ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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お姉ちゃん?

「・・・・・・そっか、私って死んじゃったんだ」

 

 八歳の誕生日、私は同じく八歳で死んだ前世の記憶を取り戻した。

 自分でも不思議な位に死んだ事への恐怖は無かったし、同じ八年間リアスとして生きてきたんだから自分が自分じゃないって感覚だって薄い。

 例えるなら夢の内容を鮮明に覚えているって感じかしら? ……あれ? 私ってこんな例えが出るだなんて天才じゃないかしら?

 

 まあ、だから、さ、さ、錯……混乱する事は無かったけれど、それからの日々で感じたのは寂しさよ。

 側に居る家族がお兄ちゃんだけで、母親代わりのレナスは結構出掛けたりが多くって、残るのは乳母兄弟のレナだけ。

 家が家だから友達だって思っていた子達も一歩も二歩も親の言いつけで引いた状態だったし、ハッキリ物を言って来るのはチェルシーだけ。

 リアスの人生だけならそれで何も思わなかったし、それが普通だったのだけれど、前の人生での友達や家族の事を思い出したらもう大変。

 だって、周りの人との関係に関しては背負う物の無い前の私の方が恵まれていたもの。

 

 寂しくって、泣きたくって、それを同じだけ生きているリアスとしての部分が抑え込む。

 ”私はリアスだ。クヴァイル家の一員だ”って感じで。

 

 もう二度と会えないお姉ちゃんとお兄ちゃんの事を想い、今のお兄ちゃんが居るから何とか耐えて……お兄ちゃんが前のお兄ちゃんじゃなかったら、私って周囲の人間に持ち上げられて調子に乗ってたでしょうね。

 

 ……うん、何か前世の記憶と照らし合わせて見てみたら正直言って連中の態度って有り得ないわ。

 聖女だなんだのって誉めるけれど、自分が頑張って手に入れた物でもないのに誉められても嬉しくないし、それを鍛えたのは私なのに、光属性である事だけを誉めたり才能だとか言われても微妙だっての。

 

「あ~! 思い出すだけで腹が立って来たっ!」

 

 そんな私はラッキーガール。丁度獲物が現れた。

 

「ピヨ!」

 

「絶好の八つ当たり相手発見っ! 飛んで火に入る……本の虫?」

 

「夏の虫です」

 

 街から外れた道端で休んでいる私達を絶好の獲物だと狙ってか、モンスターの群れが姿を現した。

 ヒヨコの頭にゴリラの胴体を持つ”ヒヨコング”。……可愛くない。頭だけは可愛いのに胴体がゴリラだからアンバランスで凄くキモいわね、此奴。

 

 ドラミングをしたり、拳を地面に叩き付けるヒヨコングだけれど鳴き声だけは頭の通りの可愛いヒヨコで、声が小さいから大きな音にかき消されてる。

 

「……姫様、クヴァイル家の令嬢ともあろう方が八つ当たりでモンスターに挑む等と口にしないで下さい」

 

「え~? 今更じゃない」

 

「せめて”凶暴なモンスターを見過ごせない”とかもっともらしいのを適当に。聞いた方が勝手に都合良く解釈しますから。……はあ」

 

 レナったら本当に口五月蠅いんだから!

 わざとらしく溜め息なんてついちゃって、大袈裟に肩を落とす。私がお転婆だとか粗野だなんて昔からの付き合いで知ってる筈だし、”聖女”として動く時には猫被ってるんだから構わないんじゃないかしら?

 

 まあ、それを口にしたらお説教されそうだから口にしないけれど。

 

 囲まれているにも関わらず呑気に話をする私達に徐々にヒヨコング達が近付いていて、その内の一匹が拳を振り上げてレナの背後から飛び掛かる。

 

「ちょっと待っていて貰えますか?」

 

「ピヨ!?」

 

 振り下ろされた豪腕、それを受け止めたのはか細いレナの腕。真上から必死に力を込めるヒヨコングだけれど少しも押し込めてなく、何かがおかしいと感づいたのか真後ろに飛び退いたヒヨコングの胸をレナの拳が貫通した。

 

 胴体はゴリラなだけあってヒヨコングは頑丈で、並の人じゃ鋼の剣でも胸を突き刺すのは苦労するのにレナは無造作に後ろに振るった腕で貫き、そのまま心臓を掴んで引き抜く。

 

 ……この時、胸が激しく揺れていた。

 

「いや、ブラしないと崩れない? それに動きにくいでしょ?」

 

 それを考えると戦いに都合が良い貧に……慎ましい大きさの胸が一番ね。レディーが胸をブルンブルン揺らして戦うとか駄目よ。

 

「鬼ですからこの程度でどうにもなりませんよ。それに若様に押し当てるならこれが都合が良いでしょう?」

 

