『バーガーメトロ』について。実在の企業名は出せないので、架空の名前にしてあります。
出店数・知名度はモスバーガー、お店のスタイルはマクドナルド をイメージして頂けると良いです。
私も某ファーストフード店で働いていましたが、非番の日に他所の店に行ったとき、従業員の声に反応しそうになったことがあります(笑)
「ところで。なぜお二人は
言葉が上手く出てこなかったが、
「それは俺にも分からないです。急に出かけるって
首を傾げつつ、
つられて律もそちらを見る。
「だからってね……ん?」
夏紀は二人の視線に気づいたようで、二人のほうを見る。
「そういえば、何で?」
再び優子の方を見て言った。
律と春臣の話は聞いていたようだ。
「何が?」
「私がここに来るのをどうやって知ったのか」
「
「専務から? あ、朝方電話有ったわ……」
車の中で電話していた相手のことのようだ。
夏紀の会社の専務のよう。
「携帯のGPSが新名神の
なるほど。あの携帯電話にはGPSが搭載されているらしい。
「誰かに乗せてもらうって言ってたし、新名神を通ってるってことは、
そうしたら見事に落ち合えたわけか。
「近くだからって
う……。
そういう会話はしていたけれど……。
「そういえば、さっき中山さん店員の声に反応してましたけど、何でですか?」
そこを触れてくるのか……。
恥ずかしいから忘れたいというのに。
「職業病みたいな感じ。つい反応してしまったな……」
「それじゃあ、中山さんはメトロで働いてるんですか」
「はい」
「あれ? さっきスーパーで働いてるって言ってませんでしたか?」
律がメトロで働いていると聞き、さっき車内でスーパーで働いていると言っていたのを知っている夏紀は首を傾げた。
「昼はスーパーで、夜はファストフード店で働いてます」
「Wワークなんですね」
「
そう。
「ファーストコンタクトは、彼女が運転する電車の行く手を塞いでしまったことだったけど」
逆に久美子が仕事中だった。
「えっと、どういうことですか?」
春臣はそのことが気になるらしい。
掻い摘まんで説明した。
「なるほど……。しかしまあ、怪我なくて良かったですね」
「ありがとう」
「黄前さんは
優子は久美子の働いている場所を知れて、どことなく喜んでいる。
春臣の発案で、観覧車に乗ることになった。
四人が乗り込んだゴンドラが、ゆっくりと上がってゆく。
「観覧車なんて久し振りね。
「乗った乗った! 懐かしいなぁ」
「確か三人で乗ったんだよね。俺が『ロシアン観覧車当ててやる』って言ったら本当に当たった奴だ」
律を除く三人で盛り上がっている。一人置いてけぼり。
「えっと、そのロシアン観覧車って何ですか?」
律の場合、話に加わろうとすると、まずそこから。
「あ、そっか。ロシアン観覧車というのはですね、ここの『シースルー観覧車』の逆で、外が見えないんです。全面隠れてまして、外は全く見えないんです」
シースルー観覧車とは、全面が透明で、床と天井からも外が見える構造だ。
地上から見れば、乗っている人の靴の底まで見える。
対して、ロシアン観覧車は、全面がフィルムで覆われていて、外は一切見えない。
「それ、乗ってる意味あるの?」
観覧車 なんだから、見えなければ意味ないのでは? というのが、律の率直な感想だ。
「ちゃんとリーフレットがあって、案内に合わせて見るんです。『今見えていたはずの景色』が乗ってました」
「楽しいの……?」
感想は人それぞれだろう……。
「でも、乗るのを拒否する事は出来るんですが、指定することは出来ないので、乗れるかは運次第って奴です。運試しですね」
運試しなのか。
「まあ、閉所恐怖症の人には拷問でしょうね。逆に、高所恐怖症の人には良いかも知れませんね。だって、外見えないわけなので。ね、優子さん」
えっ? 優子は高所恐怖症なの?
しかし、見た感じ問題なさそうだが。
「いつの話してんの。もうとっくに克服したわよ」
つまり、昔はそうだったのか……。
「
「北西じゃない?」
やっぱり探すのか……。
このメンバーはどこへ行っても『
「どんな形だっけ?」
「一回だけしか行ってないからうろ覚えだからね……」
「あら、
そこ競うところ?
「三回も何しに来たの? 私らの代じゃあ全国出場は一回だけだし」
さっき、車内で夏紀がそう言っていたし、
「全国だけが名古屋国際会議場じゃないでしょ。私はライブに行ったの」
ライブか……。
放課後ティータイムも数回ライブを行った。律にとっても思い出の場所。
「ライブって?
「放課後ティータイムのね」
あれま。放課後ティータイムのライブに来ていたのか……。
「わざわざ?」
「親がチケット持ってきてね。みんなで行ったのよ。高一の冬だったから、解散の前年だっけ……?」
2015年の名古屋ライブだな。
あのライブといえば……。
「あ!」
律は思い当たる節があり、思わず声を上げてしまった。
「中山さん?」
三人とも律の方を見ている。
「いえ。何でもありません」
誤魔化す。
思い出した。
名古屋ライブで頭に一際大きなリボンを付けていて、他の誰よりも目立つ人がいたことを。
あの子が優子なのか……!
一方的な部分があるとはいえ、優子とは初めて会ったわけではないんだ。
「あ、そうだ。折角だし写真撮りましょう!」
感動している律を余所に、優子が言った。
仕方ない、優子にはその理由は知り得ないのだから……。
「はい。記念にどうぞ」
優子が観覧車の中で撮った写真を律に渡す。
「ありがとう。今はスマホで撮ってコンビニですぐに印刷出来るから便利ね。昔はフィルムだったから……。みんなデジカメ世代か」
下手をしたらフィルムを知らない世代かもしれない。
「流石にフィルムカメラは知ってますよ。触ったこと無いですけれど……」
優子の世代はそんな感じなのか。
夏紀たち三人と別れ、律は一人車を走らせる。
ここまで来たのであれば、半分も残っていない。
律一人になったので、助手席に鞄を置いている。
鞄の隣に、先程四人で撮った写真がある。
「おもしろい人達だったなぁ……」
自分以外誰もいない車内で、一人呟く。
「リボンの子に会えるとはね……」
リボンを付けていた子。優子のことを見つけたのは律だけではなかった。
こんな形で(一方的とはいえ)再会できるとは思わなかった。
また、いつか会えるだろうか……?
会えるよね。
そのためにも、まずはこの道中無事に帰ることから。
疲れは出ているが、ハンドルを握る手に意識を集中させる。
愛しの我が家まで、もう少しだ。
長くなってしまいました……。
滋賀への応援パートは今回で終わります。