ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
「キュイキュイキューイ!」
ポチの背に乗り空を行く。元気に鳴くこの子が好きな高度は春先であっても肌寒く、高速の変速飛行によって受ける風は寒がりの僕にはコートがあっても少し寒い。
でも……。
「あ~、癒される。モフモフモフモフ~! 此処でちゅね~! ポチは此処が大好きなんでちゅよね~」
「キューイ!」
ポチの羽毛は柔らかくって暖かく、何よりも凄く可愛いから空の旅は快適なんだ。
羽毛に腕を埋めてかき回して堪能し、続いてポチが撫でられるのを好む首の辺りを撫で回せば、くすぐったそうにしながらも上機嫌な鳴き声。
こうしているだけで凄く癒されて、今から向かう先への憂鬱な想いが薄れて行くみたいだった。
「本当は庭でポチと遊んでいたいんだけれど、貴族ともなればそうはいかないからねぇ。その代わり、移動中は存分に撫で回してあげまちゅよ~」
背中でうつ伏せに寝転がって両脇を撫で回し、体を起こして頭と顎を同時に撫でる。
この時間こそが至福であり、仕事への活力を与えてくれる最高の瞬間。
「仕事だし仕方がないんだけれども……はあ」
まあ、それでも嫌な物は嫌だし、許されるならずっとこうしていたいんだけれど、そんな怠慢は僕自身が許せない。
でもなあ……。
学校が終わって直ぐの仕事自体は別に構わない。だって前世でも学校後に夜遅くまで塾で勉強していた人は居るし、僕みたいに次期当主って立場なら大体同じ様な物だ。
流石にこうやって任務をこなしはしなくても、学園で学ぶ事以外にも自分の領地に合った内容を学ぶのが大変だって声は学園で聞くし、それが面倒とは思っても理不尽だと口にする奴は居ない。
だから僕の憂鬱は別の理由から来ているんだ。
「前世だったら同じシチュエーションを楽しみにしていたんだけれど、今とは立場とかが違うからなあ。……実の祖父と会うのに此処まで気が重いなんて貴族は大変だよ。ウチが極端なケースなのだろうけれど」
今回の任務は国境近くの山で増えたモンスターの処理。縄張り争いに負けて移動して住み着いたのが原因で、前から山に住んでたのさえ追い立てられたりで周辺の街や村にまで被害が出てるって状況だ。
本来なら軍に任せる所だけれど、山の途中に国境線が在って、偶に揉める所だから下手に人数は寄越せない。
幾ら宰相の娘が王妃をやっていたとしても反発する貴族は居るし、余計なゴタゴタ避ける為に、こんな場所でのトラブル解決には少数精鋭だって決まっているんだ。
「……さて、そろそろ見えて来る頃かな? 先ずはお祖父様にお目通りをっと。…やだなぁ」
そんな問題を抱えた山が有る領地だけれど、丁度視察にお祖父様が訪れて居るからって顔を見せに行く事になっているんだけれど、向こうからすれば無駄だけれど建て前としては会わないといけないって面倒な状況だ。
あの人の機嫌が良い時の顔なんて生まれてこの方見た事が無いけれど、絶対に機嫌が悪いよ……。
僕とリアス、そして陛下の祖父でありリュボス聖王国宰相の”ゼース・クヴァイル”。
”人間として当然持ち合わせる思い遣り以外の総てを兼ね揃えた人”ってのが孫一同の認識で、外交や内政その他諸々を取り仕切り、後進の育成や人材の発掘にも余念が無いって人で、若い時は戦場で活躍し、火の魔法と槍術によって数多くの英雄豪傑を撃破、”魔王”と恐れられたらしい。
尚、孫一同揃って恐れている対象で……ゲームでの裏設定ではレナスの死を招いた犯人であり、リアスを歪ました原因であり、最終的に僕が殺した相手。
「……顔を思い出しただけで疲れて来たよ」
ゲームとは違う行動をしたからかレナスの死に繋がった襲撃事件は起きていないし、多少ながら僕達との関係だって変わっている。
”有用かも知れないが危険”から”危険だが有用”位には違う筈だし、ゲームでの事なんて夢の中の出来事みたいな物だから恨んだりは当然しないよ。……恐れてはいるけどね。
あの人は国の為なら自らの死さえも計画に組み込み、身内を手に掛ける事すら躊躇しないってのは付き合いによって理解している。
僕の一時的な弱体化に繋がっている”あの魔法”だって、退き際を誤れば交渉材料としては無意味になってしまうだろう。
あー、本当に気が重いや……。
