居るから壇上に居る一部にしか見られていない辺り計算して……あっ、父親には気付かれて頬を引っ張られているや。
自由だな、彼女。
「相変わらずですわね、ロザリーったら。……まあ、他の連中よりはマシなのでしょうけれども」
拍手と祝いの言葉にかき消されて僕にしか聞こえない程度の大きさの声で(尚、マオ・ニュとお祖父様にはちゃんと聞こえている。離れているにも関わらずにだ)ネーシャは呆れと嘲笑を言葉に乗せていた。
僕達の結婚によって得られる利益を考える者、何かしらの繋がりを欲する者、この結婚が不利益になる者、顔と言葉では祝っているけれど、内心を隠せていないのがチラホラと。
正直、普通に祝っているようで内面は別物だって相手の方が厄介だし、祝ってくれていそうな相手のみを要警戒、顔に出しちゃっている間抜けは顔だけ覚えていれば良いだろう。
「三流に関しては私の方で何時でも潰せる準備は整えておきましょう。ロノス様は警戒すべき相手のみ注視をお願い致しますわ」
「そうかい? 助かるよ」
「これも貴族の妻の役目ですから。……それでロノス様、帝国ではこの様に婚姻発表の場でキスをする事が有りますの。ええ、必ずする訳では有りませんが……」
その事なら既に調べている。
既に存在はしているけれど実行するのは物好き辺り、したかしないかの言及もされない程度の物だけれど、僕はあえて物好きになる事にした。
言葉の途中でネーシャの肩を抱き寄せて唇を重ねる。
直ぐに離せば視界に入ったのは動揺が混じった赤面のネーシャ。
そっと唇を指先で押さえた彼女は拗ねた様子で僕を睨む。
「……もう。いきなりだなんて。レディには心の準備が必要でしてよ? だから仕返しですわ」
可愛らしい仕草に見入ってしまった僕への不意打ち、まさかのキスのお返し。
僕がした時よりも長い時間、ネーシャは僕と唇を重ねていた。
まあ、婚姻発表は成功したといって良いだろう、ロザリーが憤死しそうなのは放置して。
でも、ちょっと予想外の言葉がカーリー皇帝の口から出たんだよね。
「それでは愛し合う二人には試練を受けて貰う事にしよう」
果たして何をやらせる気なのやら。
でも、どんな試練だろうと僕はネーシャを守りきらないと……。
十章 完!
メインヒロインの影が薄い
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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レキア
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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レナ
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パンドラ
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サマエル
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シロノ
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アリア