ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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評価が下降気味……此処からだ! 頑張って巻き返す

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ゴリラはポンコツと脳筋を馬鹿と呼ぶ(ブーメラン)

 朝の惰眠は素晴らしいとは思わない?

 私は今の人生でも前世でも思っているし、予定より早く起きた時にだけ許される二度寝の気分は最高よ。

 

 ……まあ、貴族だから使用人達が起こしに来るし、惰眠を貪るだなんて簡単じゃないのだけれど。

 

「ていっ! せいっ! はっ!」

 

 未だ太陽が完全に昇る前の時間帯、庭に出た私はハルバートを手にして素振りを行っていたわ。

 基礎とは何よりも大切な事だから基礎って呼ばれるんだし、眠いからってサボれない。

 周囲には素振りと同時に魔法の練習として光の球体を無数に浮かべて周囲を回らせ、時々剣や槍に形を変えて行くんだけれど、素振りに夢中になっていると、形が崩れたり動きが止まったりと失敗がある。

 

「はぁっ!」

 

 今日は調子が良くって魔法の練習に失敗が無いままキリの良い所まで進んだし、ちょっと休憩したら少し難易度を上げて仕上げにしましょう。

 

「未だ時間があるし、軽く汗を拭いた後の二度寝が最高なのよね。ご飯だって美味しいし、矢っ張り朝は鍛錬と二度寝と朝ご飯! これに限るわ。……お兄ちゃんの方も今日は気合いが入ってるわね」

 

 一旦ハルバートを置いて少し離れた場所に目を向ければ”夜”の面々数人と模擬戦中のお兄ちゃんの姿が在ったわ。

 

「しっ!」

 

 夜に所属するくノ一達は元々夜鶴の分体で、最近じゃ個性が芽生えたけれど基本は同一存在、故に視界の共有が可能で、複数の視界を把握して緻密な連携を取って来ている。

 

 忍者刀に苦無や鎖鎌、時に素手で襲い掛かり、一切攻め手を緩めずにお兄ちゃんに向かい……サラシを巻いただけの胸が揺れているわね畜生。

 

 最初に動いたのは忍者刀を手にした分体で、残りは接近する彼女に対応せざるを得ないお兄ちゃんを取り囲む陣形を取る。

 時折手裏剣を投げて妨害しつつ隙を伺う三体のサポート受けた分体は左右に残像を残しながらも接近し、刀の切っ先を突き出した。

 

 対するお兄ちゃんは明烏を斜めに構えて峰で受け、そのまま滑らせる様に受け流して体勢を崩すと同時に足払い、忍者刀を持った分体は咄嗟に空中で身を翻すけれど、その左胸に掌底打ちを入れて地面に叩き込む。

 

「がはっ!」

 

 心臓の上から受けた衝撃は分厚い脂肪があっても殺し切れず、地面に叩き付けられたので衝撃の逃げ場も無い。

 そのままお兄ちゃんは胸を揉むと……じゃなくて服を掴むと振りかぶり、もう一度力任せに地面に叩き付けた。

 

「あと三体……此処からだね」

 

 周囲には既にやられた分体が転がっていて、大振りの攻撃で作ってしまった隙を見逃さない三体は既に動いていた。

 ……なんか一体だけ胸の動きが違う……パット? まさか仲間が居たなんて。

 

 苦無を持ったのが跳躍と同時に苦無の乱れ打ち。お兄ちゃんは明烏で弾くべく構えるけれど、素手の分体が投げ込んだ煙玉が視界を遮り、更に空中から追加される手裏剣の雨霰。煙の中から金属がぶつかり合う甲高い音が響いたかと思うと、中でぶつかり合って軌道を変えた苦無と手裏剣が四方八方からお兄ちゃんへと向かっていた。

 

 ……ああ、駄目だ。

 

「ちっ!」

 

 珍しい舌打ちをしながらバックステップで距離を取りつつ弾き落とすお兄ちゃんだけれど、煙玉を投げた分体が背後に居るのも忘れない。投擲武器の軌道に注意しつつ視線を向けた時、予想していない行動を取られた。

 

「……えい!」

 

 一瞬の迷いの後、両手を自分の胸元に持って行って引っ張れば、立派な胸がさらけ出されて揺れている。

 サラシ巻いとけっての! 通りで彼奴だけ妙に揺れると思ってたのよ。ちっ!

