ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
僕はどうも小さい頃からミミズが嫌いだ。
今の人生も前世でもあの見た目が凄く嫌で、前世の記憶が戻った事で嫌悪感が足し算どころか掛け算にまでなっている。
つまり……。
「近付きたくないし、更に言うならグチャグチャになった死骸も見たくない」
長くて太い胴体を地中に残したまま蠢く虹色オオミミズは見ているだけで気分が悪くなる程で、テカテカ光る粘膜が飛び散りそうで接近戦はしたくない。
なら、ポチの風で切り裂く? ……駄目だ。バラバラになった死骸も見たくない。
このまま逃げる? のは、最後の手段だ。この山に縄張りを移したアラクネさえ倒してしまえば次の餌場を探して移動するだろうから。
でもなぁ。僕、此処には仕事で来ているから一旦逃げ帰るって選択肢は取れないんだよな。
結論。死骸の見た目がそれ程グロテスクじゃない倒し方で倒す。
「火や雷……はこんがり焼けた香りが漂いそうだし」
「キュイ!」
嫌な光景を想像して一瞬飛んだ意識がポチの鳴き声によって戻って来た。
おっと、危ない。体当たりでもされたら酷い目に遭う所だったよ。
虹色オオミミズは好物であるアラクネの体液が付着した僕達をアラクネだと思っているみたいだけれど、同時に僕達自身の匂いもするから混乱しているのか今すぐ向かって来る様子はない。
でも逃げたら迷わず追って来そうだし、此処で相手をするしかないからって迷っていると虹色オオミミズは口を閉じ、頭を大きく膨らませる。
って、不味い!
「ポチ!」
名前を呼ばれると同時にポチは僕の服を咥えて飛び上がり、同時に先程まで居た場所に向かって虹色オオミミズの胃液が吐きかけられた。
刺激臭する黒い液体で、擦り潰されて消化が始まったアラクネの死骸が混ざっている。
うえっ! 思いっきり吐瀉物だし、糸引いてるから粘性が高いな。しかも此奴って毒持ってるし……。
更に嫌悪感が高まる中、虹色オオミミズは胃液を吐きながら首を振って僕達を追って来る。
「ふざけるな! 自分のゲロ付いた餌を食べたいのっ!? 別に平気なんだろうね!」
此奴に自分の吐いた物が気持ち悪いって感覚は無い。牛が食べた物を反芻したり犬が吐いた物を平気で食べるのと同じだ。
寧ろ虹色オオミミズにとっては逃げる獲物を捕らえる為の武器で使って当然の物でしかない。含まれてる毒だって自分の体内で分泌された物だから効かないって訳だ。
胃液で食道焼かれろ! 胃潰瘍になれ!
心の中で罵倒しながら虹色オオミミズの吐瀉が終わるのを見計らう。そろそろ勢いが落ちて来たし、今なら……。
好機だと思った時、目の前の地面が盛り上がって姿を見せたのは虹色オオミミズの頭。
二匹目? まさか待ち伏せされて……いや、違う。此奴は両側が頭なんだ。
大口を開き丸呑みにしようとする虹色オオミミズを上昇で避ければ勢い余って木にぶつかったのか背後から木の倒れる音が聞こえる。
「……仕方無いか。せめて死体が散らばらない方法で倒そう」
背後を見ればそれなりの大きさの木が幹をへし折られて倒れ、木片が周囲に飛び散る。それを一つ掴んだ僕は再び向かって来た虹色オオミミズの口の中に放り込む。
「食べたね? それが君の最後の晩餐だ」
両側から虹色オオミミズの口が迫る中、再びの上昇で回避。それを追って二つの頭が上に向かって体を限界まで伸ばす。一切の弛みが無くなってピンって張った時、準備は整っていた。
「そうだな。”ウッドスピア”って所かな?」
体内の木片を基点にして木の時間を戻す。分厚い表皮に激突して砕けない様に表面の時間を停めた木は元に戻るべく虹色オオミミズに吸い寄せられ、そのまま胴体を貫いた。
「!?」
鈍そうな見た目でもこれは流石に効いたのか苦しそうに動く。この姿を見てもミミズが苦手な僕には嫌悪感しかないし、さっさと終わらせないと。
「結局高く飛んじゃったし、警戒されないと良いけれど」
虹色オオミミズに刺さった木の動きを逆再生して胴体から引っこ抜き大穴を残す。栓になっていた木が外れた事で体液がドバドバ流出、凄く気持ち悪い。
「うへぇ。飛沫喰らっちゃったよ。……何処かで洗わないと」
僕にもポチにも臭くてベタベタした体液が付着しちゃって凄く不愉快な気分だ。お気に入りの服だしシミになったら嫌なんだけれど…。
「キュイィィ……」
ポチも翼に付着した体液を不愉快そうに嗅いでいるし、本命倒す前に……あっ、仕留め損なってた。
大穴が開いて臓物やら体液やらをボタボタと流れ出させながらも虹色オオミミズは起き上がり、牙をガチガチと合わせて鳴らしながらこっちを威嚇している。
痛覚が薄いのかな? それとも死なば諸共みたいに怒りのまま最後の力を振り絞っている?
