ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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寧ろ興奮する

「”闇属性の使い手に二度目の告白をされた”だぁ~? おいおい、アタシは一度目の事さえ聞いちゃ居ないよ。何やってんだい、馬鹿たれが!」

 

 帰宅後、出掛ける前にレナスにアリアさんについて相談する事にした僕だけれど、幾ら何でもレナスに恋愛について相談するのは悪手だったと相談中に気が付いたし、頭に落とされた拳骨がそれは正しかったと教えてくれる。

 脳天を中心にして全身に響いた痛みに思わず頭を抱えてうずくまる。足下の床が少し陥没しているし、これでも手加減した方なのが恐ろしいよ。

 

「いや、だって……」

 

「”だって”じゃないよ! てか、リアスもリアスだ! アンタはその場の勢いで行動し過ぎ! ロノスはロノスで状況に流され過ぎ! チェルシーやパンドラに苦労ばっかり掛けるんじゃないってんだ!」

 

「「あだっ!」」

 

 ゴンッ! そんな鈍い音が二つ同時に屋敷に響き、僕達兄妹は二人揃って痛みに悶える。

 今、拳骨を落とされたばかりの所に落とされたよ……マジで痛い。

 

「確かにちょっと流された結果だろうけどさ。恋愛に絡む事だし……」

 

「アンタも向こうも貴族だろうが! 最終的にアンタが娶るんなら結構だが、余計な恋愛感情が向こうの将来に関わる可能性を考えろってんだよ、馬鹿息子!」

 

 三度目の拳骨は僕の意識を刈り取ろうとするけれど、僕だって反論したい。

 いや、だって関わったなら無碍には扱えないし、友達になったなら優しくしたい。

 それに僕は口説こうとか意識して話してないし……。

 

「んで、どうだったんだい? リアス。此奴は相変わらずかい?」

 

「……えっと、黙秘で」

 

「結構。それで十分だ。アンタはちゃんと兄貴の味方をしたよ」

 

 何かよく分からないけれど、今度は僕の味方をしてくれたリアス、流石は自慢の妹だ。

 だが、レナスには何一つ効果が無く、折角誤魔化してくれた何かを見抜いた様子で呆れている。

 

「本当に仕方の無い奴だねぇ、アンタは」

 

「で、でも大丈夫よ、多分! 誰彼構わずじゃなくって、仲良くなった子に対してだから!」

 

「いや、そっちはそっちでタチが悪いだろうさ。……やれやれ、矢っ張りもうちっと側で教育してやるべきだったかねぇ」

 

 本当に何を呆れられて居るのかが分からないけれど、理不尽な気分さえして来たぞ。

 本当に僕が何をしたって言うんだ?

 

「レナス、流石に酷くない? 僕が何かしたって言うんなら教えてよ。じゃないと直せる物も直せないからさ」

 

「そうだねぇ。ロノス、アンタはもう少し自分の言葉を相手がどうやって捉えるかを考えてみな。感謝やら激励やらを素直に口にするのは結構だ。其処の所は評価してやるよ。でもね、意図通りに相手に伝わらない場合だって有るんだって覚えて置きな」

 

「……うん、分かった」

 

 言いたい事は分かるけれど、それでも呆れられる程なのかは疑問だ。僕が勘違いさせる言い方をしてるって事かな?

 全っ然! 心当たりが無いんだけれど、レナスが僕を心配してるのは伝わって来るし、ちょっと不機嫌なのもこのままじゃ駄目だって事だろう。

 

 例え血が繋がっていなくても僕達兄妹にとってレナスは大切な母親で、絶対の信頼を置いている相手だ。

 人生経験だって豊富だし、ずっと昔からクヴァイル家に仕えてくれている。

 

 だから、言う通りに言葉選びはちゃんと考えてみようか。

 

「……あれ? これって流されてるんじゃ?」

 

「臨機応変だよ、臨機応変。助言は聞き入れつつ自分の意志で決めるべき事は決めな」

 

「若様、母様、出発の準備が整いました。今直ぐ向かいましょう」

 

 大きな鞄を手にしたレナが会話に割り込んで来て、今回のお説教はこれにて終了、今からは次期当主としてのお仕事の時間だ。

 

「気張ってきな。なぁに、アンタだったら何が有っても大丈夫さね」

 

 何時も通りに歯を見せて笑ったレナスは僕の背中を叩いて激励して来て、僕は前のめりにつんのめる。

 

「おっとっと……」

 

 直ぐには止まれず壁に手を伸ばして止まろうとするけれど、手に伝わって来たのは柔らかい感触。

 

「……ぁん

 

 僕が壁に手を伸ばして止まるよりも前にレナが間に割り込んで止めてくれたのは良いけれど、僕の手はレナの胸を掴んだ上に、更にその手に添えられたレナの手によって強く押し付けられる。

 

 この感触はまさか……。

 

「お気付きになられましたか? 若様が触っている胸ですが……今日もブラは使っていませんよ。……あらあら、若様の手から若様の緊張が伝わって来ます。大丈夫、このまま私に身を委ねて……」

 

 教えられた事で嫌でも手に触れる感触が気になって僕の意識が向いてしまう。

 駄目だ、意識するなよ、凄く柔らかくて手触りが良くても!

