ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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大好きだけれど敵認定

「ざっ、雑草ですってっ!? この誰よりも美しい私に向かって雑草っ!? ………許せない。許せないぃいいいいいっ!! それに世界一美しいラドゥーン様だって馬鹿にするだなんて!」

 

「いや、それだったら世界一が二人居る事になるじゃない、のっ!」

 

 私の指摘への返事は言葉の途中での攻撃だった。拳を振り上げて全身を振るわせたアルラウネの花から生えた茨が膨れ上がり、色も黒く染まって、それが波打ちながら向かって来たわ。

 流石にあれは正面から受けて掠り傷一つ無いってのは無理な話ね。

 

「ちょっと入ってなさい」

 

「わわっ!?」

 

 ドリアードじゃこの攻撃から逃げ切れないと判断した私はひっ掴んでポケットに押し込むと、地面を削りながらせまる黒い茨の波に向かい合う。

 

「”シャインアーム”!」

 

 詠唱と同時に私の腕を巨大な光の腕が覆う。大きさは私の腕の三倍程で、その腕を振るって黒い茨を殴りつけたら金属同士がぶつかる音と一緒に茨が粉々に砕け散る。はんっ! 多少は動かせる柔軟性は持っていたみたいだけれど、所詮は急造ね。

 

「粘りが足りないのよ、粘りがっ!」

 

 だからこうやって簡単に砕ける。この茨、精々が鎧の間接部分程度の柔軟性を持った直径十センチ程度の棍棒でしかないし、そんなのが無数に来ても何も怖くない。

 

「な、舐めるな!」

 

 今度は何本かを地面に突き刺し、地中を通して向かって来るけれど……振動でバレバレなのよね。

 

「ワンパターンにも程がありますね。それでは夜の営みもマンネリ化して仮面夫婦の可能性がありますよ?」

 

 茨が地中を動く中、レナは高く飛んだ状態でハルバートを振り回し、ついでに胸もブルンブルンと揺らしながら茨が頭を出すタイミングに合わせて振り下ろす。轟音と共に地面が爆ぜ、巨大なクレーターの中には茨の残骸が混じっていた。

 

「……服が要りますね。押さえつける物が無いと胸が揺れて邪魔です」

 

「じゃあ削ぎ落とせば?」

 

「流石にそれは酷いですね。姫様、実は私がお嫌いですか?」

 

「大好きだけれど、それとこれは別よ。……持たざる者の前で持つ事の不便を語るとか敵対行為以外の何物でも無いわ」

 

 まさか敵が味方の中に居ただなんてビックリしながらレナを睨みつつ、伸びて来た茨を掴み取る。

 棘はこの光の腕を貫通せずに折れるけれどちょっと掴むのに邪魔よね。

 

「はっ! そんな貧相な体で私と引っ張り合いをしようって気かしら? 体格だって随分と違うし、頭の中まで貧相なのね」

 

 私を引き寄せようと茨が動き、左右からも大きくしなって打ち据える気なのか迫る。

 

「いや、引っ張り合いをする気なんて無いわよ? 言いたい事は沢山有るけれど……取りあえずアンタにだけは頭の事を言われたくない!」

 

 私に左右からの茨の鞭が当たるよりも前にアルラウネの巨体が私の方に引き寄せられ、体が宙に浮く。

 

「ひゃわっ!」

 

 咄嗟に身を捩って逃れようとしても時既に遅しって奴よ。

 私の握力を侮ったわね!

 

「ジャーイアントスイーングッ!!」

 

 そのまま回転してアルラウネを振り回して周囲の岩に激突させ、最後に崖に向かって投げ飛ばせば茨を使って周囲に掴まろうとしたんだけれど、ドリアードの投げた爆弾と私のジャイアントスイングで殆ど掴まる物がない。

 

「やった! ……あっ」

 

 辛うじて大木に掴まったと思ったら自分が生命力を吸い取る花を周囲に植えたせいで中身はスカスカで巨体を支える暇もなく折れてしまったわ。

 ぷっ! ざまあみろ

 

 そしてそのまま崖に激突、衝撃で崩れた岩がアルラウネに降り注いだ。

 

「自分が山の木を弱らせたせいで助けにならなかったって自業自得ね。……出て来なさい。その程度で死んでなんか居ないでしょ」

 

 大きな岩が幾つも降り注いでアルラウネを埋めたけれど、こんな程度で死んでるなら人間を滅ぼすだなんて到底無理な話で、神獣ってのはそれを行う為に神に創造された存在。

 

 なら、どうなって居るのか。……それは岩を吹き飛ばして出て来たアルラウネの姿が教えてくれたわ。

 

