ラスボス転生 逆境から始まる乙女ゲームの最強兄妹になったので家族の為に運命を変えたい   作:ケツアゴ

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社の方針で残業減った 出るのが遅くなったのだが仕事はそのままで昼休み削る未来が見える

残業代も減少だ


闇に揺蕩う

 その空間は一面の闇であった。遙か遠い宇宙の果てか、はたまた深く冷たい海の底か、一筋の光も存在せず、重力も存在しない為に自分が何処を向いて居るのかさえ不明。

 知的生命体ならば平静では居られないであろう一種の地獄の中、その女は静かに宙を漂っていた。

 

 光が有れば間違い無く反射するであろう艶のある黒髪を高めの身長よりも長く伸ばし、目を閉じていても気位の高さを感じる凛々しい美貌。

 小麦色の肌をした引き締まった肉体に砂漠の国の踊り子を思わせる露出の高い服を纏うも、余程の色狂いでなければ劣情を抱かない程に威圧感を何もせずとも周囲に与える。

 

 上下左右でさえ定かでない空間に一人浮かび、腕を組みながら目を閉じた彼女の両腕両足には鎖を思わせる模様が存在し、まるで彼女を拘束しているかの様だ。

 

「……繋がった」

 

 どれ程の長い時間を目を閉じて沈黙を貫きながら過ごしているのか数えていないので本人にさえ不明な中、突如小さい唇が動いて言葉が紡がれる。

 静かで感情の起伏を一切感じさせない声は周囲に広がる事も無く闇に飲み込まれて行くばかり。

 

「落ち着け。焦るな。時が来るまで待つのだ。……目的を果たす為にもな」

 

 再び静かに呟いた内容は彼女自らに言い聞かせる為の物らしく、時折僅かに頷いているのが辛うじて分かる。

 この時も彼女の声には一切の感情が込められてはおらず、目を閉じたままだ。

 

 突如、彼女の右腕から何かがひび割れる様な音が鳴る。装飾品には音が鳴った理由である傷は見当たらず、この時も彼女は瞳を閉じたまま。

 

 

 その代わり、右腕の模様の一部の形が変わり、鎖の一部がひび割れているではないか。

 偶然かも知れないが音が鳴った瞬間、世界中の生命の多くが同時に嫌な予感を察知したという。

 

 

「必ず、必ずだ。絶対に諦めたりはしない。してたまる物か……」

 

 三度目の呟きの時、僅かにだが声に感情が籠もる。それは決意であり、不安であり、寂しさである。

 この時、彼女はまるで迷子になった幼子にさえ感じられたのだが、その正体を知る者からすれば勘違いや虚言の類であると一笑するのか憤怒するのか、兎に角否定だけは間違い無いだろう。

 

 

 彼女の名は”テュラ”。光の神”リュキ”と共に全人類を滅ぼすべく地上に降臨し、思い直したリュキが己の悪心と共に封印した闇の神。

 

 乙女座ゲーム”魔女の楽園”においてロノスとリアスを騙して意のままに操った黒幕であり、ゲームクリア後の隠しダンジョンの最奥で主人公を待つ隠しボスであった……。

 

 

 腕の模様の変化が何を示すのか、テュラの目的は何で何をしようとしているのかは彼女しか知りはしない。

 それこそゲームにすら描写が存在しない場面であり、ロノスとリアスですら分からない事である。

 

 

 只一つ言えるのは、世界に大きく影響を与える事が起きるであろうという事だが、ゲームでリュキの悪心を討伐し、その力を吸収したリアスさえも打ち倒して世界を救うアリアも、妹を止められず最期を自らの意思で共にするロノスも、ゲーム通りの我が儘傲慢令嬢ではなくて義理を大切にする脳筋令嬢に育ったリアスでさえも予兆にすら気が付いていないという事。

 

 ゲームとは違う二人と関わっていない筈のテュラがゲームとは違う行動を静かに起こしていた。その理由を知るのは……本人を含む二人だけである。

 

 

 

「早く接触の段取りを整えねば。待っていろ、ロノスとリアス。お前達が今何をしているかは知らぬが、今後は私の為に動いて貰うぞ。私は……、私はテュラ、闇の神だ。人の子など、目的の為ならばどうなろうと構わない。私には無関係だ」

 

 

 

 暗闇の中、冷たい声でテュラは呟く。途中僅かに迷いが垣間見えるも言葉を向けた相手への感情など一切感じさせない声であった……。

 

 

 

 

 

 もう春先だけれど山の中の池の水は冷たく、それが一層彼女の体温を僕に感じさせた。濡れた服を着た僕と一糸纏わぬ姿のアリアさん、二人の会いだの距離は零で、唇と唇の間の距離も同じになろうとしている。

