ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
結論から先に言おう。……山に来て良かった!
「キュイキュイキュイキュイ!」
普段は屋敷の庭で馬とかを狩って食べているポチだけれど、目の前にはモンスターの群れ。狩猟本能刺激されちゃって、大はしゃぎで向かってる。
邪魔になる木は風の刃で切り裂いて、アラクネの人間部分の頭を爪で切り裂く。でも、それじゃあ駄目だ。
アフロを切り落とされても人間が死なないのと同じで、アラクネの人間部分は甲殻が盛り上がって、それを魔力で本物みたいに動かしているだけだ。
一切痛みを感じた様子を見せず、その勢いで蜘蛛の部分も切り裂いた。
正直言って凄い光景だ。うん、端から見ればグリフォンが人間を襲ってるみたいだし、ポチだから勇ましく見えるけれど、これが別のグリフォンだったらと思うと……。
「キューイ?」
「だから食べちゃ駄目だって。さっきドラゴン食べたでしょ?」
「キュイィィ……」
アラクネを食べたいって顔だけれど駄目な物は駄目、許さないからね。最近間食が多いんだから!
「矢っ張りもっと狩りがしたいのかなぁ?」
元気一杯でモンスターを蹂躙する姿にちょっと思う所がある。馬とか牛じゃ獲物として張り合いが無いんだろうなあ。僕が遊んであげるだけじゃ足りないのか……。
「定期的に狩りにでも連れて行ってあげようかな?」
「キュイ!?」
「うん、本当本当。忙しい時は誰かに代役頼むから楽しんで来てよ」
「キュイ……」
え? 僕と一緒じゃないと嫌?
「そうなんでちゅか~。可愛いでちゅね~」
このままポチと遊んでいたいけれど、今は我慢して仰向けになったポチの腹を撫で回すのに留める。あっ、アラクネの体液が付いてるし、後で水浴びでもさせないと。
「それにしても……」
アイエー山に足を踏み入れた時、最初に感じたのは住み着いたモンスター達の警戒だ。一気にざわついて逃げて行くのを感じたよ。
人間の強さは魔力の感知をしなければ余程の使い手でも無い限り分からないんだけれど、グリフォンみたいな種族相手なら話は変わって来る。
草食動物が肉食獣を本能で恐れるみたいにグリフォンという捕食者への恐怖は本能に刻まれていて、鳴き声を聞き匂いを感じ姿を目視した時点で一目散に逃げ出したんだけれど、それが狩猟本能を刺激したのかポチは大いに興奮した様子で追い掛けたんだ。
僕も必死に後を追い掛けたよ。仕留めたモンスターを間食にしない様にってね。
そして、その結果……迷った。
「ポチに飛んで貰えば分かるんだろうけれど、本命に警戒されるのも面倒だしな」
今回の任務のターゲットは実力差も分からず本能だけで襲って来たアラクネみたいな雑魚じゃない。チャイルドドラゴンと違って飢えで追い詰められて向かって来たのと違い、山の奥の方に生息して大型の獣やモンスターを狩るのがアラクネの生態だったんだけれど、こんな山の麓からそれ程離れていない場所で襲って来たのはチャイルドドラゴンと同様に生息域を変えざるを得なかったと考えるのが正解だろう。
「厄介だな……」
ゲームでも暗にほのめかされていたし、野生の獣に襲われたのなら当然だけれど、モンスターに遭遇して敵や獲物と判断された場合、撃退する力が無ければ死んでしまう。
こっちが縄張りの外まで逃げ切ったり見失ったりすれば別だけれど、気絶や大怪我で済ませてくれないのがモンスターだ。
その上、下手な獣よりも強いから弱者の対抗手段は実力者に守って貰うか生息域を調べて接触を避ける事。
幸いゲームで特定の場所にだけ出現するみたいに縄張り意識が強いモンスターは縄張りの外には出ないんだけれど、今回は何らかの理由で余所からやって来たのに縄張りを追われ、結果として人間が襲われる事になっているから早い内に倒さないと。
そうすれば元の縄張りに戻るのは研究で分かっているし、下手に隠れられて長引けば人間の味を覚えた他のモンスターが積極的に街や村を襲うからね。
「ギィ!」
