ムゲンの果てで、愛を唄う少女ユウリ   作:銀杏鹿

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「──交代!ウオノラゴン!」

 

「──ステルスロック」

 

 リザードンの代わりに降り立ったウオノラゴン。そしてカバルドンがフィールドにばら撒く尖った岩。

 

「カバルドンじゃあ倒せないぜ──」

 

「倒す必要性がありませんから──」

 

 考えるまでもない。     

 

「ウオノラゴン!噛み砕くだ!」

 

「交代、ブルンゲル」

 

 入れ替わったブルンゲルは迫るウオノラゴンの牙を正面から受けた。

 

 私が交代するのを読んだ上での選択か、流石だ。

 

「読み通りだな!」

 

 弱点のタイプ、ウオノラゴンの恐ろしいほどの顎の力、それは一撃でブルンゲルを戦闘不能にするのには十分な威力。

 

「…そうですね」

 

 にも関わらず、ブルンゲルは耐えきってそこに立ち続けていた、その口にはナモの実。

 

「一度耐えられても次はないぜ──ウオノラゴン!」

 

 先制するウオノラゴン。

 

「もう一度噛み砕くだ──ウオノラゴン!?」

 

 しかし、ウオノラゴンは顎を開くことが出来ず、もがく。

 

「ブルンゲル、力を吸い取る」

 

 相手へにじり寄ったブルンゲルは触手を絡ませて、エネルギーを吸い取り、体力を回復する。

 

「……かなしばりか、迂闊だったぜ」

 

「迂闊?いいえ、貴方が交代を読んで噛み砕くを選ぶこと、そしてウオノラゴンが一つの技にこだわっていることが分かっていたからです」

 

「っ……交代!ジジーロン!」

 

「──うずしお」

 

 ジジーロンに尖った岩が突き刺さり、ブルンゲルの放ったうずしおに拘束される。

 

 そして砂嵐は勢いを失って止んだ。

 

 ただ、それがジジーロンの特性によってなのか、時間が経ったからなのかは──

 

「交代せざるを得ない、今リザードンには交代出来ない。バンギラスを出すには相性が悪い。だからドラゴンタイプを出す、……まあドラゴンタイプのジムなんだから当たり前ですか」

 

「ああ、その通りだ!」

 

「だから交代を封じさせてもらいました──冷凍ビーム」

 

 渦巻く水流へ向かう光線──

 

「──身代わり!」

 

 ──うずしおの中から抜け出すジジーロン。

 

「そのくらいは対処してもらわないと──」

 

「このくらい余裕だ──」

 

 考えるまでもない。

 

「──交代!ウオノラゴン!」

 

「──交代!サザンドラ!」

 

 お互いに交代、でもこちらの方が有利だ。

 

 ウオノラゴンは一つの技しか使えない、向こうの足場にはステルスロック、万全じゃない──

 

「──流星群!」

 

「──逆鱗!」

 

 サザンドラが呼び出した流星が、突撃してくるウオノラゴンに降り注ぐ。

 

「行くんだ!ウオノラゴン!」

 

 流星に打たれ、尖った岩で傷つきながらも、強靭な脚力で懸命に走り、迫ってくる。

 

 相手は生態系の頂点として獲物を狩り尽くし、その強さ故に絶滅したポケモン。

 

 その逸話に相違なく、凄まじい気迫と勢いで流星をしのぎ切り、遂にサザンドラの目の前に辿り着く。

 

「──!!」

 

「サザンドラ」

 

 私の声を聞いたサザンドラは、迫った相手の頭上に飛び──

 

「ウオノラゴン!」

 

 ウオノラゴンはサザンドラをその顎門に捉えようと跳躍──

 

 たしかに、かつては無敵を誇っていたのだろう。

 

 けれど、地上では息をすることすら出来ない歪な生き物でしかない。

 

「まして、空では身動きも取れない」

 

 サザンドラはウオノラゴンを紙一重で躱し、その背後にはまだ残っていた流星が一つ。

 

「だって、"恐竜"は隕石には勝てないのだから」

 

 ウオノラゴン自身の脚力と勢いが仇になり、流星を正面から食らって墜落し、地面に叩きつけられて戦闘不能になる。

 

「……まだ、続けますか?"古代の王者"さん」

 

「……ユウリ」

 

「全て読まれて、打ち砕かれて、言葉もありませんか?」

 

「ああ、そうだな」

 

「帽子で現実から目を逸らせば、目の前は真っ暗になってくれるかも知れませんね?」

 

「──ああ、すごいな!流石だ!」

 

「……は?」

 

「ワクワクするんだ!読み合い、選出、戦術、まだまだ、出来ることは沢山ある、俺は、俺達はまだ強くなれるってことだろ!」

 

「馬鹿な主人公みたいな台詞を……」

 

「いつだって!誰だって!皆、人生の主人公だぜ!」

 

「……そうでしたね」

 

「──バンギラス!」

 