「……せない。許せない。許せないぃいいいいいいいいいっ!!」

 

 体中が傷だらけの状態でうなだれたアルラウネが顔を上げた時、その瞳は真っ赤に光っていた上に歯は全部細かくて鋭い形状に変わっている。

 ゲームならボスの第二形態、つまりは本気の本気って訳で、数多くあった茨が次々に腐って抜け落ち、変わりに中心の一本だけが更に太く強くなって行く。

 

 

「全ての力を集結させたって感じかしら? まあ、面白そうだし、此処は私が……」

 

 あの力を集めた茨で攻撃する気なら、今までとは比べ物にならない威力だと思った方が良さそうね。……面白そうじゃない!

 

 元々は軽い運動の予定で来た山で遭遇した予想外の敵だけれどあんな終わり方じゃ消化不良って奴よ。

 どうせ戦うなら強い相手と! それがレナスに鍛えて貰った私が得た欲求。前世ではお姉ちゃんやお兄ちゃんに守って貰うだけだったし、お兄ちゃんの中じゃ今でも私は守らなくちゃ駄目って感じだけれど、私ってちょっとだけお転婆だもの。

 

「これでも貴族令嬢なんだし、散々侮ったからにはそれなりの物を見せなさい。まあ、見せるだけの物が有ればの話だけれど」

 

 私の挑発に乗ったのかアルラウネの表情は一層険しくなって、お腹が急に膨れ上がる。反対に花の部分が萎んで行くし、何か来るわね。

 

「うおっし! バッチ来い!」

 

「いえ、私にお任せを。……それと今のは流石にアウトです」

 

「え? どうして?」

 

「分からないのもアウトです。……来ますよ」

 

 異常なまでにお腹を膨らませたアルラウネがこっちを見て笑った気がした。腹の中の物が上へと登り、ゲロでも吐くのかと身構えれば吐き出されたのはピンクの色をした霧状の何か。

 凄く甘い香りがするわね。

 

「この香りって花と同じ……」

 

 この山に来る切欠になった怪しい花の甘い香りを凝縮したみたいな濃い香りの霧は私達の視界を遮る程で、甘過ぎてゲロ吐きそうな気分の中、霧の向こうからアルラウネの笑い声が聞こえた。

 

 

「霧を吸ったわね? お馬鹿さん。その霧は花と同様に女の持つ恋心を増幅させるの。それも濃縮された霧だったら効果は桁外れ。一番素敵だと思っている男への恋心を幻覚に囚われるレベルまで高めるわ。光だろうと闇だろうと逃れられないの。ふふふ、ふふふふふふう! 好きな男に抱かれて果てる夢を見ながら朽ち果てなさい」

 

 

 

 

「……”ヘルジャッジ”」

 

「え? きゃぁああああああああああっ!」

 

 アルラウネの言葉に続き、冷たい声が静かに響く。私の視界を塞ぐピンクの霧は地面から天へと昇る闇の柱によって塗り潰されて、霧が晴れた時に目の前には瀕死の状態のアルラウネの姿。

 心底理解出来ないって顔をプルートに向けていたわ。

 

 

「なん、で? 貴女、恋した事位有るはずでしょ? だったら……」

 

「いいえ、御座いません。私は恋心など持てる人生を送っていませんので」

 

「じゃ、じゃあアンタはどうなのよ!? 素敵だって思える異性位居るでしょ!?」

 

「うん、お兄様は世界一素敵な人で、他は有象無象よ。でも実のお兄ちゃんに恋なんてする訳ないじゃない。だから私には効かないわ」

 

 今度は私に話を振って来たから答えてやったのに絶句するとか失礼な奴だわ。

 

「わ、若しゃま、もちょ私にお恵みをぉお……」

 

「じゃあ、これで終わりね」

 

 足元で悶えているレナが手放したハルバートをアルラウネに向かって蹴り上げ、当たる直前に空中でキャッチ。後は……全力で振り下ろす!

 

 

「せいやっ!」

 

 断末魔の叫びを上げる余裕すらなくアルラウネは真っ二つになり、ボロボロと崩れて消えて行く。彼女が作り出したらしい花も急激に枯れて行くし、これで終わりね。

 

 

 

 

「まっ、前座だったらこんなものね」

 

 着地と同時にハルバートを構えれば腕に衝撃が伝わって来る。見るからに強そうな女が突き出した拳は柄で防いだけれど、お返しの蹴りも避けられちゃった。

 

 

 

 さて、此処からが本番ね。こっちはそれなりに楽しめそうだと腕の痺れが教えてくれた。

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

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