ムゲンの果てで、愛を唄う少女ユウリ   作:銀杏鹿

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※今回の話は『劇場版ポケットモンスター 水の都の護神 ラティアスとラティオス』を未視聴でも最低限理解はできるようになっていますが、視聴後にお読み頂いた方が読み易いと思います。



61 カノン

 

「──で、ラティオスとラティアスのおかげでこの街は守られているんだよ」

 

「……なるほど」

 

 一通り話を聞いた、水の都の成り立ちやその顛末。

 

 この街で助けられた二匹のポケモンが、恩返しのために"邪悪な怪物"──おそらく災害か何かから命懸けで街を救い、こころの雫となった。

 

 その後はあの庭園に置かれ、それは街の水の源となり、同族のラティオス達がそれを守護しているという。

 

 この間触れた宝玉がそうなんだろう。

 

「でも。それだけじゃないの。私達のご先祖様は街を守るために、こころの雫に別の使い道を考えた」

 

「別の……?」

 

「それが、今も大聖堂にある装置。あの機械を使えば街全体を操ることが出来る」

 

「こころの雫はこの街の水の源なんですよね?」

 

「そう。なのに、それを作った。どう言うことだと思う?」

 

「……二匹がこころの雫になったんですよね?なら二つあったんじゃ?」

 

「そうだね」

 

「もう片方のは何処に行ったんですか?」

 

「分からない、でも、こんな言葉が残ってるの。"悪しき者、『こころのしずく』を使う時こころは汚れ、しずくは消える。この街と共に"って」

 

「無くなった……ってことですか」

 

「そう。"悪しき者"が使って無くなった。これが先ず一つ。その時、街にも危機が迫った。その危機ってどんなものだと思う?」

 

「……分かりません」

 

「史料には邪悪な怪物の姿は大きな津波と歯車の模様として描いてあるの」

 

「……それは今、関係あるんですか?」

 

「何か妙だとは思わない?怪物、じゃなくて、わざわざ邪悪な、って呼ぶのは。それに、ラティオスとラティアスの姿はその頃の物にも記されているのに、怪物だけは抽象的な姿でしか残されていない」

 

「……つまり、どういうことですか?」

 

「悪しき目的に利用して、街がなくなるようなことを、邪悪な怪物を招いたのは……私達のご先祖だったんじゃないか、ということ」

 

「……でも、怪物と戦ってこころの雫になったから二つあったはずで……それに、そう言う説も考えられるって話ですよね?まさか実際に機械を動かして見たわけでも」

 

「それが、あるの。一度だけ私欲であの機械を使おうとした人達がいた。暴走した機械によって、この街は津波に飲み込まれるところだった。こころの雫も一度なくなった」

 

「どうなったんですか?」

 

「ラティオスが命懸けで守って、彼もこころの雫になった。今あるのはその時のものなの。……いなくなる前に、夢写しをしてくれて……最後に宇宙から見たこの星を映してくれた……最後の最後にね」

 

「…そうなんですね」

 

 つまり……あの景色を見た存在はこの星に帰ることはなかったんだ。

 

 戻れない旅路に行ってしまったのだ。

 

「だから、それ以前にも同じ事が起きてて、あの話のエピソードは多分、幾つかの話が混ざってるんじゃないかと思う」

 

「……そんな機械なら、最初から壊せば良いんじゃないですか?」

 

「そうだね。でも、そうされてこなかったってことはきっと、正しい使い方があったんだと思う。まあ、今は試しようがないんだけどね」

 

「こんな話まで、して良かったんですか?」

 

「こころの雫を見て、あの場所を知ってるなら、一応伝えておかないといけないから」

 

「まさか」

 

「ま、大丈夫だと思うけどね。話が長くなったけど、ラティアス達の話はこのくらいかな」

 

「今は……最近はいなかったんですか?」

 

「いつもいるわけじゃないからね。ここを守ってるって言っても、縛られてるわけじゃないし。観光にでも行ってたんじゃないかな」

 

「……でも、こころの雫になったラティオスは、ここから動けませんよね」

 

「だから、帰ってくるんだと思う。この街を守る理由、最初の二匹にはあったかも知れないけれど、他の子達にはないもの。ここから動けない彼らのために、いろんなものを見て、それを伝えに来るんじゃないかな。……お土産話をするみたいにさ」

 

「お土産話…?」  

 

 眠っていた時の私と同じ……墓石みたいなものじゃないか……そんなの。

 

「君も、帰ったら誰かにするでしょ?」

 

「……私は……」

 

「もしかして、観光じゃなかった?」

 

「私は戻れ…」

 

「なるほど。家出ね」

 

「え」

 

「大丈夫、誰にでもそう言う時期はあるもの、一人で何処かに行きたい時くらい……」

 

「一人じゃ、ないですし」

 

「愛の逃避行……!?」

 

「そんな相手じゃないですし……むしろ」

 

「じゃあ、何者?」

「……何者だろ」

 

「知らないの!?」

 

「私の護衛だったけど……それ以外のことは知らない。歳も分かんないし」

 

「……どんな人?」

 

「死んだ魚みたいな目してる。確かに逃げたいって言ったのは私だけど……ここまで連れて来たのに朝からどっか行ってるし……」

 

 自分の悪事を口走ったのも原因だろうけど。

 

「……悪い男に騙されたのね、今頃身代金を要求してるわ」

 

「……そうなのかな」

 

 ま、そうされても仕方ないとは思う。

 

「こんな幼気な子を騙して連れ去るなんて、一体どんな顔してるのか見てみたいわ」

 

 と、カノンさんが鼻息を荒くしている時。

 

 戸を叩く音が聞こえた。

 

「どうぞー?」

 

「失礼──ん、ユウリ?」

 

 ドアを開けて入って来たのは、ニオさんだった。

 

「え、なんで?……探してた?」

 

「そうでは──」

 

「……あれ?知り合い?」

 

 困惑するカノンさん。

 

「ごめんカノンさん、私、この人に話ある」

 

「え、あ、どうぞ?」

 

「ちょっと来て」

 

「俺は──」

 

「私の話より、大事なこと?」

 

「……了解した」

 

 聞くべきことはいくつもある。

 

 ここは夢じゃあ、なさそうだし、何より今日は彼を追いかけて外に出たんだから。

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