夕空ア・ラ・カント~中山律の普通な日常~   作:小林司

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「ジェネギャーぱねえっす」

だれもこんな汚い言い方しませんよね……。



 ジェネレーションギャップ

 

「そういえば、このまま走っていれば、全国大会の会場見えるんですかね?」

 

律の運転する車は、新名神高速道路を走っている。

 

もう少しで四日市(よっかいち)ジャンクションで、そこから先は伊勢湾岸道に入る。

 

「えっ?」

 

そんな場所での夏紀の発言に、律は驚いた。

 

この人は何を言っているのか……。

 

「えっと、高校の吹奏楽コンクールの話だよね?」

 

「ええ」

 

「もう一回確認だけど、高校の吹奏楽の全国大会だよね?」

 

「はい。あれ? 全国の会場って……」

 

高等学校の全国大会といえば……。

 

普門館(ふもんかん)でしょう?」

 

名古屋国際会議場(なごやこくさいかいぎじょう)ですよね?」

 

二人の声が重なった。しかし、言う言葉が違う。

 

会場が違うのだ。……ジェネレーションギャップ というやつだろう。

 

 

「中山さんの時は、全国大会の会場、普門館だったんですね」

 

律が高校生だった頃はまだ、東京の普門館だった。

 

吹奏楽部が『目指せ、普門館!』という目標のもと、頑張っていた記憶がある。

 

「芳川さんの頃は、既に名古屋だったと……。年の差感じちゃいます」

 

東日本大震災がきっかけで、耐震強度問題が起き、普門館が使えなくなった2012年以降、その前にも普門館が使えなかった際に開催実績のある、名古屋国際会議場に変わった。

 

因みに、その後普門館は解体され存在しないので、名古屋国際会議場が使えない場合には、他所での開催となっている。

 

「六年差は大きいね……」

 

一人溜息をつく。

 

「名古屋国際会議場か……。たぶん見えないね。少し離れてるから」

 

律もあまり地理に明るくないが、伊勢湾岸道からは離れているはず。

 

「確かこのルートを使って行ったはずなので。……一回だけなのでよく覚えてませんけれど」

 

夏紀の世代の場合、確か北宇治は一回だけ全国に出場している。

 

なので、夏紀は一回しか行っていないらしい。

 

律も何回か行ったことがあるが、新幹線を利用している。

 

車での行き方は分からない。

 

まあ、新幹線で行く場合も、名古屋駅からの行き方が少々面倒なのだが。

 

 

 

「あ、ナガシマ見えてきましたね」

 

ナガシマスパーランドが右手に見えてきた。

 

「来たことあるの?」

 

「いいえ。ひらパー(ひらかたパーク)なら行ったことありますが、ナガシマは……」

 

「まあ、私も来たこと無いけどね」

 

坂元(さかもと)からは微妙に距離がある。

 

そもそも(離婚しているとはいえ)独身女性が一人で遊園地というのも何だか寂しいだろう……。

 

 

 

「そういえば、さっきの電話で、お土産がどうこう言ってましたけど、荷物にありますか?」

 

後席に置いてある彼女の荷物は、仕事用と思われる小さい手提げ鞄一つ。

 

「えっ? あ、大丈夫ですよ。お土産は宅急便で送ってあります。出張の荷物は軽い方が良いですから」

 

なるほど。宅急便を使うとは賢い。

 

「会社宛に着払いで送る荷物と一緒にお土産も送れば、送料を経費で落とせます(払う必要がない)からね」

 

賢いというより、がめついの方が正しいのではないだろうか……。

 

「しっかりしてるね……」

 

「あ、流石にお土産を経費で落とそうとまでは思ってませんよ」

 

それを実際に行ったら、アウトだろう……。

 

 

 





〈2024年5月6日追記〉

吹奏楽コンクールの全国大会会場。

今年は名古屋国際会議場が使えないため、宇都宮での開催予定となっています。

ただ、いつまで宇都宮開催となるか、はたまた別の場所に変わるのか。現時点では不明です。

そのため、作中の年が何処で行われるかは不明です。あしからずご了承ください。
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