旅人「刻晴さんがなんでも一つ言うことを聞いてくれる!?」   作:瑠川Abel

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刻晴ちゃんを引かせてください
前回の続きとなってます。かけ算が逆になったりもしますのでご注意ください。


刻晴「旅人のお願いをなんでも一つ聞くことになった、結果」

 

 

刻晴「…………」

 

刻晴「…………」

 

旅人『名前って、特別な人に呼んで貰いたいじゃないですか』

 

刻晴「特別、ね」

 

刻晴「…………」

 

刻晴「……~~~っ」

 

刻晴「っ! っ! っ!」ボフンボフンボフン

 

甘雨「刻晴様? その、座布団をばしばしと叩いてどうしたのですか?」

 

刻晴「いつの間に来たのよ甘雨!?」

 

甘雨「今ですけど」

 

刻晴「……」コホン

 

刻晴「甘雨、何の用かしら」

 

甘雨「頼まれていた書類をお持ちしました」

 

刻晴「ありがとう。下がっていいわ」

 

甘雨「はい。体調が悪いようでしたらお薬を用意させますが。それとも旅人さんをお呼びしましょうか?」

 

刻晴「」ブーッ

 

刻晴「な、なななな何でそこで旅人が出るのよ!?」

 

甘雨「……? 凝光様が『最近の刻晴は旅人にお熱だからあまり邪魔はしないであげて』と仰ってましたので」

 

刻晴「とりあえず大丈夫だから、大丈夫だからもう下がって。ついでに凝光を一発殴っておいて」

 

甘雨「わかりました。失礼します。一発、ですね」

 

刻晴(…………凝光殴るのいいんだ)

 

 苦笑しつつも刻晴は自分の作業に没頭する。

 山のように積み上げられた書類。いつもより少ないわね、と思いながら筆を走らせる。

 

刻晴「……おかしいわ。やっぱり何処か身体が悪いのかしら」

 

 ギィ、と椅子に寄りかかって背中を預ける。いまいち仕事が捗らない。いつもならもっと手早く処理している案件ばかりなのに。

 

刻晴「…………どうやら私は思った以上に寂しいようね」

 

 冷静に自己分析をして、胸にぽっかり穴が空いているような感覚に気が付く。

 理由はわかっている。だって、『彼女』のことを思うだけで胸の穴は暖かさで満ちて、すぐに冷たくなるのだから。

 

刻晴「蛍……今日はもう会えないのかしら」ショボン

 

旅人「刻晴さーん」

 

刻晴「……思った以上に私は純情ね。いもしない蛍の声が聞こえてくるんだから」

 

旅人「こーくせーさーん」バンバンバン

 

刻晴「……え?」

 

旅人「こくせーさーんっ」マドバンバンバン

 

刻晴「蛍!?」

 

旅人「えへへ。来ちゃいました」

 

刻晴「来ちゃいました、って。ここけっこう高い部屋よ?」

 

旅人「璃月は高いところが多いので、風の翼でひとっ飛びしてきました!」バサバサ

 

刻晴「君はいつも自由ね……」

 

旅人「仕方ないじゃないですか。門番さんが『夜は誰であっても進入禁止です!』って言うんですから!」

 

刻晴「それは仕方ないわ。送仙儀式を終えた今、璃月の指導者である七星が暗殺されることだけは絶対に避けなくてはならないもの」

 

旅人「うぅ。寂しくなって刻晴さんに会いたくなったらどうするんですか!」

 

刻晴「……っ」マッカッカ

 

旅人「というわけで忍び込んじゃいました!」テヘッ

 

 窓から差し込む月明かりに旅人の笑顔が照らされる。トクンと高鳴る胸の鼓動と、満たされる暖かな気持ち。

 どうやら自分は思った以上に彼女を『特別』に見ているようだ。

 

 だからか、だからか――言葉よりも先に、身体が動いていた。

 

刻晴「……蛍」ギュ

 

旅人「っ!? こここここくせいさん!?」

 

刻晴「私だって寂しかったのよ? 君の所為なんだから」

 

旅人「わ、私の?」

 

刻晴「そうよ。君は私の『特別』なんだから」

 

 そう言って刻晴は愛おしそうに旅人を抱きしめる。夕焼けの下での告白とは違う彼女からの抱擁に、旅人は思わず動揺する。

 

旅人「あにょ! あのあにょ刻晴さん!?」

 

刻晴「何を慌てているのかしら。君は私の『特別』なのよ? これくらい当然でしょ」

 

旅人「そ、そうですけど。あぅぅ。今日の刻晴さん、群玉閣の時みたいで……っ」

 

刻晴「群玉閣? ああ、そういえば君を思わず抱きしめたのもあの時だったわね」

 

旅人「凄く強き抱きしめて貰って、ドキドキしたの思い出しちゃうんです……!」

 

刻晴「……君、想像以上に可愛い反応をするのね」

 

 いつもは自分をからかってくるだけの旅人が、自分の一挙一動に慌てふためき頬を赤らめている。

 

刻晴「蛍」

 

旅人「は、はい!」

 

刻晴「『好き』よ」

 

旅人「っ!!!」

 

刻晴「『特別』なんて言葉で済ませたくないわ。……君が好き。大好きよ」

 

旅人「あ、あ、あう……~~~~~っ」

 

 堪らないとばかりに旅人は手で顔を隠そうとする。が、腕を伸ばしてそれを邪魔する。

 

刻晴「ダメよ。可愛らしい君の顔をもっと見せなさい」

 

旅人「え、あ、う……~~~っ。は、はい……」

 

 借りてきた猫のようにおとなしくなる旅人を抱きしめたまま、真っ赤な顔をじぃ、と見つめる。

 

刻晴「ねえ、君は『好き』って言ってくれないのかしら?」

 

旅人「え!? う、うぁ……っ」

 

刻晴「クスクス。冗談よ。君の気持ちは十二分に伝わってるから、無理に言葉にしなくてもいいわ」

 

旅人「そ、そんなこと! 言います、言わせてください! 私は、刻晴さんのことがだいす――――!?」

 

 旅人の言葉は途中で途切れてしまう。

 刻晴が、自分の唇で旅人の唇を塞いでしまったから。

 

旅人「っ!? っ!?!?!??!!!!?!?!」

 

刻晴「ん……っふふ。言わせてあーげない」

 

旅人「こ、こくせーさん……っ」

 

刻晴「寝室にいきましょう。今日は朝まで、どれだけ私が君のことを想っているか教えてあげるわ」

 

旅人「~~~~~っ」

 

旅人「…………」コクン

 

 軽々と旅人を抱き上げ、寝室の扉を開ける。

 ゆでだこのように顔を真っ赤にしたままの旅人は、刻晴の胸元をギュ、と掴みながらゆっくりと頷くのであった。

 

 ………

 ……

 …

 

パイモン「朝起きたら旅人がいないんだけど!?」璃月港フワフワ

 

甘雨「だいじょーぶだと思いますよ。パイモンさんも食べますか?」清心ムシャムシャ

 

パイモン「にっげぇーーーーーーーーーーー!?」




ほたこくに見せかけてこくほたです。どっちも好きなんですぅー!!!!!!

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