ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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止められず抗えず

 詳しい話を聞いた時、僕は今後彼奴の事を心の中で”眼鏡置き器”と呼ぼうか迷い、悩んだあげくに保留にした。

 

「それは何とも早まった事をしましたね、姫様。丁度良い所に武器が届きましたよ」

 

「え? あの、止めないの……ですか?」

 

「はい。必要性が有りませんので。今回の揉め事程度ならば精々かんしゃくを起こした子供同士の喧嘩扱いが関の山でしょう」

 

 ”眼鏡が本体”、ゲームではダメージを受けると眼鏡が割れる事からファンにそんな愛称で呼ばれる”アンダイン・フルトブラント”とリアス&アリアさんの決闘が決まってしまい、僕達は一旦屋敷に戻って話し合いを始める。

 話を聞いたレナは少し呆れた様子だけれど止める気は無いみたいだね。

 只、巻き込まれた形になっているアリアさんは困惑気味だ。闇属性って事で嫌われて過ごして来ただろうに、庇ってくれた相手が決闘をする事になって、その上巻き込まれたんだからさ。

 

 それよりもレナ、彼女が心配しているのは別の事じゃないかな?

 

「リアスなら心配ないよ。僕は妹の強さを信じている。僕が守るべき存在なのは変わらないんだけれどさ。そんな事よりも君は大丈夫かい? リアスに巻き込まれちゃってさ」

 

「わ、私の事は別に良いんです。それよりも……あの……この前はその……」

 

 アリアさんは気弱な様子で僕を上目遣いに見ながら言い淀む。

 気弱で引っ込み思案なのが彼女の性格。……そして本当は暗い過去のせいで心を閉ざしているのはゲームで知っていて、先入観のせいかも知れないけれど何処か不自然さを感じてしまう。

 

「ああ、この前階段から落ちた子だね。落ちる直前に足を捻ったり何処かにぶつかったりはしていないかい? ゴメンね、助け方が変だから驚かしちゃってさ」

 

「えっと、平気です。あの……本当にありがとうございました」

 

「……」

 

 おや、レナは何時もの態度だけれどアリアさんを見る目が僅かながら厳しくなってるね。

 これが黒髪のせいじゃないのは屋敷に連れて来た時の態度からして分かっているんだ。

 何せお祖父様によってクヴァイル家の使用人への教育は行き届いていて、さっきみたいに僕達に完全に畏まっていない態度を取りつつアリアさんへの嫌悪感を態度には出していない。

 

 ……演技だって見抜いて無言で知らせて来ているみたいだし、ゲーム通りと見て間違い無いらしい。

 問題は攻略キャラとの触れ合いで相手だけでなく自分自身も心の傷を癒して成長に繋げる事だけれど、この世界に心理カウンセラー的な専門家が居るのなら任せたいんだけれどな。

 

 一応、孤児だの戦争で心の傷を負った人達に寄り添って立ち直る手助けをしている神父やシスターが居たりするけれど学問として学んだ訳でも無いし、ゲームでは偶々上手く行っただけって可能性も有るしさ……。

 

「それで決闘ってどうするんだったっけ、お兄様?」

 

「いや、忘れちゃったの?」

 

「リュボス聖王国のは覚えてるわよ。アース王国での方法を覚えていないだけ。ねぇ、アリア……アリアって呼び捨てで良いわね? アリアなら知ってる?」

 

「は、はい。一応知識としては……」

 

 あ~あ、勝負だ何だって言っておきながら決闘の作法を知らないものだからアリアさんだって戸惑った様子だ。

 困った様に、でも何故か少し嬉しそうにしながらも説明を始めてくれた。

 

「今回は向こう……アンダインさんが手袋を投げたので決闘を仕掛けたという事になりますし、決闘場所と介添え人の人数、代理人の可否は向こうが決めます。決闘が決まった日以内に詳細を送って来る筈ですが……」

 

 アリアさんが其処まで説明した所、丁度良いタイミングで向こうからの手紙がリアス、いや、リアスとアリアさん宛てに届いた。

 

「矢っ張りアリアと私の二人相手って事になってるわ。眼鏡の方は一人だから誰か助っ人を雇うのね。期日は……三日後の休日に学園の敷地内にある地下洞窟の奥で向こうが待ってる、と」

 

「わ、私達二人ですかっ!? 多分向こうは凄腕の助っ人を雇います。もし私のせいでリアスさんが怪我でもしたら……」

 

「はっ? どうして私が怪我をしたらアリアの責任なの?」

 

 この時、リアスとアリアさんは二人揃ってキョトンとする事になった。

 

「え? だって私の属性が……」

 

「いや、だから闇属性だって事ごときを怖がって遠ざけるのは向こうに自信が無いからだし、私は気に入らないと思ったから自分の意志で止めに入ったの。貴女の影響なんて欠片も無いし、責任転嫁する小物ではないわよ、私? 言ったじゃない。私は世界で二番目に強くなれるって。……じゃあ、早速準備をしましょうか。お兄様、ポチで送って貰える?」

 

「え? 準備ですか? えっと、何をしに何処に?」

 

「うん? 決まっているじゃない。ダンジョンよ、ダンジョン。折角の機会だし、貴女に下手に手出し出来ない位に強くなりましょう」

 

 可愛くて努力家で素直なリアスだけれど、兄としては少し強引な所は直して欲しいかな?

