ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
帝国は随分と暑い、聖王国が少し寒めの気候の為に冷え性な僕だけれど流石に辛い物があった。
馬型のモンスターに乗っているせいで太陽に近いし、地面からの照り返しや体温が高い馬に乗っている事、周りの騎士の鎧は中の人が蒸し焼きにならない様な特別な魔法の品なんだろうけど、表面から反射した熱がモロに僕に当たっていたし……行きは馬車に乗っての旅だったからどれだけ快適な旅だったのが分かったよ。
「それでロノス殿、私の
「ええ、彼女は素晴らしい人ですから」
暑さは仕方が無い、だから黄金の巨人の討伐隊に同行した事には後悔が無いけれど、カーリー皇帝と一緒に向かうのはちょっと後悔。
近付けば近付く程にハッキリと見える細かい造形、本当の肉体みたいな質感、そして不摂生の極みみたいな体型、お祖父様の同類であるカーリー皇帝はあんな奴に近付きながら何を話しているのか自分で分かっているのだろうか?
顔や声には出さないけれど、正直普通の場でさえプレッシャーを感じる。
だって最後までいってはいないけれどネーシャとは婚前交渉を持った訳だしね……。
声は政治的な場面ではなく、プライベートな場面の様な穏やかで、本当にこれから未知の相手と戦うとは思えない感じの物だ。
「お暑いのならば少し涼しくしましょうか?」
一方、この国で生まれ育ったカーリー皇帝は一切暑がる様子すらなく、僕に気を使う余裕すら、だ。
「いえ、この程度なら……」
今朝までの威圧感と威厳を感じさせる皇帝の優しい態度に気を抜き、言葉にも甘えそうになるものの弱さを見せる訳にはいかない。
今の僕は帝国に客人として招かれた身であり、今も皇帝自らの出陣に同行を許可された身だ。
娶る相手の故郷の気候にさえ耐えきれない軟弱者、そんな風な格付けは避けたいと平静を装って僕が返事をすればカーリー皇帝はそれ以上は何も言わず、顔も皇帝としての物に戻っている。
弱い所を見せないか、そんな風に駄目で元々って感じで言ったんだな……。
「皇帝陛下! お待ちしておりました!」
「うむ。ご機嫌伺いは不要だ。敵の情報を述べよ」
黄金の巨人が少し離れた距離まで到着すれば、陣取っていた兵士達が急いで目の前に現れて跪く。
それに軽く頷いたカーリー皇帝の視線を追えば黄金の巨人の頭部、その左目の部分に何かが混じっていた。
「……あれは仮面の男?」
太陽の光を反射して直視するのが色々な意味でキツい物がある中、一点だけ存在した不純物。
目を凝らして見てみれば見覚えのある顔……正確には顔は見れない、その顔は何度も襲撃を繰り返した男が身に付けていた仮面と同じだったんだから。
髪の色も同じ、髪型も然り……同一人物の可能性が高いな。
「知った者か? ロノス殿。……ああ、成る程。学園やネーシャからの報告にあったという者だな」
僕が何も言わずとも答えに行き着いたカーリー皇帝が再び口を開くそれより前に応戦していた兵士達から魔法が放たれる。
砂が隆起して凝縮され、巨大な矛先となったそれは巨人の頭や足に突き刺さり、その体を崩した。
元からバランスが悪い造形だ、攻撃が通ったなら自重で崩れ落ちるのは自明の理だっただろう。
これは皇帝の出陣が無駄に……いや、ならないか。
あの巨人は十中八九ゴーレムの類い、だから生物と違ってパーツの破壊はそんなに決定打にはならない。
あの損傷もすぐに修復するだろうと僕だけが思った訳じゃなく、今まで攻撃を続けていた兵士は当然ながら、カーリー皇帝も眉一つ動かさずに見ているだけ。
この場で中止するべくは、ゴーレムの再生速度及び再生可能な範囲、それで術者の土魔法の練度と実力が分かるんだ。
何処まで修復するのか、どれだけ時間を要するのかで戦術はガラッと変わるけれど、修復の基本は素材の吸収。
相手が周囲の物を素材に作り変えるにしても、本体から崩れ落ちた部分に近寄らせ無いのは基本……だから兵士達の動きが妙だった。
