あらかじめ……
本作は、原作・アニメから見て、10年ほど先の、未来のお話です。
『17時になりました。残業申請を出していない社員は、速やかに退社してください』
定時前に仕事のきりが付き、メールのチェックをしていた彼女は、チャイムと同時にパソコンの電源を落とす。
「お先に失礼します」
電源が切れたのを確認し、席を立つ。
「中野さんお疲れ様。明日のプレゼン頑張ろう!」
課長からの声かけ。
「はい。先方は何て言ってましたか?」
「『梓ちゃんの大ファンだから、会えるのが楽しみ』って」
「それ、公私混同ですよ……。まあ、それで有利に進んでくれるのなら有難い……」
「課長、早く終わらせて帰りましょう。中野さんは喋ってないで早く帰りなさい」
彼女と課長の会話に横から割り込みが入った。課長補佐だ。
「中野さん、今日は?」
「明日は重要な日ですから今日は帰りますよ。では課長、課長補佐、お先です」
「お疲れ様」
彼女……
大学を卒業後、一般企業に就職し、趣味の範囲でギターを続けている。
会社の同僚・上司もそれを知っているし、理解してくれている。
さっきの課長補佐からの声かけも、音楽活動に関するものだ。
会社向かいのコンビニに立ち寄る。
雑誌コーナーのラックに目をやる。
本当か分からない話が書いてあるような週刊誌は、普段梓は読まないのだが、思わず飛びつく雑誌があった。
特集記事『放課後ティータイムの今』。
高校時代、一つ上の先輩たちが部活として行っていた音楽活動、『放課後ティータイム』。
その先輩たちが大学時代にメジャーデビュー。
その後、わずか3年で電撃解散。
解散が突然すぎていろいろな憶測が飛び交った。
しかし、梓は解散の理由を知っている。
とはいえ、今何をしているのか知らない人もいる。
手に取って開く。
『私たちは、いつまでも放課後です!』
2016年。日本国内でそれなりに有名であったガールズバンド『放課後ティータイム』の電撃解散。
メジャーデビューからわずか3年での出来事。
あまりの急な話に、メンバー不仲説などが流れたが、解散ライブでの雰囲気はデビュー前からのものと全く変わらなかった。
むしろ、メンバーの結束力は更に強くなっているようにも見えた。
それ故、いろいろな憶測が飛び交った。
しかし、本当の理由は分からぬまま解散前最後(とされる)ライブが終了した。
(本当の解散ライブは、別に行われたと言われている)
あれから約10年……。編集部は彼女たちの今を調べた。
少し笑ってしまった。
この『本当の解散ライブ』というのは、母校桜高の講堂を借り、梓のためだけに行われたのだった……。
『放課後ティータイム。メンバーの今』
『
元々彼女の家は有名な大企業。
今は彼女が継承し、知らない人はいないであろう大企業へと更に成長した。
『
解散後、とあるユニットに声を掛けられて『ハモフライ』というグループに所属し、音楽活動を続けている。
梓もライブのゲストに呼ばれたこともある。
『
一般企業で働く傍ら音楽活動を継続している。
あがり症だったが、克服しているので、時々テレビ番組でも見掛ける。
『
梓も律の今を知らない。
何をしてるのか知らない人、というのは律のことなのだ。
彼女の今を知りたくもあって開いたが、結局分からないのか……。
『編集部総出で彼女の消息を調べたが、詳細は不明。一部では死亡説もあったが、他の元メンバーにも聞き取り調査を行った結果も踏まえ、当編集部は関東地区某所で生活していると推測する』
律先輩は何処に居るのだろうか……?
梓ちゃんの出番は当分先になりそうです。
ごめんなさい。お待ちください。
あ、もちろん登場場面はご用意いたします……。