ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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寧ろ読んだ事が無い

 国によって刑罰は違うけれど、帝国では悪事の度合いによって決まるんだ。

 斬首や絞首、基本的に公開処刑なんて事は無いらしい、見せ物にする必要は無いって理由らしい。

 

 

「……あの光景を見るのは久し振りですわ。相変わらず容赦が無い」

 

 壁に磔にされたメイドの姿を目にしてもネーシャの声は平坦で特に動揺している様子は無かった、足腰は立たないらしいから僕に掴まりながらだったけれど。

 

「現行犯……だったっけ? 指示した相手は吐かせなくて良いのかい?」

 

 斬首や絞首と磔の違い、それは皇帝が直に判断して裁判をすっ飛ばして行えるという事、但し後から冤罪だった場合は皇帝の権威に繋がって一族内での権力抗争に悪影響が出てしまう。

 臆病者だとか人を信用しないとかね。

 

 その容疑は密偵や暗殺……らしいんだけれど、僕が知るのは此処までだ。

 見せしめにしても単独犯でも無いだろうに殺してしまうのは疑問なんだし、無理だと思って尋ねてもネーシャだって困り顔だ。

 

 

 これ以上の情報は聞き出せないか、ネーシャの表情からそれを察した僕は

両肩と太股を杭のような物で貫かれているメイドに視線を向けた。

 全体的に地味で印象に残りにくい顔立ち、前髪を垂らしているからか顔も分かり辛かった。

 そんな彼女は何とか身動ぎして磔の状態から脱しようと腕を動かして杭に触れようとするも指は杭に触れたと思ったら中に入り込んで行く。

 

「水の杭か。あれだけ指を動かしているのに体積が減らないって事は周囲の水分を供給してるのかな? 本人が近くに居ないのに効果が続くってかなりの高等技術だけれどさ」

 

「恐らくはそうでしょう。私は変異属性で氷を扱うので真っ当な水魔法については書物で学ぶ程度しか存じておりませんが、実力主義の帝国を率いるのですから可能でしょう」

 

 そう、彼女を磔にしているのは水の杭だ。

 本物の杭のように固体として体を貫いて固定しているけれど、外部からの干渉には液体の性質を発揮している。

 

「本人から遠く離れれば魔法の効果が薄まるのにあの効果は驚きだな」

 

 僕達が話す間、無色透明だった杭に起きるのは徐々に赤く濁っていくっていう変化。

 貫通して栓になっている部分から僅かづつ血が入り込んでいっているんだ。

 

「っっっっっっ!」

 

 舌を噛んで自害されないようにしているからか声は聞こえないけれど、ジワジワと確実に迫る死に彼女が怯えているのが見て取れる。

 その辺の訓練がまだ終わってなかったのか、そもそも死を厭わない様な集団の一員ではなかったのか、判断材料が不足しているけれど……。

 

 

 

「行こうか、ネーシャ」

 

「ええ、参りましょう」

 

 これ以上は見ていても仕方が無いし、見ていて面白い物じゃない。

 目があって助けを求める目を向けられた気がするけれど、幾ら何でも刺客としてやって来たのが助けを求める筈がない……助けるような馬鹿だとも思われてたりするのかな?

 

 そうだったら屈辱的なんだけれど、そんな馬鹿だったとしても何も出来る訳もなく、そもそも何もする気は無い。

 最後、窓を閉める時に赤く濁った杭から赤い液体が排出されて澄み切った物に戻るのを見た後でカーテンを閉めた。

 

 

「あんな風に少しずつ血を抜き取るのか……えっぐ」

 

「それにしても奇妙な相手でしたわね。冤罪だった可能性が有りますが、本当に刺客だった場合はお粗末様過ぎて、それこそ演技とすら思える程ですわよ」

 

「操られているとか、かなあ? まあ、その辺は調べる人が調べるだろうね。……さて」

 

 足腰が立たないらしいし、何も言わずに抱き上げる。

 

 あはは、面食らって声も出せない状況だよ、可愛いな。

 

 

「ロ~ノ~ス~さ~ま~!」

 

 数秒後、我に返ったネーシャがポカポカと殴って来たけれど可愛いとしか思えないし、このまま暫くは殴られていようかな?