さっさと会って形式だけの挨拶を済ませたら任務に取り掛かって、直ぐに終わらせて屋敷でポチやリアスと遊びたい……。
「キュイ!」
錐揉み回転をしながらの直進中、急にポチの動きが止まり、一鳴きで敵の襲来を告げる。
「ピー!」
「ペン……ドラゴン。”チャイルドドラゴン”か……」
目の前に現れたのは必死に翼を動かして空を飛ぶ小型犬サイズのピンクのペンギン。
うん、この世界のドラゴンは前世のペンギンの見た目だって分かってるのに、こうして実際に目にすると違和感が消えてくれない。
て言うか、可愛いし抱っこしたいんだけれど、ドラゴンだから凶暴なんだよね、残念。
”魔女の楽園”、この世界に酷似したゲームに登場するモンスターは乙女ゲームだからか可愛らしい見た目が多いけれど、それでもモンスターだ。
特定のイベント戦闘以外は負けたらゲームオーバーで、ゲームオーバーを表示する画面の背景にボロボロのお墓が描かれていたし、つまりはそういう事なのだろう。
こうしてモンスターに襲われる場合、その理由は縄張りに入ってしまったりして敵と認識されたか、もしくは補食の為。
当然ドラゴンは草食じゃ無いし、ペンギンだってそうだ。
尚、チャイルドドラゴンって名前だけれど、成長しても他のドラゴンの幼体程度の大きさにしかならないだけで子供って訳じゃなく、今は巣でお腹を空かせて待っている雛の為に餌を探し、大物を群れで狙って来たって事だ。
ペンギンは飲み込んだ魚を吐き出すけれど、ドラゴンは確かグチャグチャの肉団子にして与えるんだっけ?
「僕、鳥は好きだけれど君達に食べられて喜ぶ程じゃないからね。さっさと通らせて貰うよ」
「キュイ?」
え? ドラゴンだから鳥じゃないって? うん、そーだね。
僕達を前にして嘴ガチガチと鳴らして威嚇するチャイルドドラゴン達。本当なら精々が自分達の四倍程度の大きさの獲物を狙う程度だし、心なしか痩せて見える。
「ああ、成る程ね。君達も縄張りを追われた口か。馴れた狩り場を仕えなくって困っているんだね。うん、これは困った……」
どうやらチャイルドドラゴン達がこうして襲って来たのには僕が今から向かう先が関係しているらしい。
縄張りを追われたのが周辺に被害を出しているって話だけれど、前回の報告の後に小型でもドラゴンの群れまで追われるなんて、これは退治対象の危険度を上げて置くべきだ。
さて、今は目の前の相手に集中しようか。
相手はドラゴン、小型犬サイズの可愛らしい鳥類の見た目をした……肉食の猛獣だ。
「まあ、生存競争だ。獲物が反撃して来るって君達も知っているだろう?」
人里離れた場所で獣を狩るのならそれで良い。わざわざドラゴンの縄張りに危険を冒してまで行くメリットは少ないからね。
でも、縄張りが大きく変わって、人を一度襲った熊が肉の味を知って再び人を襲うみたいに街や村が襲われてからじゃ遅いから……可愛かろうが此処で駆除させて貰うよ?
「……ピー」
でも、僕が覚悟を決める決めない以前にチャイルドドラゴン自体が戦う気満々みたいで、僕の魔力が高まったのを警戒してか全身の毛が膨れ上がってモコモコになっている。
……可愛いなぁ。
元々グリフォンは群れればドラゴンさえも狩る種族で、チャイルドドラゴンが群れても敵うはずがないって本能で分かっている筈だ。
それが僕の魔力を感じ取っても逃げ出す様子すら見せないってのだから余程追い詰められているんだろう。
「窮鼠猫を噛む……だっけ? ポチ、油断せずに行こう」
「キュイ!」
僕の呼びかけにポチが元気良く鳴き、チャイルドドラゴン達は空高く飛び上がり、腹を下にして嘴を向け、勢い良く滑空して来た。
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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レキア
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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サマエル
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シロノ
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アリア