ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
「何が起きたのかは分からぬが、今だ、捕らえろ!」
「きっと神のお導きだ!」
巨大鳩時計に外まで吹き飛ばされたクリアに殺到する兵士達、縄では意味が無いと鎖を手に仰向けに倒れる彼に迫り、槍を構えて警戒する彼等の言葉は間違っていない。
うん、実際に時の女神の力だからね、その全裸は時の女神の神獣なんだけれど。
「……」
「リゼリクさんは行かなくても良いのかい?」
職務に忠実に行動して異様な変態に迫る兵士達同様にクリアさんに怒っていた筈のリゼリクさんは落ち着いた様子でその光景を眺めて動こうとしない。
疑問に思ったから聞いてみれば、頷いて身振り手振りで答えたのは”自分より怒っている人を見て落ち着いた”だってさ。
「よし! 捕らえたぞ!!」
まあ、気持ちは分かる。
白目を剥いて大の字で伸びているクリアさんは鎖でグルグル巻きにされ、魔法の詠唱をされないようにと猿轡まで噛まされて一旦は無事捕縛完了、だったんだよね、彼が普通の変態だったなら。
普通の変態、変な言葉だな。
「やれやれ、国や時代、地域によって価値観が違うのは知っていましたが、まさか此処まで躍起になって全裸を批判されるとは。流石の私も驚きですよ」
その声と鎖が砕ける音を聞いたのは僕とリゼリクさんとサマエルだけだっただろうね、他の誰の耳にもそれが聞こえる筈が無い。
風で舞う砂埃や空を飛ぶ鳥さえも空中で固定され、町中を歩く人達や野次馬は絵画の様に動きを停めてしまった状態、風の音さえ聞こえない。
「何じゃ!? 何が起こったのじゃ!?」
いや、風が吹く訳が無かったよ、混乱するサマエルは僕の服を掴む力を強めて異変が起きた世界をキョロキョロと慌ただしく見回すけれど、僕は見慣れた光景に似ているから何が起きたのかは分かっている。
「時を停めた? それもこんな広範囲を……」
遙か遠くの空、数秒前までは早く流れていた雲の動きすら静止する光景に驚きはしたけれど、即座に答えは導き出せたよ。
何せ僕にも似たような事は可能だからね。
”
只、こんな広範囲の空間に掛けて、動ける僕達は呼吸や光に一切影響を受けていない、なんて芸当は不可能な事を除けば、では有るんだけどね。
「君も潜在能力更に発揮すれば可能ですよ。その為には”神殺し”である其処の彼女や妹さん達が力を更に高める必要が有るけれど。でも、私の指導を受ければ範囲を狭めての場合なら今の力でも可能です」
「……だろうね。独学じゃ此処までの芸当は無理だ。僕達だけ対象から切り離して、悪影響を受けないように調整は続ける。其処までの技術は無い。そして強くなる方法なら前から知っているよ、その程度の事はね」
気が付かぬ内に語気が強くなる、我慢出来ない不快感が僕の中で渦巻く中、急に体が傾いて、服からビリって破れる音。
僕の意識がクリアさんに向けられている時に不意を打つ様に引っ張り、服の一部だった布を手にサマエルは随分と慌てた様子だ。
「のじゃぁああああっ!? すまぬのじゃ、ロノス! 別段破る気は……」
「大丈夫、分かっているさ」
本当にサマエルはよく分からない奴だなぁ。
存在理由だからって平気で人間を殺そうとするし、記憶を失っても人間が嫌いなのは変わらない、まさに生まれながらの人間の敵。
かと思いきや今も直ぐに魔法で元に戻せる服を破いてしまって慌てたり、世話になったからと体を張る優しさだって持っているんだから。
僕の服を引っ張ったのもクリアさんへの感情を感じ取ったんだろう、服は即座に戻ったのに心配そうな顔は変わらない。
「のぅ、ロノス。貴様、怒っておるのか? あの変態の言葉が不愉快だったのなら私様が強く言ってやるのじゃ」
「いや、違うよ。僕自身の問題が関係しているだけさ」
あんなに怖がっていた変質者相手に食ってかかろうとする理由は少し話をしただけの僕の為だって言うんだ、これじゃあ僕だって毒気を抜かれてしまうさ。
静まりゆく怒り、結局の所、それは僕のやりたい事と、それに必要な事、それらを受け入れ飲み込む事が出来ない僕の問題だ。
神に対抗する為の”神殺し”、更にそれが裏切った時の為に存在する”神殺し殺し”、守る存在を傷付ける為に力が増す、そんな不愉快な矛盾なんて無視すれば良いのにさ。
「心配してくれて有り難う。君は優……」
