ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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裏切りと意地

外から感じる殺気と膨大な魔力、反応すると同時に魔法を展開しようとした僕は気付く、サマエルまで守護範囲に含めていたって事にね。

 絆されてしまったのか、それとも防御壁を張るのに集中していたのかは定かでは無いけれど、僕は確かにサマエルを守ろうとしていたし、それは相手から情報を引き出す為の打算有りきの行為では無かったと断言出来るだろう。

 

 ……何をやっているんだ、僕は。

 

 後から思えば詰所の兵士はサマエルを普通の迷子だと認識しているし、無事だったとしても見捨てる行為は今後に変な噂が流れる可能性を消せたのだから良いとして……結果としてはその行為は無駄だった。

 

 

「危ないっ!」

 

 響く兵士の声、手を伸ばした先には外壁を切り裂いて尚、勢いを殺さずに僕達を殺そうと迫る爪による切り裂き。

 そして、それに向かって日傘を開いて行くサマエルの小さな背中。

 振り返った彼女は自信に満ちた表情を向ける、さっきまで敵意を向けていたっていうのにね。

 僕はそれをアホだからで片付けない、あれはきっと創造すると同時に与えられた人間の敵意とは別に持って生まれた人格による物なんだろう。

 

 

「安心するのじゃ。私様が守ってやろう」

 

 

 建物の壁を易々と切り裂いた爪の一撃と広げて盾の如く構えた日傘が正面からぶつかり合い、日傘を構えるサマエルの矮躯が後退してバランスを崩しそうになるけれど、咄嗟に踵が床にめり込む程の踏み込みで耐えきった。

 

「ぐっ、ぬぬっ! あま、甘いのじゃ!」

 

 傘の表面を流れて行く衝撃は左右に逸れて壁を破壊、真正面に切り裂かれた詰所が崩れ始める中、サマエルは口元に手を当てての高笑いだ。

 

「にょほほほほ!」

 

 あっ、天井が崩れそう。

 

「にょほっ!?」

 

 頭の上から落ちて来た天井の破片がサマエルの頭に激突、ゴツンという音と共に瓦礫は砕けて大きさなタンコブが餅みたいに膨らんで、例えじゃなくって実際に頭の上で星が回って目玉がグルグル回っている。

 

「……は? いやいやっ!? なんだ、あれ!?」

 

 兵士なんてそんな姿を見て詰所が破壊された事とか、それを小さな女の子が防ぐとか有り得ないよね、漫画だって存在しないんだから余計に意味不明だものさ。

 

 色々知っている僕だって未だに意味不明だし、本当に意味が分からない!

 

 

 さて、茶番はこの辺にして敵に向き直るか……サマエルは敵、で良いのかな?

 

「これは困った。何故同胞が此処に居る? ……いや、違うな」

 

 これ以上の崩落は危ないと詰所の時間を戻す中、戸惑いの声は正面……つまり詰所を切り裂いた相手から。

 壁が戻り、扉が閉まる直前に見えたのは腕を組んで首を傾げる少女、神獣ハティ・スコルの姿。

 違う服を持っていないのか同じドレスを身に纏う彼女はサマエルの姿に動揺を見せ、一瞬で険しい物へと変貌する。

 

「……人間を庇ったのか?」

 

 信じられない……いや、信じたくないんだな。

 戸惑いと否定して欲しいという気持ちが顔を見るだけで伝わって来る、肯定された時には迷わず戦うという覚悟もだ。

 

 

 修復していく詰所、その再生の様子がスローになる中、ハティは隙間をすり抜ける様に入って来る。

 殺気を浴びて意識が研ぎ澄まされた、という訳じゃないな、肉体からオーラでも放って魔法が阻害されたのか……。

 

「ぐぬぬぬ、襲って来たのは貴様じゃな? と言うか私様が後ろの連中を守る事を貴様にとやかく言われる筋合いは無いのじゃがな」

 

 タンコブを上からグッと押し込むと引っ込み、相手が誰か記憶を失っているから分からないサマエルは堂々と言い放ち、ハティは覚悟を決めた顔となる。

 

 

「ああ、我の血を引くこの父親に相応しい男を屈服させるついでに周囲の人間を始末しようとしたのだが、自らは傷を負ってでも庇うとは。……アホだとは聞いていたが、本当に何を考えている?」

 

 ……あー、未だそれを狙ってるのか、嫌だなあ。

 シロノもそうだけれど、肉食系にしても度が過ぎてるって言うか……。

 

「言う必要は無いのじゃ。そんな事よりも貴様のせいで受けた痛みを三倍にして返してやるからの!」

 

 涙目になりながらも襲って来た相手に閉じた日傘の先を向けるサマエルと右手の手の平を向けながら腰の辺りで構えるハティ。

 漏れ出す殺気に兵士達は限界寸前なのか顔を青ざめさせて息は苦しそうだ。

 

 

 

「……それにしても」

 

 ゲームでは存在したサマエルの和解と離反、そして死亡イベント、主人公……アリアさんと仲良くなって人間への敵意を捨てた彼女は裏切り者として他の神獣将二人に殺される事になったけれど、これは同じ様な事が起きているのか?