人の部分から発する声は見た目通りの妖しい笑い声だけれど、本当の口からは耳障りな金切り声が発せられ、漸く相手の強さを理解したのかアラクネ達は逃げ出した。
狭い場所では邪魔になる人間部分を切り捨て、暫く蠢くそれを囮に慌てふためいて逃げて行くんだけれど、ポチは賢い子だから通じないさ。
「ポチ、ちょっと僕も戦うよ」
抜刀からの低姿勢での構え。鍔鳴りが響き、足に力を入れて一気に踏み込む。
僕が迫るのが分かっているのか蜘蛛の巣状に広がる糸をお尻から放ったけれど、既に僕は追い越している。
「はい、終わり」
数歩先で足を止め、納刀。アラクネ達は空中でバラバラになって周囲に死骸を撒き散らす。
これでアラクネは全部倒した。……正確には襲って来たアラクネを全部だけれど。僕達が逃げ出した時に立ちふさがる役目のが一匹だけ反対側の木の上で待機していたからね。
隠れているつもりなのか動かずにこっちを観察しているけれど、人間部分が葉っぱの中から頭を出していて凄く目立つね。所詮は虫だ。
「一応狩って……これだから嫌なんだ」
地中から伝わって来た揺れに僕は顔をしかめポチも地面に鼻を近付けて匂いを嗅ぐ。
唯一気が付いていないのは木の上のアラクネで、僕達が気が付いて居ないと思っているのか木から飛び降りて逃亡を図る。
「モンスターの生息域が急に変われば、それを餌にするモンスターまでやって来るんだからさ。……そんなのは大抵強いんだから面倒だよ」
アラクネの脚が地面に着く寸前、影が掛かった場所が盛り上がって地中から七色の体を持つ巨大なミミズが飛び出してアラクネを一口で食べる。
バリバリと噛み砕く音が聞こえ、その度にヌメヌメと光る巨体が揺れて気持ち悪かった。
「……長くてヌメヌメって、僕の嫌いなジャンルだよ」
”虹色オオミミズ”っのが目の前のモンスターの名前で、ゲームでは三番目のダンジョンのボスモンスターだった。
ヌメヌメテカテカの体をクネクネ動かし、殆ど機能していない視力の代わりに発達した嗅覚で周囲の状況を探っているみたいだ。
基本的に餌にしているモンスター以外の獲物は狙わないけれど、人間が生える程に巨大な蜘蛛を一口で食べる程なんだから凄く大きく、その気が無くても身動ぎ一つで被害が出る事だってあるし、アラクネが人里に現れて、それを追って虹色オオミミズが現れたらどんな被害が出るのやら。
周囲に散らばったアラクネの死骸の匂いを察してか、しきりに頭を動かしたかと思うと上から覆い被さる様にして次々に飲み込む。
その動きが途中で止まり、頭を僕とポチの方に向けて来た。
口の中にはビッシリと生えた細かい歯。研究資料では回転しながら内部が収縮して獲物を擦り潰したり砕いたりするらしいんだけれど、どうも嫌な予感がするな……。
「ポチ、何時でも動く準備をしてて……」
さて、この虹色オオミミズだけれどゲームにおいては体内で生成されるとある物体目的に住処の洞窟に向かい、リアスの命令で後を追い掛けて来たチェルシーが攻撃する事で怒らせて戦いになるんだけれど、本来なら人間を襲わない虹色オオミミズに襲われるケースとして不用意な行動で敵認定される以外にももう一つ。
「ヤバい。完全に勘違いしてるぞ……」
それは嗅覚が発達した事により僅かな匂いでも獲物を探し出せるって事に起因する。僕とポチはアラクネと戦ったばかりで多少なりとも体液が付着してしまっている。
そう、餌にしているモンスターと勘違いされる事で虹色オオミミズに襲われるんだ。
「……こんな時こそ夜鶴の出番だけど、今日は休暇与えちゃったからなぁ」
有能で冷静で道具として振る舞う事に誇りを持つ、そんな彼女の姿を思い浮かべる。
ついでに恥ずかしがっている時の可愛らしい時の姿も思い浮かべた。
わか太郎さんに依頼
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
-
ポチ
-
レキア
-
夜鶴
-
ネーシャ
-
ハティ
-
レナ
-
パンドラ
-
サマエル
-
シロノ
-
アリア