優しい子、そう誉めながらサマエルの頭を撫でていた手は突如空を切り、僕の目の前で目を細めながら受け入れていた彼女の姿が言葉の途中で目の前から消える。
まるで時間を停めている間に移動したみたいにサマエルの姿は消え失せ、クリアさんも同様に……。
「もう私が動ける時間が残されていませんし、この子は然るべき場所にお届けします。では、
耳元で囁くような静かな声のみを残し、一切の痕跡を残さずに二人は完全に消え失せ、停まっていた時間が再び動き始める。
いや、ただ動き始めただけじゃないな。
遙か遠く、空の上の雲は停止する前よりも何倍も早く流れる、まるで停まっていたなかった場所と時間の流れの整合性を合わせる為みたいに。
「僕にも同じ事が可能、か。どれだけ頑張れば良いのやら分からないや」
完全に魔法が解除され、時間が停まった痕跡なんて動いていた者達以外には一切残さずに時間が動き出す瞬間、僕は静かに呟く。
三度目の人生、その言葉に心がかき乱されるのを感じ取りながら……。
「あの変態は一体何者だったのでしょうか? また現れないと良いのですが」
「暑さで頭をやられちゃった人、とかですかね? 帝国の気温は高いですし」
「あら、気温のせいにするのは辞めて下さる? 帝国国民はちゃんと普通ですもの」
迷子として連れて来たサマエルの消失、時間が停まった事を自覚出来なかった詰所の中は混乱に陥る、なんて事は一切無い。
停止した時間の中動けた僕からすれば数分、停まっていたネーシャやアリアさんからすれば一瞬の間にサマエルとクリアが消え去った事に対して兵士達は冷静だった。
元より本能や経験から人知を越えた存在だとは悟ったのだろう、皇帝の養子であるネーシャや他国の貴族である僕やアリアさんには警鐘が鳴り響く事を理由に城への避難を進言し、リゼリクさんだけは拘束した。
いや、まあ、あの人なら多分抜け出せるから大丈夫だろう。
町の中は緊急事態の際の鳴らし方のせいか浮き足立っている様子こそ有れ、流石は皇帝陛下のお膝元だ。
特に大規模な暴動や混乱が起きている様子も無く、兵士の指示に従って避難所へと移動をしていた。
「……あの、ロノス様。私、重くはありませんこと?」
でも落ち着いて移動しているとはいえ、人数が人数だ。
氷の馬車なんか使っていたら道幅を大きく使う事になるし、ネーシャは僕が背負って城まで向かう事にしたよ。
「全然大丈夫さ。偶にポチを背負って走り込む事があるし、寧ろ役得かな?」
僕の背中に乗り、首に手を回して体重を預けるんだから柔らかい体の感触が強く伝わって来る。
本当にこの程度なら軽いし、ラッキーだとさえ感じていたんだ、
「……」
僕達の横を歩きながら笑顔を浮かべるアリアさんからの威圧感さえ無かったら最高だったんだけどなぁ。
自分も後で背負って欲しいとか思っているけれど、思うだけで言えない状態なんだろうし、僕から背負おうかどうかなんて言えないから耐え続けるしか……。
二人の間のバランスを取るのが大変だと思った時だ、落ち着いた様子の避難者達からざわめきが上がったのは。
「……うわぁ」
何かと思って視線の向けられる方を向けばビックリ!
塀の向こうに居るのに町中からでも見える位に巨大な、下腹の突き出た中年男性の黄金像が此方に向かって来ていたんだ。
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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レキア
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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レナ
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パンドラ
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サマエル
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シロノ
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アリア