ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
”望みの国”、それは此処数日の間に不自然な程に広まった噂で、何でもその場所に行けばどの様な願いでも叶い、行った人間は二度と帰る気が起きないという……実に胡散臭い話だ。
「アホ臭っ。それって姿を見たら絶対即死系の怪談話のお化けの姿が伝わってる位に不自然じゃないの。二度と戻って来ないなら、一体誰が内情を伝えたのよ」
「ええ、実に馬鹿らしい噂であり、冗談半分で噂されているとか。何らかの不満を抱えた結果でしょうね」
馬鹿馬鹿しい有り得ない噂話は前世でもネットで溢れかえって居たけれど、娯楽の少ないこっちの世界じゃそんな話が娯楽として広まるのね。
……もしくは不満の現れかしら?
叔母上様がこの王国に嫁いで数年、既に中央は掌握したけれど、端の方では未だに先代王妃の下で甘い汁を吸っていた連中が残っているし、首をすげ替えるにも準備が必要……ってお兄ちゃんが言っていたわね、私にはよく分からない難しい言葉で。
残り二年は掛かるって言ってたのは理解してるわ!
「でも、どんな望みも叶うかぁ……」
信じていないけれど興味が湧かない事も無い。
お化けは信じていないけれどオカルト系の話は好きな人位の好奇心か、当選するとは思っていないけれど宝くじを買って一等が当選した時を思い浮かべる時、そんな程度の気持ちで呟く。
「……姫様。未だ成長しないと断言するには早いかと」
「いや、私がどんな望みを叶えたい気だと思っているのかしら?」
「どんなって……失失礼致しました」
私が思い浮かべたのはお兄ちゃんと違って今の人生じゃ出会っていないお姉ちゃんの事。
私達みたいに転生しているのなら手掛かりだけでも欲しいって思っただけなのに、レナったら何を勘違いして励ましたのかしら?
視線が私の胸に向かっている? いやいや、そんな理由がないから違うでしょう。
でも一応不満そうな声を向ければ澄まし顔でお辞儀して、胸の余分な脂肪がタユンタユンと揺れていた。
「……けっ!」
く、悔しくなんてないわよ!
「姫様、流石に今の言葉遣いはどうかと。若様はパンドラさんに政務の授業を受けていますし、お茶の時間が終わったならばマナーの授業と致しましょう。どんな時も猫を被るのを忘れずに」
「……終わったらね」
今日のお茶請けは前々からリクエストしていたミートパイ、私の大好物で、チマチマと食べているけれど半分近く減っている。
これが終わったらお勉強……時計を見れば夕食まで少し時間があって、講師は多分メイド長。
こうなったら……。
「先に言っておきますが、始まるのが遅くなった場合、夕食後のお勉強が長引きますので」
「……分かっているわよ」
くっ! 流石は乳母姉、私の”パイをのんびり食べて勉強時間を減らそう大作戦”を読むなんて……策士だわっ!
夕食食までの勉強時間が増えるか夕食後の勉強時間が増えるか二つに一つなら、寝る時間が増える前者よね。
パイを口一杯に頬張って味が口の中全体に広がる快感を味わい、お茶で胃袋に流し込む。
……あれ? さっきから思っていたけれど、このミートパイってまさかっ!
「レナ、もしかしてレナスが屋敷に来ているの!?」
「おや、ミートパイの味で分かりましたか。ええ、今日のお茶請けは母様特製ですよ」
「もー! 来ているなら言ってくれたら良いのにケチね!」
さっきまで勉強が待っている事で下がっていたテンションが急速に上がるのを感じ、私は思わずレナの方に身を乗り出した。
私とお兄ちゃんの乳母であるレナスだけれど、今の私の母親が直ぐに死んじゃったから母乳を飲ませてくれて、世話係もしてくれた彼女は前世も両親が共働きで殆ど家に居なかった私にとって唯一の母親に近い存在。
今までお兄ちゃんやレナと喧嘩したのは数える程で、その全てがレナス関連な位に私はレナスが大好きよ。
……よし! お勉強を頑張って誉めて貰おう。
実の娘のレナには悪いけれど、今日は久々に髪を洗って貰ったり、色々とお世話して貰いたいなぁ……。
「あっ! お兄様と一緒に稽古を付けて貰うのも良いわね! 折角ハルバートを新調したんだし、今の私との距離を測るのに丁度良い機会だわ」
私はレナスが大好きで、凄く尊敬しているし憧れてる。
……だからこそ越えたい。
聖王国で……いえ、現在の世界一位タイである戦士相手にどれだけ通用するのか、少しの恐怖に混じって高揚感が手を震わせる。
「私、生粋の戦士なのね……」
戦士はバッチ来い、脳筋は微妙、ゴリラと呼ぶなら喧嘩を売っていると見做す。
さて、やるべき事をやって、レナスに久々に思いっ切り甘えたら先ずは組み手をお願いしようっと。
お兄ちゃんには悪いけれど、今日は私が先なんだからね!
