ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい 作:ケツアゴ
地面を突き破って現れたのは捻れ合って柱みたいになった茨。それが鞭みたいにしなって振り抜かれたのをレナが前に出て受け止めたわ。
「鞭によるプレイ……若様に打診してみましょうか。罵られながらぶって貰いたいですね」
「アンタはそれしか考える事無いの!?」
幾ら無傷で済むとは言っても正体不明の敵に攻撃を受けている最中だってのに。レナスが知ったら怒りそうな真似をするのは悪い癖よ?
それにしてもレナってどうしてエロ系の事ばかり考えてるのかしら?
見た目がエロいから? それとも思考がエロいから体までエロなの?
「鬼なんて基本的に思考の九割は戦いか色事ですよ?」
咄嗟に脱いだ服(あれってプルートからの借り物よね?)を茨の棘に絡ませるレナの肌にも棘は当たっているけれど血は出ない。相変わらず無駄に頑丈だし、お兄ちゃんにぶって貰うにしても鋼鉄の鞭じゃないと効かないんじゃないかしら。
「それ、他の鬼が聞いたら怒らない? 私が知っているのはレナスとレナだけだけど」
「私も母様以外の親類や同族とは疎遠ですが、母様から聞いた話ですので。それよりも姫様……鞭について理解しているのですね。若様の意志も有ってかその手の話題には疎い筈ですのに」
茨に巻き付けた服は既にボロボロで、レナが力を込めれば胸がプルプルと揺れている。お兄ちゃんが居なくて良かったわね。
うん、本当に色々な意味で。
自分がこっそり読んでいる(でも実はバレている)癖に私はその手の物から遠ざけるのは少し過保護だけれどお兄ちゃんの愛だとは分かっているんだけれど、私だって興味が有るから、アリアと出掛けた時にあの子が読んでる小説をこっそり借りたのよね。
それで少し知識が付いたけれど、こんな事で露呈するだなんて……。誤魔化さなくちゃ!
「な、なんの事か分からないわね?」
「目が泳いでいますし声が上擦っていますよ? 姫様」
「うっ……」
流石は赤ちゃんの時からの付き合いなだけ有るわね。レナったら私の事は何でもお見通しなのかしら?
「ふふふ、姫様とパジャマパーティーをして猥談で盛り上がるのを楽しみにしていますよ。どうせなら今晩にでもプルートの歓迎会も兼ねて猥談を楽しみましょう」
「えっと、私は猥談について詳しくは……」
「おや、プルートも純情派でしたか。まあ、取り敢えずこれを始末してからの話です、ねっ!」
プルートは猥談って聞いただけで顔を真っ赤にしているし、慣れてないだけで知識の方は有るんじゃないかしら? レナったら多分分かって口にしているわね。
服を絡めて拘束した茨を地面に叩き付けたレナが脚を踏み下ろすと地面が陥没して茨が軋んで棘が幾らか音を立てて折れ、そのままレナが茨を力任せに引っ張ればブチブチって音を立てて茨は千切れる。
「……ゴリラパワー」
「プルート、鏡は持っていましたら姫様に自らの姿を見せて差し上げてください」
「いえ、ですから持っていなくって。……本当に持って来なくて良かった」
「それは残念。あら?」
わっ!? 急にどうしたの!? 千切った茨からレナが脚を外した瞬間、断面が緑から赤に染まり、真っ赤な液体が吹き出した。
漂って来るのは鉄臭さだし、これって血液? でも、普通の植物や一般的な植物系モンスターって血が流れていないんじゃ……。
「考えるのは後にしましょう。ほら、追加です」
レナが千切った茨は動かなくなったけれども、続いて同じ様に地面から茨が飛び出して来た。さっきのが太い鞭なら、今度はモーニングスターみたいに先端だけが絡み合って球状になっている。
でも、飛び出した瞬間には漆黒の剣の先端が出迎えていたの。
「”ダークセイバー”。……残念ですが私に不意打ちはそんなに通じませんよ?」
闇の魔力の剣は茨の球体を貫き、そして弾ける。内包されたエネルギーが解放されたから今度の茨も先端部分をゴッソリと持って行かれてて、血が吹き出していた。
「うぇ。植物から真っ赤な液体が流れ出るってアンバランスで不気味ね」
「うーん、ドリアードとしては複雑な言葉だけれど少しはそう思うよ。こんな植物を僕は知らないし、どうやら操られた植物とか普通の植物系モンスターでもなさそうだね。それにしても流石は”神殺し”の力を持っているだけ……あっ、これは言ったら駄目な事だった」