 なーんてね。

 

 

 

「ゴメンね、君が驚いたり恥ずかしがったりする姿が可愛かったし、間近で見たいとおもったんだ。じゃあ、このまま外に行く?」

 

「出来る訳が無いでしょう! ……ちょっとベッドに降ろして下さいませ」

 

「うん? ベッド……エッチな事は無しじゃなかった?」

 

「ええ、無しですわ。ロノス様はベッドじゃなくって床でお願い致しますね」

 

「……はい」

 

 やっべ、調子に乗りすぎた。

 

 ニコニコと笑いながら床を指し示すネーシャは一見すると機嫌が良さそうだ、一見したらなだけで確実に怒っている見た目だけの笑顔だと僕は一瞬で察して逆らっては駄目だと悟る。

 

 座り方を指定されていないのにベッドに座るネーシャの前で正座して沙汰の時を待つ。

 この状況で堂々と座れる程に豪胆じゃないしね。

 

 

 僕の前でベッドに座り、腕を組みながら笑顔で僕を威圧する。

 笑顔の圧力とかメイド長を彷彿とさせるんだよなあ。

 

 スカートの中は見えそうで見えない状態だし、この状況だと見えてもジロジロ見てはならない。

 見たら余計に怒らせる……。

 

「ロノス様、先ず先に言わせて頂きますが、私は可愛いと言われるよりも綺麗だとかの方が嬉しいのですよ?」

 

「そうなの?」

 

「……まあ、口説こうとせずに口説いて来るロノス様にはお分かりにならないのでしょうが、可愛いというのはレディに対しては子供扱いをしている様で不満ですわ」

 

 頬を膨らませて拗ねた顔を見せながら言っても可愛いとしか思えないんだけれどなあ。

 あー、でも確かに可愛いとしか言わないのも不満に思うのかな?

 

 可愛い可愛いって感じに甘やかしてあげたい気分なんだけれど……。

 

「それから……」

 

 まだ何かを言おうとしているネーシャの手を取り、怒られるより前に手の甲にキスをしてから抱き寄せた。

 

 

「そうだね、僕の言葉が悪かった。不満そうな君も拗ねている君も、どんな君も魅力的でさ。何としてでも手に入れたくなった」

 

「あら、傲慢ですわね」

 

 胸に抱き寄せているから顔は見れないけれど機嫌は直ったみたいだ。

 正直な胸の内を囁けば嬉しそうな声で首に手を回して抱き付いて今度は僕に囁いて来た。

 

「帝国でも一番の商会の娘にして本来ならば皇帝となっていた才女ですわよ? 言葉だけで手に入れようだなんて……ふふふ、頑張って下さいませ」

 

「そうだね。じゃあ、どうやったら君が手に入る? どうすれば君が僕の物に……この物って言い方は嫌いなんだよなあ」

 

 結婚の許可を手に入れる時、”娘さんをください”って言うのが多いじゃないか、物語とかじゃ。

 貴族の家じゃ結婚とかは家同士で決まるし、個人で結婚の許可を親元に取りに行くとかは無縁だし、一般家庭については詳しくないんだけれど……。

 

 あの、くださいってのがどうも気になる……。

 

 

「……むぅ。ロノス様、口説きながら他事を考えるだなんて」

 

 あっ、ヤッッバ!

 

 またしても僕はネーシャを怒らせて足を踏まれてグリグリされ、抱き締めている彼女が更に怒らせてしまって冷や汗を流していた。

 

 

 

「これはお詫びをして頂かないと。では、出掛けた先で掛かるお金は全てロノス様持ちとして、二人っきりで……くっ。無駄に時間を使ってしまいましたわ」

 

 悔しそうな声と共に僕の腕から離れたネーシャは僅かに舌打ちをしながら扉に目を向けたかと思うと、タイミングを見計らったかのようにノックの音が聞こえて来た。

 

 

「ロノスさーん! 一緒にバザーを見に行きませんか? ロノスさーん!」

 

 扉の向こうから聞こえる呑気そうなアリアさんの声、今さっきまで僕達が何をしていたのかなんてまるで知らないって態度で遊びに誘って来た。

 

 

 

「……部屋の前から気配がしていたんだけれどね」

 

「絶対気を伺っていましたわ、彼女。……尾行されていただなんて気が付きませんでした。その手の魔法を作ったのでしょうか?

 

「だろうなあ……」

 

 相変わらず黒いなあ、アリアさんって……。

 

 

 

 

「入って良いよ~」

 

 迷う暇もなく聞こえて来たのは僕の声……だと思う。

 ほら、自分の声の聞こえ方って違うって言うじゃないか。

 

 その声が聞こえて来たのは天井、ドアが開くより前に見上げれば小さな何かがベッドに降り立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「空気を読まずに僕参上!」

 

 部屋に入って来たアリアさん含めて三人の視線が向かう先、其処に荒ぶる鷹のポーズをした小さな大熊猫が居た。

 

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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