「……誰か居る。メイドが掃除している……のとは違うわね」
お兄ちゃんの部屋の前を通り、私の部屋の扉を開く前に動きを止める。
扉の向こうから感じるのは人の様で人でない気配で、動き回っている様子は無い。
取り敢えず開けて確かめましょうか、出たとこ勝負よ。
視界に入ったのはお気に入りの武具を飾った自室と、私のベッドの上で不貞寝しているくノ一の姿だった。
毛量の多い髪をポニーテールにして、袖や丈が短く網タイツがセクシーな忍者衣装。
漫画に出て来るお色気忍者の典型みたいな少女で、何処の誰かは知っている。
だってお兄ちゃんの手札の一つで名前は”
普段諜報活動をやってる忍者軍団の本体だわ。
性格は忠誠心厚い滅私奉公の鏡……だったわよね?
「……えぇ」
いやぁ、どうして私の部屋で寝ているのかな、この子。
取り敢えず壁に飾った戦鎚を担いでベッドに近付いて行って顔をのぞき込めば拗ねて頬を膨らませているし、覆面をズラして普段隠している顔が見えている。……あら、初めて見るけれど結構美人。
「人のベッドで何やってるのよ……
「……リアス様で御座いますか。只今夜鶴は不貞寝中ですので今は話し掛けないで下さい。私にも偶には休みが必要ですので」
「……うわぁ」
この子、凄く……凄ぉおおおく面倒臭い!
「取り敢えず話を聞いてあげるから……って、あらら」
何時の間にか本当に寝入っていた夜鶴は仰向けになってスヤスヤと寝息を立てていて、セクシー仕様の忍者装束に収まった大きな胸が動いていて……気が付けば戦鎚を振り下ろしていた。
「ずぉりゃぁあああああああああっ!!」
真下のベッドは壊さない、衝撃は夜鶴の肉体にのみ!
手に伝わったのは肉を叩いた物とは別物で、まるで空気でも殴ったみたいな手応えの無さ。
まあ、当然なんだけどね。
私の目の前で夜鶴の肉体は消えて行き、枕元に置かれていた大太刀に吸い込まれていった。
「……お見苦しい所をお見せいたしました」
「本当にね。……それで何が有ったのよ? お兄様と久々に会えて喜んでいたんじゃないの?」
……こうして相談に乗る流れになったけど、実際の所私は早く終わって欲しかった。
廊下の向こうから近付いて来るメイド長の気配を察知し、マナーの授業がもう直ぐ始まるみたいだし、相談が長引いたら……いや、違うっ!
「夜鶴、援護しなさい!」
この気配、メイド長だと思ったけれど微妙に違う。それも偶然似ていた訳じゃなく、似せようとした結果の違和感。
私の言葉に大太刀の鍔が鳴り、その柄を握った少女の姿が瞬時に現れる。
先程までの不抜けた表情は嘘みたいに変わり、鋭い目つきで口元を覆面で隠し、姿勢を低くして直ぐにでも飛び掛かれる構え。
「夜鶴……参る!」
扉が開く瞬間、夜鶴は瞬時に扉の前に移動、高速での抜刀……そして刃が届くよりも前に相手の拳が届いて殴り飛ばされた。
……うわぁ。
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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レキア
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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レナ
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パンドラ
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サマエル
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シロノ
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アリア