 

「ふふふふふ」

 

 捕食者はそんな獲物の隙を見逃さず、怪しく笑うと僕を引き寄せて僕の手に添えた手を今度は首に回して抱き寄せた。

 レナの力は鬼だけあって僕よりも強く、振り解けないまま二人は密着して、柔らかい胸に指先が沈み、興奮と緊張から鼓動が早くなって行く。

 いや、レナス……は大丈夫だとして、リアスだって居るんだけれど、これ以上は流石に不味いんじゃ……。

 

「大丈夫、このまま私に身をお委ねて下さい。ああ、そうだ。若様に操を捧げる順番はあの女に先を越されるなら……若様の唇は私が先に頂いちゃいましょう。若様にとって今までで一番気持ち良いキスになればと思います」

 

 悪戯を思い付いたという顔で舌なめずりをしたレナはゆっくりと焦らす様に唇を近付けて、凄く良い匂いがして来る。

 このまま流されるのも有りな気が……でもなぁ。

 

「僕、キスした事無いけど?」

 

 だって女の子と付き合った事なんて一度も無いし、身分差を利用して使用人に手を出すなんてリアスのお兄ちゃん失格な真似なんか出来ないんだから当然じゃないか。

 

「……あっ」

 

 思わず口走ってしまった言葉に僕は即座に後悔したよ、”しまった!”ってね。

 だってレナの事だから”尚更興奮しました。全て私にお任せ下さい”とか言って来るもん、長年の付き合いで分かっている!

 

 さながら肉を前にした猛獣になるんだよ、絶対に。

 元々性に奔放な鬼という種族に加え、レナ自体がそんな感じだからなぁ。

 兎に角、このエロメイドのなすがままには……。

 

「……それは本当ですか? 困りましたね……」

 

 ……あれぇ? 思ってたのと反応が違う?

 僕の告白に戸惑い、本当に困った様子のレナは近付けていた顔を離し、首に回していた手の力を緩める。

 引き剥がすのは簡単だけれど、予想外の反応が気になった僕は様子を伺う事にしたよ。何とか助かりそうだしね。

 

「ギリギリで止めて、若様からキスをして頂く予定だったのですが、経験が無いのならば臆してしまいそうですし……逆にそれの方が都合が良いわね」

 

 はい、気のせいでしたね、助かりません!

 

「若様の初めてと私の初めてを交換する……あの淫乱風純情女が悔しがりそうです」

 

「あっ、レナも未だなんだ」

 

「ええ、若様にお捧げしようと幼心に決めていまして」

 

「そ、そう。嬉しい……のかな?」

 

 

 何時も誘惑ばかりして来て手慣れた様子のレナがキスすら未だなのは意外な様だけれど、確かに僕以外の誰かに同じ真似をしているのは冗談でも見た事がなかったや。

 

 え? じゃあファーストキスも未だなのにノーブラの胸を押しつけたり、夜伽をするとか言って誘惑してるの?

 ……今、ちょっと心惹かれた僕が居た。

 

 

「さて、若様も未経験と知り……尚更興奮しました。全て私にお任せ下さい」

 

 そのまま再び顔を近付けるレナの拘束は振り払えず僕は逃げられない。

 この時、自分が猛獣の前に差し出された生肉にさえ思えたんだ。

 

 って言うか、予想と同じセリフだ。……あれ?

 

 思わず目をつむったけれど唇が重なったと思しき感触の代わりに感じたのは、誰かの手の甲に唇が触れる感触で、ツンとする匂いも感じた僕はそっと目を開く。

 

 

「戯れが過ぎるぞ。例え乳母姉といえども主への行き過ぎた無礼は見過ごせぬ」

 

 目を開けば僕の唇の前に手を差し入れた夜鶴の姿があり、手の平側にはたっぷりのワサビが仕込まれていた。

 

「た、助かった。正直言って本当に怖かったよ。有り難うね、夜鶴」

 

「主がご無事で何よりで御座います」

 

「レナスも止めてよ」

 

「なんでだい? レナをアンタにくれてやるのは既に決めてる事だし、そん時になったらキスだけじゃ済まないじゃないのさ。て言うか、十六になってキス程度でビビってんじゃないよ。少しは女に慣れときな。其処の妖刀娘でも練習相手になって貰えば良いじゃないのさ」

 

「いやいや、忠誠心に漬け込む真似はちょっとね。ねぇ、夜鶴。あれ?」

 

「……はっ!? も、申し訳御座いません。少々思案を……」

 

「ほれ、アンタがキスした手の甲を見詰めてたし、脈無しでもないだろ」

 

「レナスは相変わらずだなぁ。直ぐに色恋に結び付けるんだから」

 

「それが鬼って生き物だ。戦いと美食と酒と色! アタシらはそれだけで十分なのさ。ほら、さっさと出掛けな。遅れたら向こうさんに迷惑だろうが。ポチだって待ちくたびれて窓から顔出してるよ」

 

 おっと、そうだったそうだった。

 僕は目的地に急ぐべく慌てて庭に飛び出した。

 

「お待たせ、ポチ! さあ! 行こう!」

 

「キュイキュイ!」

 

 待ってましたとばかりに翼を広げて低空飛行をしながら僕に向かって来たポチの背中に飛び乗れば、一気に上昇して、あっという間に街から飛び出した。

 

「目的地はゴブリンが管理する金脈! レッツゴー!」

 

「キューイ!」

 

 

 

 

 

 

 さっきからセリフの無いレナ? 口の中に大量のワサビが入って来たから悶絶してるよ。

 

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

  • ポチ
  • レキア
  • 夜鶴
  • ネーシャ
  • ハティ
  • レナ
  • パンドラ
  • サマエル
  • シロノ
  • アリア

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