ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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計略

 ……別に今の私の居場所が恵まれていないとは思っていません。

 皇帝陛下御用達であるアマーラ帝国随一の商会の財力は上位貴族すら上回り、其処の跡継ぎ娘の地位は大貴族に匹敵する。

 

 それは良い。それは良いのですが……只、本来の居場所ではないだけなのです。

 

 

 本来ならば私に約束されていた母の後継者の座を足の後遺症を理由に妹に奪われ、本来なら地位も能力も劣る伯父に建前上の地位が劣るという屈辱。

 ”良い顔をしたい”、”頼られたい”、そんな風に下に見て、実際能力も地位も下だった筈の二人の居場所は私より上で、それがどうしても耐えられない程の屈辱でしたわ。

 

「……見ていなさい。何時か、何時か必ず私の方が上に……」

 

 能力で劣るなら納得もしますし、地位が下ならば諦めもしましょう。

 ですが、能力も本来の地位も下回る相手を上に置かなければならないのだけは……。

 

 決意を決めたその日より私は屈辱と後悔を力に換え、本来ならば学ぶ必要の無いものさえも貪欲に身に付け、代わりに普通の女の子としての幸せ……例えば恋等は放棄しましたわ。

 だって、恋なんて邪魔にしかならないと思っていましたもの。

 

 

「ねぇ、聞いて! 私と彼は運命の出会いをしたんだわ。きっと二人は恋をする為に生まれて来たのね」

 

 商会の跡継ぎとしての仕事の一つに関係する貴族や商会との人脈作りが有ったのですが、彼女はその過程で知り合った”友人”の一人で、既に名前も朧気にしか思い出せない無価値な相手。

 

 えっと、確か顔も家柄も好条件な相手の中から選ぶ立場にありながら、彼女が恋したのは庭師見習いの少年で、反対されるのは分かっていたから家のお金と家宝の首飾りを持ち出しての逃避行、そして悪目立ち散財の末にあっさり捕まった時には家宝は本来の価値からすれば二束三文で売り払われて行方や知れず、純潔も捧げてしまっていて、世間知らずの馬鹿娘に育て上げた親馬鹿両親も大激怒。

 

 えっと、彼女のその後はどうなったのかしら?

 ああ、そうでした、そうでした。……共和国に住む親子以上に歳の離れたガマガエルの後妻でしたわね。確かに両親にとっては大切な子供でも、他に兄弟が居るのですから地位は絶対ではなく、切り捨てられもすると想像出来ない愚かな娘ですわ。

 

まあ、帝国以外の国にもヴァティ商会の力が有れば情報網は広げられる訳で、こんな風に恋なんて物の為に手に入った筈の物を手放した方のなんて多い事でしょう。

 

「……矢張り恋なんて実利を得る為の合理的判断を邪魔する毒でしかありませんのね」

 

 約束されていた場所も健常な足も失う事になった愚かな選択をした馬鹿な自分と報告書の愚者達が重なり、恋の無意味さを確信する。

 

 ……幼心には恋に憧れ、素敵な相手との出会いを無根拠に信じていた私。

 ですが今の私には不必要な物で、目的の為なら嫌悪感しか覚えない相手であっても婚姻を結んでご覧に入れましょう。

 

 

 ……その筈だったのですが、私は愚かさを捨て切れていない未熟者だったらしいのです。

 

 

 あの時、助けて下さった相手が誰か悟った時、私の頭を支配したのは”彼をどうやって引き込み、どの様に利用するか”、それだけでした。

 

 ”時”の使い手であり、聖王国の実質的支配者であるとされる”魔王ゼース・クヴァイル”の孫。彼も、彼の周辺の者達も利用からして魅力的で利用価値が高い。

 

 

「何としてでも取り入り、利用してみせますわ。……その為の知識は今まで必死に身に付けた物の中に有りまして、最終的に自分自身の体を使っても。……相手としては悪くありませんし」

 

 ロノス様は少し中性的ですが整った顔立ちですし、最悪何処かの誰かみたいに歳の離れた相手との結婚も視野に入れていましたが、どうせだったら見た目と性格の良い相手を選びたいって欲は残っていますわ。

 見知らぬ相手を助けに入るお人好しさも手綱を握るには丁度良いとしか思って居なかったのに、気が付けば彼の顔を思い浮かべ、続いて普通の女の子として共に過ごす自分の姿を想像していたと気が付いた時、直ぐに否定しましたわ。

 

「……私は違いますわ。恋なんかで目的も実利も見失う愚か者ではありません。私はあの二人よりも上に行くために今まで普通の生き方を捨てて……」

 

