私が軽くはっちゃけてしまった例の一騎討ちの日から二日が経過した。
あれ以来、剣道部の部員達に剣道部に来ないか等々の誘いが来るが断り続け、代わりに放課後の予定が空いている日に顔を出すと約束をした。
そして今は、その剣道部の部員から言われたある一言について考察しているところである。
「ふむ、考えてみるとお前は他の打鉄とは違うからな……どれ、軽く名前を改名しようか」
そう、「義鷹さんの専用機ってもう打鉄じゃないのでは?」と、言われてしまったのである。
私とコアの気合いだけでセカンドシフト……だったか?をしたり、三種の変形、特性変化をさせたり、規格外の兵器(天候災害)を使用したりと……
確かに打鉄と言う名では収まりきらなさそうである。
しかし改名するにしても打鉄ってのは残しておきたい。
その名前は彼女の真名であり、私と彼女の出会いでもある。
もしも彼女がラファールだった場合、私は彼女と意思疎通することもなかっただろう。
と、言うわけで……私のネーミングセンスが試される場面である。
教師に打鉄の改名を申し出た以上、教師の目の前で専用用紙片手にやっぱり改名辞めますなんて言えはしない。
打鉄の意見を仰いでも良いのだが彼女も彼女で期待している様子で、聞ける雰囲気ではない。
打鉄……打鉄……鉄と言えば……鋼……鉛?鉛……鉛。
いや、それはナイ。
鋼……ねぇ?
破鉄……ハガネ……なんつって……
「よし、今日からお前さんは破鉄だ!」
「今日も良い天気ですねぇ……」
教師に頼み込んで造って貰った学園端の書院造の小屋……縁側に腰掛け毛毬で遊んでいる姫娘を眺める……素晴らしいね。
この間の件で実力(笑)を示した事により、大抵の要望なら通るようになった。
まぁ、唯単に私という暴れ馬の手綱を握っていたいだけなんだろうが。
残念、私の手綱は姫娘にしか握れない。しかしまぁ、せいぜいこの扱いを姫娘の為に有効活用しようと思う。
ちなみにこの小屋は姫娘の部屋を元に造らせた。
これで姫娘のホームシックも軽くなれば良いのだが……
「お兄様、お兄様~?」
「ん、何だい?」
「お兄様も遊びましょうよ!」
「…………よし、何をしようか?」
「そうですね……」
今日も日ノ本、私と姫娘の周囲は素晴らしい程に平和である。
この間の件以来姫娘が私にベッタリだが、それも前以上に私を頼ってくれているからなのだろう。信用してくれているようで嬉しいことだ。
「お兄様」
「ん、何だい?」
「私達は、いつまでも一緒ですよね?」
「…………あぁ、いつまでも守ってやる」
「えへへぇ……そうですか、嬉しいです」
以前友人に誘われ、映画を見に行った時の話である。
たしか内容は……そう、人類滅亡の危機に瀕している世界で主人公が人類の為に立ち上がるって感じだった。
残念ながら私は感動も何もできなかったし、逆に無駄に金を使わされてしまった気分だった。
こんな内容で全米が泣いただとかアカデミー賞受賞だとか意味がわからなかった。
逆にネットで酷評だった映画の方が良かった。
主人公がゲスいだとかサイコパスだとかなんだとか……
内容としては先程と似たり寄ったりなのだが、こちらは主人公が恋人を不幸にしたくないがために立ち塞がる障害を全て排除しながらどうにかするなんて感じだった。
冒頭で強盗を迷いなく撃ち殺したシーンは本当に爽快だったし、共感できた。
友人にはお前らしいと言われたし、自分でも自覚している。
そもそも人間なんてのはそんなものだ。
人間はナニかの為に行動する。世界の為だとか赤の他人の為に自分を犠牲にするだなんてそんなバカな話はない。何かしら個人の為に行動しているのだ。
前の映画の主人公も、世界の為に立ち上がった様に見せていたが、見方を変えれば明らかに病院に入院している姉の為に戦ったのだ。
世界の為に戦うだなんて誓っていたが、そんなのは偽善である。
正直に家族の為に戦うと誓えば良いだろうに……
赤の他人を助けるかどうかは自分の気分次第、優先順位は低い。
目の前で死なれると後味が悪いってのが良い例だ。
ご飯が不味い。
そうだろう?
夕飯の食材の買い出しで県外(何故って、食材は新鮮な方が良いでしょう?)の町を駆け回っていたら目の前で暴走トラックが小さな嬢ちゃんに迫っていたんだ。
これをそのまま放っておいたら折角の食材が悪くなるし、気分悪い。
で、そのまま気のままに北風ノ吹雪(北海家に代々伝わるポン刀……ちなみに鍛えたのは姫娘の短刀を鍛えた鍛冶師で私の知り合いだ)でトラックの運転手以外を全てバラして小さな嬢ちゃんを助けた(助けたという表現が正しいのかは知らんが)訳だ。
そうそう、思い出した思い出した……あの後すぐにその場から離脱したから小さな嬢ちゃんの名前はともかく顔すらまともに見てないもんだからすっかり忘れてた。
ん、この長ったらしい前置きを経て何が言いたいのかって?
「やっと……見つけた……っ」
はい、この状況について簡素に説明するとですね……
私が剣道部に向かおうと学園内を駆け回っていると、この小さな嬢ちゃんが困っている風にウロウロしていたのでその状況からある程度事情を察した私が彼女に走り抜き様に探している場所を伝えたところ、何故か物凄い力で腕を掴まれ引き留められてしまい、挙げ句の果てには彼女が背中に張り付いてしまったと……そういうわけなのである。
それでこの小さな嬢ちゃんについて考察した結果、件の嬢ちゃんだったのかと結論付いた訳です。
しかし……何故張り付いているのか……
「君、申し訳ないが私には予定がある。それに多分君の言っている人物と私は人違いだろう」
無難に事を治めるには、まず自分と話の中の登場人物が別人であると発言すれば良い。
そして予定があると言い、私は急いでますオーラを発すれば良いのだ。
まぁ、事実私には今現在予定がある。
「…………」
「私は今急いでいるんだ、離れてくれないか?」
「…………」
「…………残念ながら私には実力行使という手もある。私も痛いのは嫌だからね、こんなことは絶対にしたくないのだが……」
背中に張り付いている小さい嬢ちゃんをガッシリ掴み、かつ引っ張る。
このやり方、引っ付いている方も勿論(主に腕が)痛いが、引っ張る方引っ張っている方で(主に肩や背中、引っ付いている方が掴んでいる場所等々が)物凄く痛い。
「痛ててて……よし、君とはまた時間があったときに話したい」
(残念ながら時間はもうここではギリギリだが)
「おっと、時間が……失敬」
私は運命論は信じない。
物事は、全て結果であり必然である。
あの場で助けたからここに彼女がいるのだ。
え?オチはないしヤマもない。
今回はもう終わりだよ。