まあ、どっちでも良いけどさ。
地面を削りながら向かって来る虹色オオミミズだけれど僕もポチも動かない。正確には動く必要が無いって感じかな?
「君も来ていたんだね。共和国のお仕事かな? やあ、アンリ」
「ああ。僕の一族は軍門の家系だ。こういった荒事は任される事が多い。……前に言わなかったかい? ロノス」
手を伸ばせば触れる位の距離で七色オオミミズは動きを停める。その生命も芯まで凍り付いた事で完全に停止、続いて投げられたバトルハンマーが当たればガラスが割れる時に似た音を立てて粉々に砕け散る。
僕とポチには霜の一つも付着せず、バトルハンマーの柄に着けられた鎖が引き戻される方向を向けば友人のアンリが相棒であるドラゴンのタマを背後に立たせて武器をキャッチしていた。
「いや、一度も聞いた事無いよ? そうだろうなって感じには思ってたけれどさ」
「……そうか。言って無かったか」
格好付けてたからか僕の返答にアンリは何処か戸惑って……あれ? 一度聞いた事がある気も……。
思考をフルで回転させてアンリとの会話を思い出す。
アンリと会うのは基本的に飼い慣らしたモンスターに乗ってのレース”アキッレウス”の時くらいで、レース前とレース後に少し時間を見つけてはダラダラと話す程度。
残りは貴族同士の交流会とかで会う程度。
アンリは家の掟で男装している女の子だから、偶然それを知った僕が何かと気を使っている。恩を売るってよりは友人だからっての方が強いんだよね。
前も互いの近況とか任された仕事とか……あっ。
「いや、聞いたね」
「……おい。まったく、君は相変わらずだな。マイペースと言うべきか何というべきか。軽く頭痛がして来たぞ」
アンリは深い溜め息を吐きながら頭を押さえる。うーん、これは反論不可能だ。
「キュイキュイ!」
「ピー! ピー!」
飼い主二人が何とも言い難い空気に陥っているけれどポチとタマは気にしていない。言葉は通じていないらしいけれどニュアンスでコミュニケーションを取っているのか体を左右に振って凄く可愛い。
タマは凄く大きいペンギンだけれどポチの方が百倍、いや、千倍可愛いな。
「……矢っ張りタマは可愛いな。うん、世界のどんな存在よりも可愛いな」
……はっ? ポチの方が万倍可愛いけれど?
まあ、僕はそんな事を口にはしないけどね。でも、実際ポチが世界一で同点でリアスだ。
「いや、ペット妹の可愛さは別物か……」
「君は一体何を……うん? あの巨大なミミズの中に何か……」
芯まで凍り付いて粉々に砕け散った虹色オオミミズの破片に混じって野球ボール大の虹色の玉が転がっている事に気が付いたアンリはそれを拾い上げる。
「共和国には虹色オオミミズが出ないんだっけ? 確か地質の関係とかで……あれ? ねぇ、アンリ。それって……」
えっと、アンリが手にしている上に不用意に顔に近付けたあれって確か……。
「……ひゃい? 何か変な気分がひゅるにょ……」
”変な気分がするぞ”かな? 僕の方を見たアンリの顔は真っ赤になっていて……。
「……うん。それって超強力な媚薬だからね」
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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