 

 未だ疑惑の段階で、更には記憶を失っている状態だ、裏切った訳じゃ無い。

 だからそれを教えればこの場で戦いにはならないだろうし、周りを巻き込む事を考えれば教えてやるのが一番か。

 

 まあ、ハティはゲームには出てこなかったし、実際戦いになったらどうなるかは分からない……。

 

 

 

「待て! そ、その子には手を出させない、じょ!」

 

 僕が動かない中、震える体を動かし、震える声で噛みながらも虚勢を張って槍の切っ先をハティに向ける。

 相手は若い女で武装すらしていないけれど、この世界にはモンスターとの戦いで肉体の質を向上させている者は幾らでも存在する。

 この兵士だって訓練や任務でそれは経験している筈で、それだけに只者ではない事は分かっているはずだ、生存本能で命の危機を感じ取った筈だ。

 

 

 

 

 

 帝国を守護する兵士としての誇り、大人として子供を守ろうという真っ当な価値観、それは人としては何一つ間違ってはいないだろう。

 

「そ、そうだ!」

 

「大人が子供に守られっぱなしってのは情けないよなあ!」

 

 最初に動いた兵士に続き、建物内で今にも気を失っていた兵士達が同じく震えながらも武器を構え、サマエルを庇うようにハティの前に立ちふさがった。

 

「愚かな。其奴を見捨てれば少しは長く生きられたというのに分からぬか。ふむ、新参者の私が勝手に判断するのは憚られるが、ロザリー……は頼りにならんか、ミントにでも報告を頼むとしよう」

 

 相手がとても敵わない相手だと悟っても、今此処で立ち向かわなくてはならないのだと……例えそれが蛮勇であり無意味であり結果が犬死にでしか無いとしても。

 ハティはその姿を嘲笑すらしない、無意味で無価値だとして一切の感情を兵士達に向けず、足下の石ころを蹴飛ばそうとしている感覚なんだろう。

 

「……仕方無い」

 

 動くかどうか迷っていた、何せ物理的な圧力に魔法解除の力を持つ咆哮を放っていたのが、別の方法で僕の魔法に干渉したからだ。

 

 でも、此処で何もしないのは駄目だ。

 そんな事をすれば僕は僕を許せない、今後も何か理由を付けて逃げ出す、そんなダサい奴がどうしてリアスのお兄ちゃんを名乗れるんだ!

 

 

「駄目ですよ。関わっちゃ駄目だって言われましたよね?」

 

 背後から聞こえる少年の声、僕よりも年下だろうと思われるその声と共に僕の横を黒い影が通り過ぎ、ハティの目の前で左手で手首を掴んだ右手を突き出すリゼリクさんの姿があった。

 

「速っ……」

 

 兵士は勿論、僕やサマエル、それこそハティでさえも完全に目で追えていた訳じゃない。

 何かが速く動いていると、それだけを認識する中、ハティの顔に向かって開いた手の平からパチパチと弾ける音が響いて……。

 

 

 

「”クリムゾンボルト”」

 

 静かな呟きの後、手袋を突き破りながら放たれた紅と雷鳴。

 部屋を眩しく照らす雷光に目が眩みそうになる中、真紅の雷撃はハティを丸々飲み込んで背後の扉と共に貫いて外へと吹き飛ばす。

 

 

「……ふぅ。危ない危ない」

 

 街中が騒ぎに気が付いてざわめき、土煙が濛々と舞い上がる中、リゼリクさんは胸をなで下ろしながらホッと一息、此方に向き直るとサマエルに近寄った。

 

「だ、大丈夫? 怪我とかは……わっ!?」

 

 焼け焦げて落ちた手袋の切れ端を踏んで足を滑らせたリゼリクさんは咄嗟に両手を前に伸ばし……サマエルの胸を揉んだ……いや、触った。

 だって揉むほどに大きくないから。

 

 

 

 

 

 

 

「へ……変態じゃぁあああああああああああっ!?」

 

 雷鳴で耳がキンキンする中、サマエルの甲高い悲鳴まで轟いた。

 

 




サマエル


【挿絵表示】


ハティ  左


【挿絵表示】

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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