「──ブルンゲル」

 

 予測通りの相手。フィールドは砂嵐に包まれる。

 

「もう木の実はないぜ!バンギラス!噛み砕くだ!」

 

 飛び込んだバンギラスの牙がブルンゲルに突き立てられる。

 

 確かに弱点の一撃で、バンギラスの方が早いのは間違いない、たとえここを凌ぎ切っても、二度食らえば容易に突破されるだろう。

 

 けれど、その二度は存在しない。

 

「ブルンゲル……力を吸い取る」

 

 ブルンゲルはダメージを受けながらも、そのままバンギラスに絡みついて力を吸い取り、体力を回復する。

 

「今の一撃を耐え切るのか!」

 

「木の実がなければ耐えられないなんて、誰が言いました?」

 

「ブラフか!──だが!バンギラス!ぶん回すだ!」

 

 バンギラスは絡み付いたままのブルンゲルを強引に振り回して引き離そうとする。

 

 金縛りにかかる技は使わないか……でも所詮悪あがきにしかならない。

 

「ブルンゲル、鬼火」

 

 叩きつけられる寸前に離れたブルンゲルは鬼火を放ってバンギラスを火傷させる。

 

「交代したらどうですか?もう、自慢の攻撃力は使い物にならなさそうですが」

 

「それはどうかな」

 

 まだ諦めていないらしい。

 

 もはやブルンゲルを突破する方法は……

 

「バンギラス──ストーンエッジだ!」

 

 ああ、そう言う。

 

「──!?」

 

 急所を突かれたブルンゲルは一撃で戦闘不能になる。

 

「流石に、よく訓練されていますね」

 

「慌てたか?」

 

「まさか。──行け!ドリュウズ!」

 

 繰り出したドリュウズは相手に比べるとあまりにも小さく見えた。

 

「油断はしな──」

 

「──ドリルライナー」

 

 ドリュウズは残像を残して飛び出し、バンギラスが次の技を構えようとする寸前、吹き荒れる砂嵐を利用して加速、急所を突いた。

 

「──」

 

 バンギラスは呆然としたまま倒れ、戦闘不能になる。

 

「貴方に出来ることが、どうして私に出来ないでしょうか」

 

「ははっ、やるじゃないかチャレンジャー!さあ、まだまだいくぞ!──ジュラルドン!」

 

 やっぱり、そうなんだ。二人はお互いにエースを交換したんだろう──だから。

 

「ドリュウズ交代──ランクルス!」

 

 交代時に交代し──

 

「「ダイマックス」」

 

 二人同時にお互いのポケモンをボールへ戻し、ダイマックスさせる。

 

 ジュラルドンはキョダイマックスして姿を変え、ランクルスもまた赤い光を纏って巨大化する。

 

「──キョダイゲンスイ!」

 

「──ダイナックル!」

 

 力の奔流がお互いに激しくぶつかり合う。

 

 ランクルスはジュラルドンが放つ凄まじいエネルギーの竜巻を受けつつも、頭上から凝縮したエネルギーの拳を雨のように降らせた。

 

 その衝突にかき消されるように砂嵐は消え、2体の巨影が残される。

 

 一度目の激突で、既に勝敗は決したようなものだった。

 

「ダンデさん、分かるでしょう。無駄な努力なんですよ、限界はあるんですよ」

 

「努力に限界なんてない!俺は諦めない!どんな時だって勝利を手繰り寄せる!」

 

「──!!」

 

 呼応するように咆哮するジュラルドン。

 

「……そうですか」

 

 何事もなく立っているけど、その実、殆どの力を失っている。次の一撃で確実に倒れ臥す。

 

 それに対してランクルスは未だ健在。

 

 分かりきっている。

 

 たとえエースでも、ジュラルドンの火力じゃあ、ランクルスを突破することは出来ない。

 

 その上、ジムリーダーがキョダイマックスを使った以上、そこは見せ場。

 

 見栄を切らなければならない時、絶対に退けない。

 

 それは手加減じゃあ、ない。

 

 真剣勝負でありながら、ショーである以上、分かっていても退くことは許されない。

 

 だから、絶対に勝てない。

 

 邪道であろうが、なんだろうが、なりふり構わず私を倒そうとしないのなら、ただ正々堂々戦って、何もかもが解決すると思っているのなら。

 

「ジュラルドン!!負けるなぁぁ!!」

 

「ランクルス、打ち抜け」

 

 結果の分かりきった撃ち合い、それが苛烈なものでも私には風一つ吹いていないように感じられた。

 

 そしてジュラルドンは爆煙に包まれ、戦闘不能になる──

 

 

 筈だったのに。

 

「え?」

 

 視界に映っていた予測や光景がブレて歪み、立っていた筈のランクルスもまた爆風の中で戦闘不能になる。

 

 止まっていた私の世界に爆風が吹き込む。

 

 それが私の髪を激しく靡かせた。

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