「あっという間でしたね。チャンピオンとの対戦まで。何か心境に変化でもあったんですか……いえ、別に心がわからないとか言うわけではなく……あくまで参考に」
委員長は終始意外そうだった。
「ユウリさんが望むのなら、応援しますよ」
ニオさんは何か安心したようだった。
「またヨロイ島の時と一緒だろォ?単純なやつゥ」
クララさんの言う通りだった。
「ユウリさんの筋肉が輝いている!もっと輝きましょう!さぁ!私と一緒に筋肉に身を委ね!筋肉へ昇華するのです!未知なる筋肉の世界へ!」
トーナメントで勝負した馬鹿は平常運転だった。
「僕がパパだ!僕がパパなんだぁぁ!!パパパワァァァ!!」
トーナメントで立ち塞がった馬鹿も平常運転だった。
「よーやっと歩き始めたな。嬢ちゃん。随分と目ぇ覚ますまで長かったんちゃう?さ、ヨクバリス王朝を再建しに行こうや」
王様は変わらなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
ホップが私に約束して暫く、ガラルは急に風が吹き込んだみたいだった。
"目先の利益ではなく、社会への貢献"のためと宣言したホップは研究への参加を求めて、願い星に関する研究を大々的に発表した。
そして、願い星の産出量を増やせる可能性が高いという発表も。
これまで公開されていなかった願い星を利用した技術に注目が集まり、世界中の機関から研究者がガラルへ訪れ、数えきれないほどの資材が運び込まれた。
委員長曰く、願い星の輸出を期待しているらしいから、見返り込みではあるけれど。
闇で取引されるほど他所が欲しがるなら、公式でやってしまえと言うことみたいだ。
願い星が他所に行くとタイムマシンの完成が遅れるんじゃないかと思ったけれど、本格的に輸出されるのは産出量が増えて安定してからで、それまでは計画に影響の出る量は動かさないとのことだ。
とは言え、輸出を期待した色んな地方が一斉に復興の支援を増やしたから助かってはいるんだけれど。
それに、ガラルに眠るエネルギーを励起させる目的で様々な発電施設が建てられたり、研究の為に関連施設が建てられた。
そうなってくると純粋に手が足りないわけで、ポケジョブだって山ほど増えるし、人の雇用だって生まれてくる。
願い星を売るしか仕事のなかった人達とか、私のファン達みたいなのも仕事にありつける。
壊れてしまった街だって、ダイマックスを利用すれば瓦礫だって直ぐに片付けられるし、あっという間に立て直せる。
まあ、その復興に乗じてマクロコスモスだけじゃなく、他の地方の企業がどんどん進出してくるからかなりカオスな状況になってるけど、私の知ったことじゃない。
色んなものが流れ込んできて、きっともう前のガラルとは全然違う物に変わっていく。
私がいた頃のガラルの面影は何処にもなくなっていく。
でも、それでいいんだ。
まるで夜明けを迎える直前みたいだったから。
その夜明けに、私の心を連れて行くことはできるだろうか。
実験は、明日に迫っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「ユウリ。約束通り実験を行う。ムゲンダイナを渡してくれ」
私達は装置の前に立つ。
シュートシティの埋め立て地に建てられた巨大な円環状の施設の中心。
建物の見た目は巨大な時計塔だ。
前にシュートにあったものは壊れてしまったから、その代わりにデザインされてこうなった。科学施設らしくはないけど、ガラルらしいといえばそうかもしれない。
この施設は各地のガラル地方のエネルギー励起装置と地下に張り巡らされた巨大なケーブルに接続している。
設計図を見た時は、まるで魔法陣か時計みたいで冗談かと思ったけれど。
「うん」
「……ダイマックスの暴走は起きる前提だ。だが、励起地点には各地方から腕の立つトレーナー、そしてジムリーダー達の準備も万全。ライドポケモンの訓練も十分。物資も過剰なくらいだ。街の防壁もさらに強化した。もう前とは違う」
「分かった」
アーゴヨンの入ったボールを差し出す。
「……ありがとう。ユウリ」
「私は勝ってる。後はマリィに勝つだけ。今日も、勝とう。ホップ」
「……ああ!一緒に!」
そして──
──実験は失敗した。