「詳細を報告せよ」
だって剥がれ落ちた部分から本体を遠ざけようとしないのだから。
本来なら疑問を口にし、叱責するだろう行動だ。
だが、カーリー皇帝はそれを行わない。
自らが君臨する帝国と、それに仕える兵への絶対的な自信故に。
皇族でさえ何かの理由があれば冷遇される程の実力主義、だから一見不可解な行動を見せても疑わない。
「はっ! 間もなく判明する事かと!」
その報告が意味するのは”見るのが一番分かりやすい”。
実際、一目で分かったしね。
崩れ落ちた黄金、それが風で舞い上がった砂山の砂の様に細かくなり、巨人の欠損部分を埋める。
たった数秒で元の姿に戻っていた。
「あれは時魔法……ではないか」
「だろうな。砂の様に細かい砂金一つ一つを合わせて合成したのが目の前の悪趣味な存在なのであろう。自己顕示欲と趣味の悪さがあの男の趣味だと主張しているが、もし主犯がそうならば、あれだけの術者が何故だ?」
数秒、カーリー皇帝は顎に手を当てて信じられなさそうに唸り、直ぐにその疑問など最初から存在しなかったかの様に表情を切り替える。
「仮面の男は移動するのだな?」
「はっ! 狙おうとするも巨人の身体の中に隠れ、別の場所から姿を見せます! ですが、潜っている間は巨人を動かせぬらしく、それで時間を稼いでおりました!」
「そうか。ならば弓を持て。我自ら仕留めよう」
……来た!
ゴーレムが厄介なら操っている奴を倒すのが戦術の基本、それをしていなかったのだから、カーリー皇帝が導き出した答えが僕も正解だろうと思っていたけれど、今はそれよりも重要な場面だ。
お祖父様が槍を得意とするのと同じく、カーリー皇帝は弓の名手で有名だ。
噂では二つ先の山の獣の目を麓から放った矢で射抜く、そんな誇張が過ぎそうな話だけれど、この世界の強者を何人か知っている僕からすれば有り得ると考えている。
じゃあ、お手並み拝見と行こうか。
「大儀である」
差し出された弓を受け取ったカーリー皇帝は狙いを定める……事さえもせずに矢を放った。
それも二本を僅かにタイミングをずらし、一本目に二本目が隠れるようにしてだ。
……名手とは知っているけれど、こうして直に見れたのは助かったよ。
ネーシャを娶る以上は諸々の理由から敵対する事は互いの立場からしてデメリットが多くても、信頼できる身内にはなり得ない相手なんだから。
「!」
一本目が自らに迫り、仮面の男は即座に巨人の体内に潜る。
直前まで気が付かなかったのは兵士による攻撃が目眩ましになっていたからで……直ぐに出て来た理由も同じ、棒立ちで受け続ける訳には行かない状況だから。
二本目の矢は途中で軌道を変え、姿を見せた仮面の男に命中した。
「中々丈夫な仮面だな」
少し感心した様にカーリー皇帝が呟く中、仮面が割れて素顔が明らかになる。
「あれはアルフ……」
そう、仮面の下の顔は間違い無くアルフレッド・アマーラ。
落ちこぼれとして冷遇され、入学早々に失踪した……カーリー皇帝の実弟だ。
「見覚えがある顔な気がしたが……気のせいか。そうであろう?」
「はっ! 見知らぬ男です!」
だから僕が名前を口にしてしまいそうになった時、遮る様に冷徹な声が冷酷な意思を告げる。
アルフレッドなど誰も知らないと、そういう事だ。
「”フリージア・フロストフラワー”」
何事も無かったかの様に一度だけ瞬きをして、指先を向ければ細く蒼い光が指先から迸って巨人の右目……カーリー皇帝の実弟であるアルフレッドに命中し、其処から氷の花が咲く。
巨人の魔力を吸い上げるみたいに氷の花は成長を始め、反対に巨人は比例して小さくなって行く。
咲き乱れたのは巨大な氷の薔薇、少し離れた此処でさえ気温が下がって肌寒い程の冷気を放っていた……。
感想待ってます
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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