 触れ合う寸前、動きを止めた彼女が告げる。

 

 

「……私、初めてなんです」

 

 ”それはどっちの意味なの?”と尋ねて空気をグダグダにするには照れているけれど嬉しそうなアリアさんの表情は魅力的で、媚薬によって引き起こされた今の状態で押し切らせるのは憚られるけれど、それでも流されたい自分が居る。

 

 ……因みに僕も初めてだ。どっちの意味でも。

 

 このまま流されてしまえば何処まで進んでしまうのか自分でも予測不能で、少し期待してしまう。ああ、でも幾らアリアさんが複数居る結婚相手の候補の一人でも、正式な婚約前に手を出したら不味いかな? パンドラに迷惑を掛けちゃうし、何よりアリアさんに変な噂が立ちそうだ。

 

 只でさえ僕と一緒にいる事で変に嫉妬されているしなぁ……。

 

 

 魔法も使っていないのに一秒にも満たない時間で思考が高速回転し、アリアさんの動きがスローに見える。でも、もう時間だ。このまま僕達はキスを……。

 

 

 

 

 

 

「ピー!?」

 

 

 あだっ!? 唇が触れる瞬間に突如大声で鳴いたタマにアリアさんが驚き、勢いが付いて二人の唇は触れ合い、歯と歯が衝突、キス後の照れではなく痛みによって二人揃って口元を手で押さえる。別の理由で凄く気まずかった……。

 

 

「ピー!」

 

「わっ!? どうしたのさ、タマ!?」

 

「……ドラゴンって美味しいのでしょうか?」

 

「アリアさんも色々な意味で落ち着こうねっ!?」

 

 どうやらタマの尋常じゃない様子からして何かを感じ取ったらしいのは分かるんだけれど、僕の腕の中でアリアさんが呟いた声はマジだ。この子、マジでタマを……。

 

「あの、ロノスさん。この子は何やら忙しいみたいです……し? あれ? 私ったら一体何を……」

 

 そしてこのタイミングで媚薬の効果が切れて素に戻るアリアさん。一瞬本当の色々背負って何もかが嫌になってるって顔の後で取り繕った何時もの顔に戻るまで数秒、腕で自分の胸を抱き締めて顔を真っ赤にしているけれど、力を込め過ぎて片方がはみ出て……凄く眼福だけれども、此処は我慢だ見ないでおこう。

 

 それよりも僕が心配なのはタマについて。左右の翼を慌ただしく動かして水面を叩きながら走り回って水飛沫を上げるもんだからポチが迷惑そうに目を細めて唸るみたいに鳴いている。

 

「キュィィィ……」

 

 ちょっと不機嫌そうな姿なんて僕には普段見せないものだから新鮮味があって悪くない。

 可愛いなぁ……。

 

 

「ピッ!」

 

「わっ!?」

 

 ポチの姿に夢中になっていたけれどタマが慌てるだけの何かがあったって事で、何に……いや、誰に何かあったって事なら、それはアンリにしか有り得ない。

 

「タマ! アンリに何かあったんだね?」

 

「……ピ?」

 

 あっ、駄目だ言葉が通じない。僕がポチと言葉が通じるのは妖精女王様の魔法によるもので、アンリがタマと言葉が通じるのは幼い頃から一緒に過ごす事で一種の儀式をこなしているから。

 

 そしてポチとタマは別の種族だから当然言葉は通じない。

 

 結果、僕の問い掛けに動きを止めたタマが首を傾げて少し困った様子で可愛い姿を見せるんだけれど急に全身の羽毛を逆立てる。

 これはドラゴンが興奮した時の顔!? 目が急に怖くなった!

 

「ピピピッ!」

 

 羽毛が逆立ったタマは倍くらいの大きさになるなり全身から軽い放電……水の中だから弱くても結構痛い。

 

 

「キューイ!」

 

「ポチ、落ち着いて……あっ」

 

 ポチが流石に怒ったけれど普段見せない姿も可愛らしい。動画とかに残す魔法とか……無理か。リアスには可能なんだろうけれど。映写機の理論知っていれば……無理!

 

 そんな事を考えていたらタマに掴まれて宙を舞う。アリアさんは……落としてしまった。ごめんね。

 

 

 

 

 

 

 

「……何時か必ず」

 




修正修正 昨日書き足して保存してなかった

アリアの影が薄い気が こっちの方がヒロインっぽいってキャラに投票してみて 尚、ゴリラは妹なので入りません

  • ポチ
  • レキア
  • 夜鶴
  • ネーシャ
  • ハティ
  • レナ
  • パンドラ
  • サマエル
  • シロノ
  • アリア
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