……あ~あ、なにやってるのよ。慌てて口を塞ぐドリアードだけれどプルートには聞かれていたわ。占いの力で知れる事が多い彼女が気にしているっぽいし、これは能力を使っても分からない事だったのね。
「その”神殺し”とは闇属性の力の事ですね? 教えて下さい。私はこの力によって人並みの幸せさえも遠く手の届かない物でした。虐げられる人生の中で失った物も多く……」
プルートが少し怖い目つきをドリアードに向けながら触れたのは眼帯で隠された片目。
……ゲーム中では彼女の過去は開かされていないし、設定資料集はちゃんと読んでいないから書かれていても知らないけれど……一般人よりも建て前とか血筋を大切にする貴族に生まれたアリアでさえ変な演技で本性を隠す程だもの、それが普通の一家に闇属性を持って生まれのなら……。
「この力に意味が有るというのなら私にはそれを知る権利が有る。多くの物を見通す力を持ってしても分からなかった謎を解明するという好奇心からではなく、今までの人生との決着の為にも知りたいのです」
「プルート……」
私はその答えを知っている。光と闇の使い手が何故生まれるのか、そしてお兄ちゃんが持って生まれた時の属性の役目も全部知っている。
でも、私は知らない。聖女の末裔であり、同じ力を持って生まれた貴族令嬢の私じゃプルートが味わって来た苦しみなんて欠片も知らないの。
「……分かった。どうせ此処の僕が罰として消えたとしても世界中には他の僕が存在するし、葉っぱの一枚が木から落ちたみたいな物さ。今回の一件を巻き起こした奴をどうにかしてくれたら、その時は教えてあげるよ」
その心からの叫びが届いたのかドリアードは静かに頷く。うん、これで良し。後は……。
「彼方も本気を出して来たみたいだし、じれて来たみたいね」
再び周囲から茨が現れるけれど、今度は束ねずに数に任せての包囲網。その上で左右から投網みたいに編まれた茨が迫り、更にその隙間を縫って飛び出した茨から棘が発射される。
「レナ、手を貸そうか?」
「いえ、獲物を貸して頂ければ」
了解とばかりにハルバートを投げ渡し、ドリアードが下手に動かないように掴む。プルートは……怯えた様子だけれど何をすれば良いかは分かっているのか目をギュッと瞑って立ち尽くしているわ。
その間にも茨は私達へと迫り、レナはハルバートの柄を掴んで大きく一度振り回して肩に担ぐ。
「……では、参ります」
茨が間近まで迫るけれど私は微動だにせず、刃が前髪を掠って茨を、棘を、大地を切り裂いて行く。暴風みたいに、力任せに振り回しているみたいにしか見えない怒涛の攻撃の嵐に茨はバラバラにされて大地にも深い爪痕が刻まれるけれど、最初の前髪以外で私達には掠りもしない。
数センチ先を何度も刃が通るけれど、私達が動かない限りは絶対にレナの攻撃に巻き込まれたりなんかしないのよ。
時間にして十秒足らず、周囲には茨の残骸が散らばり、ドリアードは泡を吹いて気絶している。……情けないわね。
「お粗末様でした。……所で姫様、髪型のセットはちゃんとなさって下さいね?」
「……前髪が数本長かった程度でウダウダ言わないでよ。今切ったんだから別に良いじゃないの」
……あっ、地面の揺れがさっきより大きくなったし、本体がやって来るっぽいわね。
アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません
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ポチ
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夜鶴
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ネーシャ
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ハティ
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シロノ
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アリア