「……あー、はいはい。そうねそうねそーですね!」

 

 こんな風に話しながらもレナは適当な動きで次々にヒヨコングを肉塊に変えて行く。しかも、使う必要がない相手だからって技もへったくれも無い単純な力業で。

 

 これが”鬼”が持つ圧倒的な戦闘力。鍛えれば鍛える程に他の種族とは隔絶した伸びを見せる。

 でも、それは鍛えたらの話で、鍛えなければそれ程強くはなってくれないからナイスバディで美人なエロメイドでしかないんだけれど、レナって私達がレナスから受けた特訓に巻き込まれたのよね。

 

 そう、あの地獄に引きずり込んじゃった。レナスったら”鍛えてやる気は無かったけれど二人のついでだ”って感じでメイド修行の合間に。

 

「えっとさ、今更だけどごめんね?」

 

 私も同じくヒヨコングの首の骨をハイキックでへし折ってから謝る。

 レナスから受けた修行は本当に厳しくて今でも思い出せば身震いする程。

 私やお兄ちゃんは必要だったから逃げられなかったけれど、レナは違う。何時でも投げ出せた。

 それはきっと母親に相手をして欲しかったからだけじゃなくって、きっと私達に付き合う為だと思うわ。

 

「何の事かは分かりませんが、私は謝罪よりもお礼の方が嬉しいですね」

 

「そっか。じゃあ、有り難う、レナ」

 

 互いに背中を合わせてヒヨコングの群れに向かい合う。この程度のモンスターなら一人でも楽勝だけれど、ゴリラなだけあって糞を投げるのよね。

 絶対に受けたくないわ! 臭いし汚いし服を汚し過ぎたらメイド長に叱られる!

 

 正直言ってどんなモンスターより怖いわよ!

 

「お気になさらずに結構ですよ。私にとって姫様は主であり、同時に可愛い妹。”お姉ちゃん”は妹の世話をするものだと母様から教わりましたから」

 

「うん、そうね。頼りにしているわよ、レナ!」

 

「他に誰も居ませんし、”お姉ちゃん”でも良いですよ? ふふふふ」

 

「……それはちょっと無しかな? ほら、さっさと終わらせて山に登るわよ!」

 

「そうですか……」

 

 あ、ちょっと落ち込ませちゃった? でも、駄目なのよね。

 私にとってレナスはお母さん同然で、レナはお姉ちゃん同然。

 それでも”お姉ちゃん”と呼ぶのに抵抗が有るのは前世のお姉ちゃんの存在があるから。

 

 姉妹同然だけれど矢っ張り何処かでは主従で、クヴァイル家のリアスとしての私を求めるレナと違い、お姉ちゃんは無条件で何時だってお姉ちゃんだった。

 

 本当の姉妹だからとか、貴族じゃないからとか、確かに違いは色々有るし、レナに文句なんて言いたくないけれど、私に”妹”である事だけを求めて守ってくれたお姉ちゃんだけは絶対なのよ。……それこそ今の人生でも”お兄ちゃん”なお兄ちゃんと同じ位に。

 

 だから私が”お姉ちゃん”と呼ぶのはお姉ちゃんだけ。だって、そうじゃないと私とお姉ちゃんの繋がりが途切れてしまいそうで怖い。

 

 お兄ちゃんは私と同じ様に再会出来る事を望んでいるけれど、私も同じく望みながらも無理じゃないかって思っているわ。

 

「ピヨ!」

 

「うっさい! さっさと全部くたばれ!」

 

 真上から叩き付けられた拳を掴み、そのまま武器みたいに振り回して他のヒヨコングを倒して行く。背後ではレナが頭を握り潰したり、首をねじ切ったりと次から次へと倒し、結局遭遇してから最後の一匹が逃げ出すまで五分も必要無かったわ。

 

「姫様、若様にはお話した方が良いですよ? 私には話せない事でも若様にならば大丈夫でしょう?」

 

「……うん」

 

 戦いが終わった後、少し心配した声でレナに言われちゃった。全部見抜かれてたみたいだし……レナも何だかんだで”お姉ちゃん”なのよね。

 

 

 

「ええ、その通りですよ、姫様……で宜しいですね?」

 

「誰!? って、黒髪!?」

 

 突然聞き慣れない声で話し掛けられた私が相手を見れば、立っていたのは左目を眼帯で隠した黒髪の女の人だった。

 

「お初にお目に掛かります。私は”プルート”。お求めだった占い師です」

 

 

 

 それと年齢は二十代から三十……。

 

「二十代前半ですよ? ええ、後半でも三十代前半でもなく、二十代前半です」

 

 心を読まれたっ!? あと、怒ってる!?

 

 

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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