 

「わっ!?」

 

 突然の痴態にお兄ちゃんも動揺を見せ、足がもつれ掛けるも立て直し、そのままの勢いで柄頭を背後の痴女に叩き込もうとするけれど流石にさっきのロスが痛かったわね。

 ほんの僅かな差で避けられ、自分でおっぴろげた胸を両手で隠した分体が真っ赤な顔で距離を取る。

 恥ずかしいならしなきゃ良いのに。

 

「お兄様も純情よね……」

 

 てか、本物なのね、裏切られた気分だわ。

 

 動揺して生まれたロスによって攻撃を空振り、更に生まれた大きな隙を千載一遇と判断したのか三体同時に動き出す。

 鎖鎌が明烏に絡みつき、僅かにタイミングをズラした残り二体が抜き手と苦無でお兄ちゃんへと襲い掛かった。

 

「これで今日こそ我等の勝利!」

 

「護衛役の面目躍如!」

 

「本体からの叱責回避!」

 

 大元は同一人物の夜鶴と夜だけれど、その能力には大きな差があるし、個体個体に人格だって存在するから上下関係と個性が芽生えつつある。

 本人もちゃんと主に選ばれたのはお兄ちゃんが初めてだから知らなかったらしく驚いて居たわよね。

 

「……うわぁ。掛け声が凄く……うわぁ」

 

 この勝負、夜がちゃんとした一撃をお兄ちゃんの身体に与えれば勝利で、此処三年は連戦連敗、遠く離れて仕事をしていた夜鶴に叱られていたわ。

 それが嫌なのか気合いが入っているし、勝った場合は残ったメンバーに何か一つご褒美だって貰えるらしい。

 

「スイーツバイキング!」

 

「カレー食べ放題!」

 

「焼き肉!」

 

「「「はっ?」」」

 

 此処に来て個性が生まれた事の障害が発生、願いが別だった事で一瞬だけ生まれたいがみ合いで、お兄ちゃんからすれば絶好のタイミング。

 お兄ちゃん頑張れ! 頑張って巨乳共……じゃなくて夜達をさっさとぶっ倒してっ!

 

「……もう我慢の限界ね」

 

 私が数歩下がって空を見上げれば空中に発生した黒い球体に向かって周囲の空気が急激に巻き戻されて行く。

 欲望に気を取られて油断したわね、馬鹿な子達だわ。

 

「どうせあの脳筋女と同じで栄養が全部胸に……いや、あの身体は偽物だったわね。馬鹿には変わりないけれど」

 

 その吸引力に三体も巻き込まれてバランスを崩し、その瞬間にお兄ちゃんは魔法を解除して凝縮した空気を解放した。

 途中までは良かったのに最後の最後で注意散漫、自業自得ね。

 もう少し注意してバラバラだったら勝機だって有ったのに……凄く強いお兄ちゃんが相手だから無理ね。

 

「「「……終わった。へぶっ!」」」

 

 最後は仲良く揃って同じセリフで吹き飛ばされて終了。

 

「”最後の三体にのみ魔法を一度だけ使って倒す”達成! さて、これで……」

 

「ええ、此処から本番です!」

 

 そう、今までのは準備運動同然で、地面に潜んでいた夜鶴との戦いこそが本番よ。

 一休みすらさせず地面から飛び出した夜鶴は抜刀と同時に切りかかり、お兄ちゃんも明烏で受け止めての鍔迫り合い。

 

 私が静かに見ていられたのは此処までだった。

 

 

「ねぇ! 私も混ぜて!」

 

 他人の戦いを見ているだけなんて私じゃないわ。

 了承を得る前にハルバートを振りかぶって突撃し、強制的に三つ巴を開始する。

 

 矢っ張り朝はご飯と二度寝と鍛錬よね!

 

 

 

 

 ……この後、暴れ過ぎて辺り一帯が大破。メイド長と庭師達に物凄く叱られた。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、この様な場所に出向かなければならないなんて、本当に面倒ですねぇ」

 

 息苦しい程の湿気が籠もった洞窟の中、天井も岩壁も地面も苔むしたその中を、陽気なスキップと弾む声で文句を言いながら進むシアバーンの姿があった。

 所々水没しており、バチャバチャと水音を立てて進んでいるにも関わらず白いシーツは一切濡れず、下ろし立ての様に見える。

 

 そんな彼を見詰める目が一対、その持ち主が横穴から音も立てずに這い出し、暗闇に紛れてシアバーンに接近する。

 ヌメヌメとした粘膜に覆われた太く長い蛇の身体にカエルの頭、この洞窟に生息する”ヘビガエル”だ。

 獲物を生きたまま飲み込み、胃袋の中で生きたまま時間を掛けて溶かす事で洞窟周辺の住民からは恐れられ、久々に味わう人の味を思い浮かべ興奮した様子で口を開けたヘビガエルだが、その動きが突然止まる。

 

「おやおや、どうかなされましたかぁ?」

 

 首がパックリ横に裂けて現れた口での舌なめずりをする姿を前にヘビガエルの体がガタガタと震え、シアバーンが一歩進み出る度に後退する。

 

「丁度良かった。私の朝ご飯になって下さい。ええ、ご安心を。生きたままじっくりと時間を掛けて消化致しますので長生きは可能かと。アヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 

 それは本能で感じ取った恐怖だが、全てが遅かった……。

 




感想お待ちしています

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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