岐阜県坂元市。
駅前商業ビルにある食品スーパー『はらまる坂元駅前店』
「いらっしゃいませ。お預かりいたします」
レジから女性の元気な声が聞こえてくる。
「お待たせしました」
「ありがとうございました」
今は夕方なので、四台あるレジの内、三台が稼働しており、その三台にそれぞれ女性が入っている。
「以上で580円です!」
3番レジにいるのは名札に『金山です』と書かれている、大学生くらいの女性。
「ありがとうございました~!」
元気よく(良すぎる?)レジをこなしている。
「えっと。大根一本ですね……。釦どれだっけ……これか」
2番レジの彼女は、『市川です』と書かれた名札の下に『研修中』の札もぶら下がっている。
スピードは早くないが、ゆっくり確実に進めている。
「お待たせ致しました」
1番レジにいるのは、おそらくこの三人の中では1番経験が長そうな人。
名札には『レジ 中山です』と書かれている。
「はい。あ、そちらの商品券はご利用頂けません」
自分のレジだけでなく、隣の市川をフォローしながら進めている。
夕方ピークが訪れ、三台のレジがそれぞれお客様を捌いている。
多少列になるが、スピードはやはり、1→3→2といった具合。
「村上くん! かご回収お願い!」
「はい。今行きます」
レジと別で、サービスカウンター業務、カゴの回収やゴミの片付けを行っている、『村上です』という名札をつけた大学生ぐらいの男性がいる。
中山の指示でカゴを集めて各レジへ渡す。
この四人が協力してピークのお客様を捌く。
夕方ピークが過ぎ去り、お客様が途切れた。
「中山さん、ちょっといいですか?」
「いいよ。何かな?」
市川が分からないところを中山に尋ねる。
「この場合はどの釦を押せば良いんですか?」
「えっと? どれって言った? あ……これね。難しいよね」
口で説明するのは少し難しい。
しかもそれで覚えられるかも微妙な感じのもの。
「あ、村上くん! ちょっとレジお願いね」
村上に代わりにレジに入ってもらい、市川の元へ行く。
「その時はこれ。先にこれを押してから……」
こうして一人前へと成長してゆく。
微笑ましい光景だ。
「ありがとうございます。そういえば中山さん」
「なに?」
「あ……でもこれ、聞いていいんでしょうか? 仕事とは関係ないんですが」
「別にいいよ」
「前から思ってたんです。中山さんって放課後ティータイムの田井中律さんに似てますよね」
「……まあね。よく言われる」
似ていないわけがない。本人なんだから……。
そう思っても言わない。
正体がバレたのならまだしも。自らバラすようなことはしない。
彼女……
放課後ティータイムのリーダーも、今はしがないアルバイト。