 未だ状況が飲み込めないアリアさんの手を取って、装備を整える為と言いながら別の部屋に連れて行く姿は微笑ましいけれど、巻き込まれる方は大変そうだからね。

 

「……若様、彼女ですが表面に出す殆どの態度が偽りです」

 

「だろうね。でも、全部じゃない。誰だって本音と建て前は使い分ける物さ」

 

 居なくなったのを見るなりレナが忠告してくるし、その瞳からは乳母姉としてと使用人としての心配が込められている。

 まあ、闇属性が不吉の象徴だの災いを呼ぶだのって伝説は歴史の授業で散々習ったし絵本にだってなっている程だ。

 僕やリアスだって彼女の力が重要でなければ前世の記憶が有ってもわざわざ近付こうとはしなかったかも知れないしね。

 

「レナの心配は分かるけれど、こうして関わって話をすれば感じる物だってある。色眼鏡を抜きに見れば悪い子じゃないし……彼女、家柄とか闇属性だって事的に卒業後は関わる可能性は低いでしょう?」

 

「成る程。卒業後の影響を気にせず接する事が出来る相手という事ですね。闇属性は特殊な力ですが若様達もそれは同じ。……ですが一応一言だけ」

 

 どうやら僕の伝えたい事は伝わったらしく、レナは納得してくれたらしい。

 アリアさんが持つ力は希有で、ゲームと同じならば他の人達よりも才能だって抜きんでている筈だ。それこそ僕達兄妹と競い合うには足りる程度にはね。

 どうせ力を求めるなら競うに足りる相手が欲しいし、どうせなら仲良くだってしたいんだ。

 

 でも、それを理解した上での忠告って一体何だろう? 僕が疑問に思う中、レナは必要以上に体を密着させ、僕の耳に息を吹きかけた。

 

「ひゃっ!?」

 

「おや、随分と耳が敏感ですね。それはそうと、若様。今後、体を使って取り入る為に色仕掛けを受けるでしょう。情の厚い若様ですし、欲望に負けて手を出せば無下に扱えない筈。……お年頃ですし、我慢出来ない場合は私にお任せを」

 

「いや、レナに手を出すのはちょっと。僕が我慢すれば済む話だし……」

 

「ああ、妊娠を気にしているのですか? 若様は知らないでしょうが、直接的な行為以外にも殿方を満足させる方法は心得ています。……入学祝いに今晩にでも試しますか? 勿論姫様には内緒で」

 

「っ!?」

 

 ……これは多分冗談だろう、そんな風に思いながらレナから離れるけれど、腕に当てられた重量感の有る柔らかい感触は暫く忘れられそうになかった。

 

 

「ふふふっ。照れる姿も可愛らしい。今すぐにでも食べてしまいたいです」

 

 ……冗談だよね?

 

 眼鏡の奥でレナの瞳が怪しく光り、僕は背筋がゾッとするのを感じた。だって彼女が本気になった場合、()()()()()僕じゃ太刀打ち出来やしないからね。

 

 

「さてと……僕も準備するか」

 

 この決闘は二人の物であり、僕に介入する余地は存在しないし、そもそもする必要なんて最初から無い。

 これは二人の誇りの為の戦いであり、アリアさんにとっては負ければロードしてやり直せるゲームとは違う、人生に関わる重要な戦いだから。

 

 ならば僕がすべきなのは最大限の手助けしかなくて、その為の準備で向かったのは屋敷の裏庭だった。

 

 

「……さて、本気で行かなくちゃね」

 

 

 

 

 気合い十分に裏庭に向かった時、最初に目に入ったのは食い荒らされた馬の残骸。続いて聞こえたのは骨を踏み砕き、砂を蹴り散らす音。

 

「キュィイイイイイイイ」

 

 まるで獲物を威嚇し恐怖で硬直させようとする鳴き声を発しながらその巨体は僕に向かって少しずつ歩み、距離を積める。

 鷲の上半身にライオンの下半身を持ち、牛や馬を数等同時に運べる程に大きい。瞳は鋭いながら高い知性すら感じさせた。

 

 この怪物の名はグリフォン……ドラゴンに次ぐ天空の支配者だ。

 

「キュイッ!」

 

 グリフォンは興奮した様子で嘴をガチガチと鳴らし、一度大きく鳴くと共に僕に向かって跳び掛かった。

 

 

 

 

「お兄様っ! 間に合わなかった……」

 

「ロ、ロノスさん……?」

 

 少し経って慌てた足取りと共にやって来た二人の足音が聞こえて来るけれど遅かったよ。

 ああ、僕はすっかりやられてしまったんだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほ~ら、ほ~ら! 可愛いでちゅね~! ポチは本当に可愛くてお利口な良い子でちゅよ~」

 

「キュ~イ!」

 

 翼が汚れるのも気にせずに仰向けになり、お腹を見せて撫でろとばかりに体を擦り寄せる。

 最初はお腹の中央を円を描く様に、続いてお腹から胸、最後に喉を撫でるとゴロゴロと気持ち良さそうに喉を鳴らした。

 

「そうでちゅか~! 此処を撫でて欲しいのでちゅね~!」

 

 ああ、駄目だとは思っていたのに僕は何時もこの子の可愛さにやられてしまうんだよね……。

 

 

 

 

「・・・・・・えっと、あのグリフォンは?」

 

「お兄様の飼いグリフォンのポチよ。見ての通りに溺愛してるの。あの子に乗って行く予定だったけど遅れそうね」

 

 

 

 ああ、駄目だと分かっているのに手が止まらずポチを撫で続けてしまう。

 

「この国に来る時は手続きに手間取って後から来たけれど、先に出発する時に聞き分けが悪くて。……お兄様ったら一度ああなったら長いんだから」

 

 例え妹に呆れられたとしても……。

 

 

 

 

 




もうちょっい感想増えぬ物か

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

  • ポチ
  • レキア
  • 夜鶴
  • ネーシャ
  • ハティ
  • レナ
  • パンドラ
  • サマエル
  • シロノ
  • アリア

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