侍が忍者できっとそれが落武者で   作:エタノール

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ジャイアントキリング

「あの……お兄様……」

 

「ん、どうした、姫娘……」

 

「ご、ごめんなさい!!!」

 

「ん?」

 

「カッときたからと言って、勝手にお兄様を試合なんかに出してしまって……」

 

「あ、そんなこと……大丈夫、お前の期待に応えられる結果を出してやるさ」

 

「お兄様……」

 

「さ、姫娘……もう授業だから……」

 

「はい、席に戻ります……」

 

「よし、良い子だ……」

 

「だってお兄様の妹ですもの……」

 

「おいおい、あんまり持ち上げないでくれよ?」

 

「どうでしょうかね……お兄様はそれだけ凄い人なんですよ?」

 

「そうでもないさ……」

 

この場の人間の気持ちを代弁するなら、イチャイチャしてんじゃねぇ……そんなところだろう。

まぁ、私としてはどんどんやってくれと言いたいところである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「島流しの型なんてものがあるが……別名生殺しの型と言って、相手の関節を突き破壊する技が多い……」

 

今日はアリーナを借りて(無論、二ヶ月も前に打鉄が予約した)、鍛練を積むつもりだったのだが、もう一人がな……アリーナを借りようとして借りられなかったと溢していたのを聞いてしまい、つい……な。

予約していたアリーナを貸してしまった。

なので、こうして剣道部にお邪魔して打鉄と共に鍛練を積んでいる訳だ。

 

「木刀で相手を殺す為の型もある……主に突きだがな、相手の喉元は勿論、心臓、眉間……突きでの殺傷は案外簡単だが、急所に当てるのは難しい……」

 

人型の人形に剣道部の皆さんに貸してもらった防具を取り付けたモノを的にし、木刀で次々と急所を突いていく。

喉元、眉間、胸部、口、腹……全て正確に突けば相手は死ぬ。

ISに通用するとは思えないが聞いた話だと、攻撃から搭乗者を守るためにシールドが発生し、それでシールドエネルギーが削れると……つまり攻撃の威力が大きければ大きいほどシールドエネルギーの減りも大きくなると……

ならば、攻撃が搭乗者の生命を脅かす程のモノ、又は位置だったらどうなるか……

搭乗者を守る為に発生するシールド……威力を和らげる、又は防ぐ為に膨大なエネルギーを消費するだろう。

 

殺せないにしてもエネルギーをガッツリ減らせる筈である。

 

「漫画やアニメ、ゲーム、小説の様に刀や太刀、刃物で相手を真っ二つにするには、正しい角度、スピード、抜刀する位置……これが大切だ」

 

打鉄はきちんと理解している様で、自分を展開した際の抜刀ビジョンを見せてくる。

テンションが上がっているのか、簡易待機状態(鎧兜ではない簡単な待機状態)である脛当の打鉄が移動スピードを上乗せしてきた……

 

「お、ちょっ……まっ……」

 

手加減していた為に今のところ壊れていなかった防具を取り付けた人形が、防具ごと文字通り真っ二つになってしまった。

剣道部の皆さんはオ~……っと湧くが、オ~じゃないですよ……壊しちゃったんですよ?御宅の防具……

 

「いや、申し訳ない……力余ってお宅の防具を破壊してしまいました……」

 

「い、いえ!大丈夫ですよ!」

 

「そう……なんですか?」

 

「は、はい!」

「大丈夫です!」

 

「防具を借りたときに大切に扱ってくれって……」

 

親の仇を見るような目で貸し出されたのを覚えてるんですが……

 

「へ、へぇ……知りませんよ?」

「そんなこと言いましたっけ?」

「覚えありませんね……」

 

「…………そうですか……」

 

何だか担がれている様な……

 

「とりあえず、防具は後々弁償するとして、私は妹が待っているので自室に戻ります……ありがとうございました……」

 

「は、はい!」

「また来てくださいね!」

「待ってます!!!」

 

何だろう……実力が認められているにも関わらず、どうも微妙だ……

さっさと自室に戻るとしよう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うう……イライラモヤモヤするぅ!!!

何なんだろう……私の為にお兄様が頑張ってるのに私はそれが嫌!!!って思ってる。

うちがねさんとお兄様は最近はいいなぁって思う程度だったんだけど……

あの女達は何なの!?

お兄様にあんなに辛く当たった癖にお兄様が凄いって分かった途端に掌を返して!!!

なんなのあれ!!!

最近お兄様の側に居ても、お兄様を見ていても、お兄様とお話ししてても満足できないの……

 

「大丈夫か?姫?」

 

お兄様は本気で私を心配すると、私の事を姫って呼ぶの。

 

「元気ないな……疲れてるのか?」

 

そう言ってお兄様は寝ている私の頭を撫でる。

お兄様が私を本気で心配してる……お兄様が私の頭を撫でている……

 

「お兄様……」

 

「姫……起きていたのか……」

 

「はい……」

 

私が起きているのが分かった途端、お兄様は手を頭から退けてしまった。

そうじゃない……もっと……もっと撫でて欲しいの……

 

「駄目じゃないか……姫は今元気ないんだから、ゆっくりしてないと……」

 

明日は休みだから部屋でゆっくりしてような……ってお兄様は私に微笑む。

駄目……それでも私は満足できない……

 

「お兄様……」

 

「ん、なんだい?」

 

「頭……さっきみたいに撫でてくれませんか?」

 

ごめんなさいお兄様……良い子の姫娘は……

 

「…………良いのか?」

 

「早く……撫でて……」

 

悪い子です……

 

「…………本来なら私が姫の頭を撫でるなんて駄目なんだがな……」

 

お兄様の大きいけどスラッとした手が私の頭の上に乗る……

 

「お兄…様……」

 

私はあっという間に寝てしまった。

仕方ない……久しぶりに安心して眠れたんだもん……

お兄様は私の味方……私をずっと見ててくれるの……私を置いていかないの……

お兄様……大好き……私はお兄様の妹だけど、これは仕方ないの。

私はお姫様で、お兄様は私を拐う忍者で、私と旅をしてくれるお侍さんで……私を守ってくれる武者様なの…………

 

「拐いに来ました。お姫様……失敬……」

「お姫様だからってもう足が痛いだなんて泣き言は駄目で御座るよ……」

「私が死守致します故……貴女様はどっしりと構えていてください……一国の主でしょう?」

 

お兄様が……いっぱぁい♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやすみなさい……お姫様…………」

 

これがどの義鷹だったのかは、誰も知らない…………

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