 普通に友達と語り合い、普通に素敵な殿方と出会い、そんな普通の人生を送るという選択肢は確かに存在したのです。

 ですが、私は敢えてそれを捨てて生きて来たのに……。

 

 

 それに命を救われた程度で恋に落ちるだなんて、恋物語のチョロいヒロインじゃ有るまいし、今まで無駄だと遠ざけていたせいで耐性が足りないのですわね……はあ。

 

 

「さて、気を取り直して計画を練りましょうか」

 

 自分の恋心よりも優先すべき事が私には存在する。好きな相手と結ばれる事なんて大した価値は無いのですから、さっさと実利を取りに行きましょうか。

 

 

 クヴァイル家は流石というかお金では動かせず、力だって向こうが上……なら、年頃の殿方相手に有効な色で動かすのが一番と判断し、私は用意した店で勝負に出る事にしましたの。

 

 

 使うのは私自身……でも、都合が良かったのかしら? 

 

 だってほら、他の方と結ばれた場合、恋心が残っていたら不和の元になり、それが家の不利益に繋がるかも知れないじゃないですの。

 

 好きになった相手を利用しつつ結ばれる……ちょっと難易度が高いですが、今の自分の力を試す良い機会ですわね。

 え? 経験は有るのかって?

 

 まさかっ! だって殿方って未経験な淑女に神秘性と憧れを抱くのでしょう?

 だから道具を使った実演での勉強は兎も角、殿方に肌を無闇に見せたりもしていませんわ。

 

 

 ……さて、此処からが勝負ですわね。……情報でももう少し簡単に扱えるお坊ちゃんって感じでしたのに、初見で此方の意図を見抜くだなんて内心焦らされましてよ。

 

 私が自分を値踏みしつつ媚びを売っている事を見抜いて指摘するだなんて、案内した個室の中、目の前で花火を眺めている方への評価を慌てて修正する事になりましたし、第一印象はとても上々とは言えないでしょう。

 それでも街まで警護して下さるお人好しさを見せて頂きましたし、こうして待ち伏せしていたのを気が付いて居ながらも偶然出会ったという嘘を指摘もしないなんて……。

 

 私が利用を開始した後はその辺をしっかりと修正しませんと、同類が次々と群がって来そうだ、そんな未来を想像しながら後ろ手で鍵を閉め、その音に気が付いたロノス様に近寄って行く。

 

「……ロノス様、初めて出会った時の事を覚えていらっしゃいますか? あの時、私は生きたまま貪り食われるのならと自害をする寸前に助けて頂いて……ロノス様に心を奪われましたの。ですからお礼がしたくて……」

 

 これは本当の事だし、我ながら普段以上に恥ずかしがる演技が出来ていましたし、本当に恥ずかしかった。

 胸元のボタンに手を掛けて素肌を晒せば窮屈だった胸元が露わになりますし、これでも普段は殿方とは無闇に接触しませんのになんてはしたない真似を……。

 

「どうか……どうか一時の夢と思って……」

 

「いや、互いの立場からしてそうは行かないよね? 特に君は……皇室御用達の大商会の令嬢で皇帝の娘なんだから」

 

「……知っていましたの。なら、作戦は失敗ですわね」

 

 ロノス様に迫っていた足が届いた言葉でピタリと止まる。本来なら知られていない筈の事を何故知っているのか疑問に思いましたが、少し考えれば簡単でしたわ。

 

「手の者は其方の方が優秀な様で……」

 

 双子を禁忌とし、幼い内は余所で育てるという皇室の掟によって隠されていた私の存在。

 それを知っていたのなら今までの作戦は全て無駄で、なら肌を晒す必要も無いでしょうし、私はさっさとボタンを留めなおし、ロノス様はその間顔を背けている。

 

 あら、結構純情なのですね。……作戦続行で良かったかしら?

 

 

 まあ、第一印象が最悪だったのを強引に盛り返す為の作戦が失敗した今、私がすべき事は一つだけ。

 

「失礼しましたわね。まあ、折角用意したのですし、どうか座ってお食べ下さいませ。所で腹を割って提案させて頂きますが……私と、ヴァティ商会と手を組む気は御座いませんか?」

 

 ……こんな時の為に用意していた策に移行するだけ。

 どうせなら有利な関係が良かったのですが、こうなれば交渉による勝負しかないと思った時でした。

 

 

 

 

 

 

「おや、”神殺し殺し”たる時の使い手の気配を察知してやって来たのじゃが……邪魔だったみたいじゃの」

 

 不意に室内に入ってくる人影と聞こえた声。目を向ければ夜にも関わらず日傘を差した少女が窓枠に立っていました。

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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